OGCシンポジウム2022:デジタル社会をどう実現するか?

基調講演する平井卓也・自民党デジタル社会推進本部長(筆者撮影)

 一般社団法人オープンガバメント・コンソーシアム主催のシンポジウムが、7月25日に、永田町にある全国町村会館ホールで開催されました。

 毎年行われているものですが、今年はリアルとリモートのハイブリッドでの開催ということもあり、リアル参加者の増加を見込んでいました。

 しかし残念なことに、都内では第7波である新型コロナウイルスBA.5の感染が増えている関係で、ギリギリになってリアル参加からリモートに変更する人も多くなりました。

 リモート変更できることがハイブリッド開催の利点でもありますが、登壇者と直接話す機会もあるということが、リアル参加のメリットでもありました。

 後援は下記の通り、デジタル庁、総務省、経済産業省、地方公共団体情報システム機構、独立行政法人情報処理推進機構、一般社団法人スマートシティ・インスティテュート、一般社団法人日本IT団体連盟、一般社団法人日本データマネジメント・コンソーシアムです。

 開会挨拶は一般社団法人オープンガバメント・コンソーシアムの会長である、須藤修中央大学国際情報学部教授です。

 学生のデジタルスキルの話をされていました。

 今の学生は課題を与えるとGitHubでソースコードを見つけて来て、どんどん作りたいモノを実現させていって、一からコードを書くのではなく、ノーコードツールを使ったりして、最短で実現できる方法を見つける能力に長けているということです。

 もちろんオープンAPIなども活用して既存のサービス連携も視野に入れています。

 Web3、メタバースなどにも興味があり、新しいことに貪欲だそうです。

 AIがどんどん浸透してくると、今まで人がやっていた仕事はコンピューターが行うので、人の存在意義をもう一度考えなければなりません。

 クリエイティブとコミュニケーションは人間が行うことになり、棲み分けが必要になるでしょう。

 学生の方が未来の働き方に敏感だということです。

 バーチャル渋谷やバーチャル丸の内など、リアルにあるものをデジタル空間にも、という動きも始まっており、デジタルが社会との結びつきを大きくさせそうです。

 ゴールドマンサックスなど外資系金融機関は、ブロックチェーンやWeb3を次世代産業の柱と位置づけており積極的に投資をしているので、デジタル社会の到来はビジネスチャンスと捉えてもいいでしょう。

 最初の基調講演は、『デジタルによる新しい資本主義への挑戦』と題して、自民党デジタル社会推進本部長である平井卓也衆議院議員です。

 初代デジタル大臣の仕事を終えてからというもの、行政のデジタル化から一転して、Web3を中心とした次世代デジタル技術の牽引役になりました。

 冒頭の挨拶では、3月に亡くなった前代表理事である中村彰二朗氏のことを、7月に亡くなった安倍晋三元総理のことを話されていました。

 親しい人を立て続けに亡くして元気がないということです。

 最近は価値のデジタル化ともいえるWeb3に注目しており、デジタル価値の流通方法であるNFTの普及にも力を入れています。

 選挙区である香川県には小さな島がたくさんあり、その島の光ファイバー率は99.9%だそうです。

 世界広しといえども、こんなこんなところまで、快適な通信インフラがある国は日本くらいだということで、宝の持ち腐れにならないように、その利活用を考えているといっていました。

 島発のDAOのようなことを考えているようです。

 インターネットは社会基盤になりましたが、メガプラットフォーマーであるGAFAの世界でずっと生活するのか、よく考えなければならないと言っていました。

 今のインターネットは広告モデルしかないので、資本主義のバージョンアップも見据えて、資本主義とデジタルの関係をもう一度考えようということです。

 デジタル化による既存ビジネスのコストダウンだけでは、市場規模が小さくなるだけなので、経済のパイが大きくなりません。

 イノベーションによって、新しい市場を作っていかなければならないのです。

 田園都市国家構想は1979年に大平正芳元総理が提言したことですが、その構想をデジタルで実現するのが、岸田文雄総理のあげているデジタル田園都市国家構想です。

 骨格としては昔に作られたものですが、新しい価値を生み出すということについては、今でも十分通用します。

 最後に、今までのような中小企業支援策ではないスタートアップ5カ年計画をきっちりやり切るということです。

 スタートアップにベンチャーキャピタルの投資が入っていないことが大問題で、ベンチャーキャピタルマーケットが大きくならないのは、スタートアップという定義が曖昧になっているということも、一つの要因でもあるでしょう。

 そこを5年間で変えていくということです。

 次の基調講演は、『デジタル時代の政府の役割』と題して、経済産業省 商務情報政策局 情報経済課長である須賀千鶴デジタル庁参事官のお話です。

 岸田総理が就任演説で「新しい時代を開拓するためには、デジタル改革、規制改革、行政改革を一体的に進めていくことが重要であり、デジタル臨時行政調査会を立ち上げます。従来の発想の枠を超えた、思い切った具体策を提案し、実現してまいります」と約束したデジタル臨調担当であり、新しい取り組みが期待されています。

 最初に5つのグローバル・リスク・トレンドを話され、具体的には、経済リスク・環境リスク・地政学リスク・社会リスク・テクノロジーリスクということです。

 デジタル原則に照らした規制の点検・見直し作業を行いデジタル社会の早期実現を目指すために障害になる制度の改革を行っていきます。

 最後のセッションであるパネルディスカッションは、『デジタル田園都市国家構想におけるウェルビーイングの実現を考える』と題して行われました。

各パネリストは、

室井照平 福島県・会津若松市長
鈴木康友 静岡県・浜松市長

前野隆司 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授/慶応義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長

高橋範光 一般社団オープンガバメント・コンソーシアム理事 / ディジタルグロースアカデミア社長

 そしてモデレーターは、

 南雲岳彦 一般社団法人オープンガバメント・コンソーシアム理事 / 三菱UFJリサーチ&コンサルティング専務執行役員です。

 ウェルビーイングは最近聞くようになった言葉ですが、世界ではメジャーになっており、今後日本でも普通に使われるようになるでしょう。

 オープンガバメント・コンソーシアムでも今年度から新しく分科会も始まりました。

 ウェルビーイングとは「身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること」また「健康とは、病気ではないとか、弱っていないというわけではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべて満たされた状態(Well-being)にあること」です。

 パネルディスカッションでは、地域生活のWell-being指標10個が紹介され、地域によって特徴が違うとも述べられていました。

 会津若松・浜松両市は、デジタル田園都市国家構想推進交付金の採択を受けており、そこでも「Liveable Well-Being City」指標(LWC指標)が重要視されていました。

 国からもらった予算を市民のためにより有効に使ってもらうという意識が国の内外で高まっているからでしょう。

 国の予算が道路や橋に使われている時は分かりやすい建造物というものが残りましたが、今後はハードよりもソフト指向になってきており、より具体的に効果の現れるサービスに対して予算配分されるようになります。

 デジタル田園都市国家構想とは、より国民が幸せになる国を作るということではないでしょうか。

 田園都市国家構想で東京中心から近県に生活圏が移ったように、デジタル田園都市国家構想によって、新しい生活環境がデジタルの力を使って生み出されるでしょう。

 働き方改革もかけ声だけで中々進みませんでしたが、新型コロナウイルスが一気に後押しをしました。

 田園都市国家構想も、思いがけないことが起こって一気に加速するかもしれません。

ジャンルで探す