ワークマン「新作ビジネスバッグ」差別化の狙い

ワークマン アンブレテックス シームレス

仕事用にも使えるワークマンのバッグ(筆者撮影)

ランドセル市場に8800円(税込み)という低価格商品で今年参入し話題をさらった作業服大手のワークマンが、今度は大人向けビジネスバッグを開発した。価格は7800円と6800円(税込み、以下同)と、ランドセルの時と同様にリーズナブルだ。8月下旬に開催された新商品展示会に足を運び、同社の狙いに迫った。

「丈夫」で「低価格」を実現

当日展示されたバッグには「耐切創」「水の浸入をブロック」という説明文が添えられていた。

【写真を見る】トレンドのビジネスカジュアルを取り入れたワークマンの新作ビジネスバッグ(4枚)

「『耐切創』は“擦り切れにくい”の意味で、当社ではアウトドア用手袋にこの言葉を用いていますが、新たにバッグでも訴求しました。『水の浸入をブロック』には、例えばゲリラ豪雨に遭っても中の“荷物を安心して持ち運びできる”という意味も込めています」

商品を開発したワークマンの大後湧暉(おおご・ゆうき)氏(製品開発部第3部チーフバイヤー)は、こう語る。製品開発部第3部はバッグ全般の開発を担当する部署だ。

今回の商品は、場所や場面は問わないものの、主にビジネス利用を想定して開発したという。

「スーツやネクタイ姿で通勤する社会人が減り、ビジネスカジュアル姿でのリュック通勤が増えています。そんな時代性を意識したデザインや機能性にしました。とはいえ、会社の強みである“丈夫”“低価格”を実現しています」(大後氏)

大後氏自身も電車で通勤する。そこでの見聞や消費者の声も商品に反映したという。

ワークマン アンブレテックス シームレス

ワークマンの強みである機能性を訴求(筆者撮影)

今回のシリーズ名は「アンブレテックス(UNBURETEX)」(6800~7800円)と「シームレス(SEAMLESS)」(6800円)ブランドで展開。それぞれのこだわりを説明してもらった。

「『アンブレテックス』は、アンブレイク+アンブレラ+テキスタイルを組み合わせた造語です。使用した生地は摩擦に強く、切れにくい。さらに圧着シームテープを使用することで隙間から水が入らない二重構造になっています。

例えば、アンブレテックスの『グランドバックパック』(7800円)は、約38L(縦約50㎝×横約29㎝×幅約24㎝)のサイズで、防水と耐水機能に加えて止水ファスナーもついており、より浸水を防いでくれます。中は13インチのPCなら安定して入る収納です。ペットボトル飲料を入れられるドリンクホルダーもつけました」(大後氏)

同商品の素材は表側がナイロン90%とポリエチレン10%、裏側がポリエステル100%で中国製となっていた。

色はブラックとダークグレーで、表面は◇や×の繰り返しデザインになっており、「耐切創機能をデザインにも反映した」大後氏のこだわりだという。背負った感じは下の写真のようになるが、背中クッション・肩ひも部分が分厚く、長時間の使用でも疲れにくい。ある程度の荷物が入るので国内の1泊出張でも使えそうだ。

同シリーズの6800円の商品には、例えば「トールバックパック」がある。機能性は変わらないが、サイズは約24L(縦約51㎝×横約26㎝×幅約17㎝)と少し小さめ。荷物の多さや使い勝手に応じて選ぶ。

無縫製の「シームレス」シリーズ

ワークマン アンブレテックス

開発者の大後氏自ら背負ったイメージを披露(筆者撮影)

「一方の『シームレス』は無縫製という意味で、できるだけ縫製をせず圧縮で立体的に仕上げたアイテムです。この技術を採用したことで上質で高級感のあるフォルムにもできました。圧着シームテープを用いて隙間から水が入らない構造や止水ファスナー仕様はアンブレテックスと変わりません。クッション付きでPCも安定して入ります」(同)

同じようなリュックタイプでも「シームレス アーバンバックパック」(6800円)は、前述のアンブレテックスの「グランドバックパック」や「トールバックパック」に比べて、さらに小ぶりだ。素材は表側も裏側もポリエステル100%で、商品サイズは約18L(縦約43㎝×横約29㎝×幅約14㎝)となっていた。

ドリンクホルダーがないので飲料は直接バッグの中に入れる。そこまで荷物が多くない日に向きそうだ。ここで紹介した商品はワークマン全店で購入可能だという。

「近年のビジネスバッグ市場をどう見ているのか」も聞いてみた。

「選び方はさまざまですが、利用シーンについてはオン・オフの境目が低くなったことを感じます。例えば、同じリュックで平日の仕事も休日の外出もする人が増えたのではないでしょうか」(大後氏)

バッグ選びは服装とも関連性があり、ビジネス現場のカジュアル化も大きいだろう。気候も昔に比べて秋が短くなり、取材をしていても「秋らしいコーディネート」が薄れたと感じる。

ワークマン

「アンブレテックス」のPC収納部分(筆者撮影)

バッグ好きな人は高額品でも買うが…

また、筆者はこれまで別ルートで仕事用バッグにおける消費者意識を何度も聞いてきたが、バッグ好きな人は5万円を超える商品でも買う。

2017年には発売後に完売した「大人ランドセル」という10万円の商品(当時)を取材して記事で紹介した。

こうした高額品は、例えば上質な革を使っていたり、日本の職人による手縫い作業が行われていたりする。職人の作業現場を取材したこともあるが、根気のいる丁寧な仕事ぶりだった。そうした手間も価格に反映されていく。

もちろん、そこまで仕事用バッグに支出したくない人もいる。これまで行った調査では1万~3万円台の購入が多かった。こだわり方は人それぞれだ。

本格採用していない革製も視野

ちなみにワークマンの従業員はどんな服装とバッグで通勤しているのか。

「自社PB(プライベートブランド)着用ならどんな服でもよく、特別な日以外の夏は大半がTシャツ姿で出勤します。PCの持ち運びができるリュック姿の通勤が多いように感じます」(大後氏)

商品のこだわりは紹介したとおりだが、選択肢を増やすのも目的だろう。低価格のバッグが欲しいが耐久性が心配、という人は検討できそうだ。

ワークマンとして、仕事用バッグの今後の展開をどう考えているのか。

「丈夫で低価格という基本を守りながら、アイテム数を増やしたいと思います。開発者としては、まだバッグでは本格採用していない革製も視野に入れて開発していきたい。

また、『ワークマン女子店』では今年の秋冬商戦から男性用“大人カジュアル”の新製品を大量に投入しており、それに合ったバッグの開発も考えています」(同)

ランドセルよりも選択の余地があり、価格帯もさまざまな仕事用バッグ。その分、激戦市場だが、ワークマンの商品が消費者にどう評価されるだろうか。

(高井 尚之 : 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント)

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