新時代に入ったベンチャー業界の「活況」と「選別」
「数年前と比べてエコシステムが確立されてきた」
ベンチャー関係者がそう語るように、日本のスタートアップの存在感が高まっている。その数は23年に2万2000社と21年比で5900社増えた(スピーダ調べ)。
盛り上がりは、国内最大級のスタートアップカンファレンス「IVS」の様子でもわかる。京都の会場には過去最多の1万2000人が来場、人脈構築のために積極的に交流する姿が随所に見られた。
厳しい資金調達の現実
しかし資金調達の現実は厳しい。
国内スタートアップの資金調達総額は22年に過去最高の約9800億円だったが、23年は約8000億円まで下落。24年上期は約3200億円と前期を約2割下回る水準で推移する。欧米の金利上昇などが冷や水となり、投資家の姿勢は慎重なままだ。
成熟期での選別が進む
成長の段階によっても状況は異なる。「シード」や「A」といった立ち上げ間もないベンチャーへの投資額はほぼ変わらないが、ミドル(成長期)やレイター(成熟期)といった「C」や「D」の調達額の下落が続く。
ただ、レイターステージも厳しいベンチャーだけではない。クラウド型人事労務ソフトのSmartHRが7月に約214億円の調達を発表したように、有望企業には資金が集中する「選別」が進む。
投資家からの注目度が高いのは「ディープテック」と呼ばれる研究開発型企業。AI、航空・宇宙、バイオ、エネルギーなど、社会へのインパクトが大きい分野に資金が投じられている。そうした研究力や技術力を持つ大学にも目が向けられ、大学発ベンチャーの資金調達は年々増えている状況だ。
国も大型予算で全面支援
国も政府調達や補助金で支援する新たな「中小企業技術革新制度(日本版SBIR)」を昨年、本格始動。「ディープテックを成長させるレバレッジ(テコ)としたい」(経済産業省)考えだ。
VC(ベンチャーキャピタル)にも変化がある。ビヨンドネクストベンチャーズは、昨年設立したファンドで追加出資を含む1社当たりの最大投資額を従来の約3倍となる20億円に引き上げた。「ミドルやレイターの資金サポートも手厚くし、投資先企業を上場まで支える」(伊藤毅CEO)ためだ。
国が27年に100社を目指すユニコーンは現在10社程度。スタートアップの成長段階に応じシームレスに支援を展開していく、新たな段階に入った。
(木皮 透庸 : 東洋経済 記者)
09/17 08:00
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