中国自動車「吉利汽車」、輸出目標引き上げの強気

吉利汽車はアフリカや中央アジアなどの新興国市場を積極開拓し、輸出台数を急速に伸ばしている(写真は同社ウェブサイトより)

中国の民営自動車大手の吉利汽車(ジーリー)は、2024年の輸出台数の目標を33万台から38万台に引き上げた。同社が8月21日に開催した2024年上半期(1~6月)の業績説明会の中で明らかにした。

吉利汽車の2024年上半期の輸出台数は19万7000台と、前年同期比67%の大幅増を記録。「わが社の輸出の伸び率は業界平均を上回る」。同社のCEO(最高経営責任者)を務める淦家閲氏は、そう胸を張った。

輸出台数の急増は、主力の「ジーリー」ブランドで進めてきた新興国市場の開拓の成果だ。例えばアフリカ市場向けの輸出は、台数ベースではまだ規模が小さいものの、2023年の5倍を超えるペースで伸びている。中央アジアやメキシコ向けの輸出も好調だ。

吉利汽車はさらに、中東、東ヨーロッパ、ベトナム、インドネシア、オーストラリア、ニュージーランドなどでも市場開拓を進めている。

欧州市場でサブスクも展開

また、同社傘下の高級車ブランドの「領克(リンク)」は、主にヨーロッパ市場の開拓に挑戦している。リンクはこれまで、ヨーロッパ市場でサブスクリプション・サービス(訳注:毎月定額の料金でクルマを利用できるサービス)のみを展開し、個人向けの直接販売は手がけていなかった。

淦CEOの説明によれば、リンクのサブスクの利用者数はすでに数十万人に達し、良好なブランドイメージを築けたという。それを土台に、今後はヨーロッパ市場で個人向けの直接販売を始める計画だ。

吉利汽車からスピンオフした高級EVメーカーの「極氪(ジーカー)」も、海外市場の開拓に余念がない。同社CEOの安聡慧氏は、「2024年末までに50以上の国と地域でクルマを販売したい」と意気込む。

(訳注:ジーカーは2021年に分離独立し、2024年5月にニューヨーク証券取引所に上場した。現在も発行済株式の過半数を吉利汽車が保有する)

ヨーロッパの自動車市場では、中国メーカーの輸出攻勢に対する風当たりが強まっている。

欧州連合(EU)の政策執行機関である欧州委員会は8月20日、中国製EV(電気自動車)を対象にした反補助金調査に基づく追加関税率の最終案を発表。吉利汽車のEVには19.3%の追加関税が課されることになった。

ジーカーはEUの追加関税によりヨーロッパ市場開拓の見直しを迫られた。写真は同社がオランダに開設したショールーム(ジーカーのメディア向け資料より)

EUは域外からの輸入車に10%の関税を課しており、追加関税はそれに上乗せされる。吉利汽車の関税率は合計29.3%に上り、ヨーロッパ向けのEV輸出に痛手となるのが確実だ。

EU追加関税の影響は限定的

とはいえ吉利汽車のEVの輸出は、ヨーロッパ向けはまだ少ないのが実態だ。前述のリンクのサブスクにも、EVの車種設定はない。

「EUの追加関税の対象はEVだけであり、PHV(プラグインハイブリッド車)やHV(ハイブリッド車)は含まれない。わが社はそれらの製品をヨーロッパに積極的に売り込んでいく」

吉利汽車の淦CEOはそう述べ、追加関税の影響は限定的という見方を示した。一方、EV専業であるジーカーの安CEOは、今後の海外市場開拓について次のように語った。

「ジーカーのヨーロッパ市場開拓は、追加関税の影響によりペースダウンを余儀なくされた。しかしその分、ヨーロッパ以外の市場開拓をスピードアップしたい」

(財新記者:安麗敏)
※原文は8月22日に配信

(財新 Biz&Tech)

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