新iPhone 16、生成AI以外の「3つの注目ポイント」

9月9日(現地時間)に発表されたiPhone 16(筆者撮影)

アップルは、9月9日(現地時間)にiPhone 16シリーズを発表した。目玉になるのは、アップル独自の生成AI機能となる「Apple Intelligence」。文章をAIに作成してもらったり、長文を要約できたりといったことを、素早く処理できるのが特徴だ。イラストを作成する機能も用意される。

iPhone 16 Pro(左)とiPhone 16 Pro Max(右)。画面サイズがこれまでのプロモデルより、0.2インチ大型化している(筆者撮影)

また、生成AIを用いることでSiriもより賢くなり、言い間違いを訂正したり、あいまいな表現を用いても文脈を理解し、回答するようになる。あらかじめ決まったコマンドのような言葉を発するのではなく、より人間に近い形で話しかけることが可能になった。

Apple Intelligenceに対応し、Siriが進化。話しかけてもより自然に反応が返ってくるようになった(筆者撮影)

「AI以外の注目機能」とは?

Apple Intelligence自体は6月に開催されたWWDCで発表されており、既存モデルでは昨年発売された「iPhone 15 Pro」「iPhone 15 Pro Max」の2機種がこれに対応する。iPhone 16シリーズでは、この対応機種をノーマルモデルにまで広げた格好だ。

基調講演でアップルのCEO、ティム・クック氏が「Apple Intelligenceのために開発された初のiPhone」とうたっていたように、チップセットの処理能力が高いだけでなく、発熱を防ぐ内部構造やバッテリーなどの容量も増し、AI利用に最適化したという。

iPhone自体の操作方法をApple Intelligenceに聞くといったこともできる(筆者撮影)

一方、当初の対応言語は英語のみとなり、日本語環境での利用はできない。アップルは、対応する国や地域を拡大する方針を示しており、2025年には日本語の利用も可能になる見込みだ。では、Apple Intelligenceが利用できない日本でのiPhone 16シリーズは、どこが注目ポイントになるのか。

1つ目がカメラ機能だ。4機種共通でカメラを操作するための「カメラコントロール」を搭載したほか、画質面もノーマルモデルとプロモデルのそれぞれが、先代のiPhone 15シリーズから進化している。まずiPhone 16/16 Plusは、超広角カメラがオートフォーカスに対応。これによって、マクロ撮影機能が実現した。

iPhone 16は超広角カメラがマクロ撮影に対応。また、カメラの配列が縦に並ぶようになり、空間ビデオや空間写真の撮影も可能になった(筆者撮影)

また、iPhone 16 Pro/16 Pro Maxは、超広角カメラの画素数が4800万画素に向上している。これによって、マクロ撮影の画質が向上する。もともとマクロ撮影は、1200万画素のカメラで撮った写真の一部を切り出し、拡大して不足したぶんの画質を映像処理で補っていた。これに対し、iPhone 16 Pro/16 Pro Maxは画質が高いため、一部を切り出しても劣化がしづらい。

「フォトグラフスタイル」が進化

今回発表された4モデルは、共通で「フォトグラフスタイル」も進化している。フォトグラフスタイルとは、AIを使って「鮮やか」や「暖かい」などにトーンを変更する機能だ。iPhone 16シリーズではこの機能が大きくアップデートされ、人物撮影の場合、肌のトーンだけを変えたり、その調整を直感的に行うことが可能になった。人の肌の見え方の好みは、国や地域、人ごとに大きく異なるためだ。

フォトグラフスタイルが進化。画面下に表示されたパッドのような四角をタップして色味などの調整を行える(筆者撮影)

これまでもフォトグラフスタイルは撮影時に適用され、その後、変更はできなかったが、iPhone 16シリーズでは後から編集することも可能になる。写真の編集でトーンをいじると全体の色味まで一律で変わってしまうが、フォトグラフスタイルであれば人物だけといった形で修正ができる。

2つ目の注目点は、ノーマルモデルのiPhone 16/16 Plusの性能が大きく上がり、選びやすくなったことだろう。iPhone 14は「A15 Bionic」、iPhone 15は「A16 Bionic」といったように、これまでのノーマルモデルは1世代古いプロセッサーを搭載するのが通例になりつつあった。同時に発売されたプロモデルと比べると、一段劣って見えてしまっていたというわけだ。

iPhone 16が搭載しているA18。プロセッサーの世代がプロモデルとそろい、性能差が小さくなった(筆者撮影)

これに対し、iPhone 16シリーズではiPhone 16/16 Plusが「A18」、iPhone 16 Pro/16 Pro Maxは「A18 Pro」というすみ分けになり、プロセッサーの世代は統一された。A18 Proには、プロモデルにのみ搭載されている最大120Hz駆動のディスプレーや、常時表示、USB-Cの高速転送をサポートするコントローラーが組み込まれているが、それ以外の差分は小さい。実際にはGPUのコア数などの差分もあるが、処理能力を理由にノーマルモデルを避ける理由は少なくなったと言える。

新しい「カメラボタン」

3つ目は、カメラコントロールという新しいボタンだ。ボタンといっても、実際に押し込めるわけではなく、これは感圧式のセンサーで圧力を検知して、それに合わせたフィードバックを返すことで押したような感覚を再現している。カメラコントロールをクリックするとカメラが起動し、もう1回押すとシャッターを切ることができる。

カメラコントロールを使うと、ズームなどの操作を簡単にできる(筆者撮影)

また、左右にスワイプすることで、ズームの倍率を切り替えたり、先に挙げたフォトグラフスタイルの効果を変更したりといった操作が行える。まさに、カメラをコントロールするためのボタンといえるだろう。ただし、現時点では半押しでフォーカスロックをかけるといったデジカメのようなことはできない。アップデートで対応するとのことで、今後も進化していく予定だ。

売りの機能であるApple Intelligenceの対応が来年になるため、その完成を待って使い勝手を確認してから、iPhone 16シリーズを買うのもありだ。一方で、カメラや処理能力などに魅力を感じるのであれば、すぐに購入してもいい。Apple Intelligenceがないぶん驚きは少ないかもしれないが、少なくとも前モデルより確実に性能は上がっているため、満足することは間違いないだろう。

(石野 純也 : ケータイジャーナリスト)

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