「YouTubeのゲーム実況動画」は違法?セーフ?

ゲーム実況

「ゲーム実況動画」では当然、プレイ中のゲーム映像が映るケースが多いと思いますが、ゲームの映像部分は、著作権法上、映画の著作物として扱われています(写真:polkadot/PIXTA)

YouTube、ニコニコ動画、TwitCasting(ツイキャス)などで配信される動画の人気ジャンルの1つに「ゲーム実況動画」があります。

ゲーム実況動画とは、プレイヤーが実況をしながらコンピューターゲームをプレイする動画をいいます。

「ゲームは自分で楽しむものでは? ゲーム実況って誰が見るの?」と疑問に思う読者の方々もいらっしゃるかもしれませんが、ゲームの攻略方法を調べるために視聴するケースもあれば、独特なプレイそのものの面白さやプレイ中のトークの面白さを楽しんで視聴するケースもあります。私もゲーム実況を視聴したことがありますが、トークの面白さでかなり楽しめました。

逮捕されたケースも存在する

コンピューターゲームが身近な10代20代はゲーム実況動画を視聴する傾向が高く、ゲーム実況動画を配信している中高生もいます。これからやってみたいと考えている中高生や若い方も多いことでしょう。でも、ゲーム実況動画の配信は違法になる場合もありますし、逮捕されたケースも存在します。思わぬトラブルに巻き込まれないよう、ゲーム実況動画配信のリスクについて解説します。

「ゲーム実況動画」では当然、プレイ中のゲーム映像が映るケースが多いと思いますが、ゲームの映像部分は、著作権法上、映画の著作物として扱われています。そのため、著作権者(多くはゲーム会社)の許諾がないゲーム実況動画の配信は、著作権の侵害として違法となるリスクが高いです。

しかし、一定の条件下でゲーム実況動画の配信を許諾しているゲーム会社もあります。

例えば、あるゲーム会社は、自社の著作物利用に関するガイドラインにおいて、許諾するゲームを限定することなく、顧客の創作性やコメントが含まれるという条件でゲーム実況動画や紹介動画の配信を許諾しています。

また別のゲーム会社は、動画および静止画の配信ガイドラインにおいて、許諾するゲームを限定しかつ許諾するゲームにおいて実況動画ができる範囲(例:第3章まで)を限定しており、許諾していないゲームについての動画の投稿・配信は一切禁止としています。

ゲームのジャンルによる"傾向"

このように、ゲーム会社のガイドラインの内容はまちまちですが、傾向としては、対戦ゲームの場合は許諾の範囲が広いことが多く、テキストを読み進めていくことでストーリーを楽しむタイプのアドベンチャーゲームやノベルゲーム(以下、アドベンチャーゲーム等)の場合は許諾の範囲が狭いまたは許諾をしないことが多いです。

アドベンチャーゲーム等の場合、ゲーム実況動画でそのゲームの重要な部分やエンディングを見てしまうと顧客候補の購買意欲が低下し収益低下をもたらす可能性が高いためだと思われます。

つまり、ゲーム実況動画の配信は、「一律適法」でも「一律違法」でもなく、「そのゲーム会社がどのように許諾しているか(許諾している範囲内かどうか)」により変わります。ゲーム実況動画を配信しようとするときには、事前に必ずゲーム会社のガイドラインを確認しましょう。

ガイドラインに違反する形でゲーム実況動画を配信した場合、「ゲーム実況動画はゲームの宣伝になっているからいいじゃないか」「他のゲームの実況動画配信は許されているのにおかしい」といった反論は通用しません。

ある男性が、ゲーム会社が著作権を持つアドベンチャーゲーム等の実況動画をYouTubeに投稿しましたが、このゲーム会社は、このアドベンチャーゲーム等の実況動画配信をガイドラインで許諾していませんでした。そして、この実況動画には、いわゆる“ネタバレ”になるエンディングの実況まで含まれていました。

また、この男性は、このゲーム会社以外の会社が著作権を有するアニメ動画のダイジェスト動画の配信もしていました。この男性は、2023年5月に著作権法違反の疑いで逮捕され、その後同年9月7日、懲役2年および罰金100万円、執行猶予5年の有罪判決が言い渡されました。

この判決では、「被告人には、各作品の著作権を侵害しようとする強い意図まではなかったにせよ、本件は、各作品の商品価値を失わせて収益低下をもたらしたり、作品の品格を落としたりするなど、各著作権者に大きな金銭的被害をもたらす可能性があった犯行といえる」「被告人に収益目的があったのも事実で、実際、多額とまではいえないものの、本件犯行により推計で22万円程度の収益を得ていることも軽視できない」と判示されています。

損害賠償請求を受けることもあり得る

刑事事件で有罪判決となったケースをご紹介しましたが、民事上はどうなのでしょうか。刑事事件とならなくても、ゲーム実況動画の配信が著作権侵害に該当すれば、ゲーム会社から損害賠償請求を受ける可能性は十分にあります。

また、損害賠償請求とまでいかなくても、ゲーム会社から直接または動画共有プラットフォーム・動画配信サービスを通じて警告や動画の削除要求がなされることもあり得ますし、動画共有プラットフォーム・動画配信サービスによる制裁(アカウント停止等)もあり得ます。

ゲーム実況動画を始めるときは、事前に、そのゲーム会社のガイドラインと、利用する動画共有プラットフォーム・動画配信サービスのガイドラインや利用規約を確認することが必須です。このような事前準備は、動画の編集等に比べて面白みに欠けるものではあるでしょうが、楽しくゲーム実況動画の配信を続けるうえでとても重要です。

(宮川 舞 : 銀座数寄屋通り法律事務所 弁護士)

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