ファーウェイの業績が「米制裁前」の水準を回復

ファーウェイはアメリカ政府の制裁強化で大打撃を受けたスマホ事業を完全復活させた。写真は2024年4月に発売したフラッグシップ機種「Pura 70 Ultra」(同社ウェブサイトより)

中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の業績がアメリカ政府の制裁が強化される前の2019年の水準を回復した。

同社は8月29日、2024年上半期(1~6月)の業績の概要を発表。それによれば、上半期の売上高は4175億元(約8兆4610億円)と前年同期比34.3%増加した。上半期の記録としては制裁強化前の2019年の4013億元(約8兆1327億円)を上回り、過去最高だった2020年の4540億元(約9兆2007億円)に次ぐ規模だ。

2024年上半期の純利益率は13.2%と、前年同期より1.8ポイント低下した。とはいえ、売上高の大幅増を背景に純利益の金額は増えている。ファーウェイは具体的な数字を開示していないが、計算上は551億元(約1兆1167億円)となり、上半期として初めて500億元(約1兆133億円)を突破した。

(訳注:ファーウェイは非上場企業であり、2024年上半期の業績数値は売上高と前年同期比の増加率、純利益率だけを開示した)

スマホ事業が完全復活

「グループ全体の経営状況は期待通りだった」。ファーウェイの輪番董事長(訳注:交代制の会長職で、任期は6カ月)を務める徐直軍氏は、上半期の業績についてそうコメントした。

同社の業績回復を牽引したのは、(アメリカ政府の制裁により一時は大幅に縮小した)スマートフォン事業の完全復活だ。

2023年8月、心臓部に自社設計の高性能半導体を搭載したハイエンドスマホ「Mate 60シリーズ」を発売したのを皮切りに、同年9月に折り畳み式の「Mate X5」、12月に若者向けの「Nova 12」を投入。2024年4月には以前の「Pシリーズ」を改名したハイエンドスマホ「Pura 70シリーズ」を発売し、制裁前の「ダブルハイエンド戦略」に復帰を果たした。

(訳注:ファーウェイのダブルハイエンド戦略に関しては『ファーウェイ、スマホ事業が「正常化」の意味深長』を参照)

市場調査会社のIDCのデータによれば、中国市場における2024年1~3月期のスマホ販売台数(出荷ベース)は約6926万台と、前年同期比6.5%増加した。そんな中、ファーウェイは1~3月期の販売台数を前年同期の2.1倍に急増させ、市場シェアを8.6%から17.0%に拡大した。

「ファーウェイのスマホの売れ筋は、MateシリーズやPuraシリーズなどのハイエンド機種だ。その復活の影響を最も大きく受けているのは、同じくハイエンド機種が主力のアップルだろう」

IDC中国のリサーチ・マネジャーを務める郭天翔氏は、財新記者の取材に対してそうコメントした。

自動車関連事業も黒字化達成

スマホだけではない。アメリカ政府の制裁強化後に新規参入した自動車関連事業の収益化も、ファーウェイの業績回復に貢献している。

ファーウェイは自社ブランドのクルマを作らず、複数の自動車メーカーと共同開発する独自の戦略をとる。写真は賽力斯集団と共同開発した「問界M9」(問界ブランドのウェブサイトより)

立ち上げ当初は苦戦もしたが、中堅自動車メーカーの賽力斯集団(セレス)と共同で立ち上げた「問界(AITO)」ブランドのEV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド)の人気に2023年後半から火がついた。

メーカー希望価格が47万~57万元(約952万~1155万円)の高級SUV「問界M9」は、2024年7月の月間販売台数が1万8000台に達し、中国市場の50万元(約1013万円)以上のカテゴリーで販売ランキング首位に立った。

2024年8月には、賽力斯集団が開示した資料から自動車関連事業の直近の業績が明らかになった。それによれば、ファーウェイの「スマートカー・ソリューション・ビジネスユニット」は2024年上半期に売上高104億4000万元(約2116億円)、純利益22億3000万元(約452億円)を計上し、すでに黒字化を達成している。

(財新記者:劉沛林)
※原文の配信は8月29日

(財新 Biz&Tech)

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