ペアリングの妙を知って楽しむコスパ抜群ワイン
ワインの「ペアリング」の基本
ワインは食事の一部であり、造られた土地の食文化と密接に関係している。おいしい食事とワインをペアリングさせることで、双方の味わいがぐっと深くなるし、楽しみ方も多様になる。
赤ワインに牛ほほ肉の煮込み。白ワインに舌平目のムニエル。そんな本格的なペアリングもいいが、リーズナブルでおいしいワインが増えている今、もっとカジュアルにペアリングを楽しんでも。
アヒージョにスペインワイン、ゴルゴンゾーラチーズにイタリアの甘口の白ワイン、トマトソースにイタリアのキャンティなど、産地や料理の色味を意識するのがペアリングのコツだ。
私は外食でワインを飲むときは、大人数の時以外はボトルでオーダーせずグラスワインにして、そのお店のメニューの数々と何種類かのグラスワインとの自分流のペアリングを楽しんでいる。高級なお店でもカジュアルなお店でも、それぞれの料理に合わせてペアリングするのが面白い。
好きなワインを1本選べと言われたら、シャンパンを推す。さまざまな観点から見てバランスが取れていて、多くのシチュエーションで楽しんでいただける可能性が高く、だし味を大事にする和食にも合う。
アルコール度数が12度くらいと低めだから、酔い心地もよい。あえてマイナスポイントを挙げるとすると価格が高騰していること。例えば、同じスパークリングワインで考えると、イタリアのプロセッコならば1000円台でも気軽に楽しむことができる。
予算別にコスパ抜群のワインを選ぶとしたら
コスパのいいワインという視点で、予算別にワインをおすすめするとすれば……まずは、ポルトガルの「アロ」。1000円台でありながら、果実味と酸味、ミネラル感が渾然一体となっている。ポルトガルの白ワイン産地の中でも、屈指の実力を誇る生産者が手掛けていて、青リンゴや白い花のアロマティックな香りも魅力だ。
3000円台では、南アフリカの「ポールクルーバー エステート シャルドネ」。バランス感あふれるクリーミーな味わいで、黄リンゴやピーチ、トースト等のアロマも豊か。
同じく、フランス・ボルドーの「エスプリ・ド・パヴィ」は、サン・テミリオンのトップシャトーのパヴィが手掛けるサードワイン。ブルーベリーのような熟した果実味があり、サン・テミリオンらしい包み込むようなふくよかさも感じられる。
5000円台ならば、オーストラリアの「グロセット アーリア リースリング」は、オーストラリア屈指のリースリングとして人気で、引き締まった凝縮したミネラル感が感じられ、伸びやかで美しい酸味が余韻まで続いていく。
7000円台では、南アフリカの「リチャード・カーショウ エルギン シャルドネクローナル・セレクション」。南アフリカ最高峰のシャルドネともいわれ、まろやかで豊潤な果実味、トーストやバターのようなフレーヴァーも感じられる。
和食によく合うワインも
1万円台は、シャンパンで固めたい。まずは「テタンジェ プレスティージュ ロゼ」。シャンパーニュの貴婦人と称され、フルーティーでさわやか、エレガントな味わいだ。同じシャンパーニュの「ボランジェ・スペシャル・キュヴェ」は、きめの細かい上質な泡で、こくと繊細さが融合した味わいがある。「ドゥラモット・ブリュット・ブラン・ド・ブラン」は、フローラルな香りとシルクのようなテクスチャーで、和食にもよく合う。
これからの季節に楽しみたいワインとなると……甘いスパイス感のあるピノ・ノワールと、きのこグラタン、きのこの串焼き。甲州ブドウの果皮や種からの色素やタンニンがきれいに抽出された「シャトー・メルシャン笛吹甲州グリ・ド・グリ」と、ぎんなん焼きや豚の角煮。
寒暖差が生んだ豊かな酸味と風味が特長の「シャトー勝沼 鳥居平ブラン キュヴェ ヒデカ」と、さんまの塩焼き。日本の秋の夜長にこそ味わいたいペアリングだ。
世界中で造られているワイン、料理との組み合わせも無限
僕が、ソムリエになったきっかけは「自分が本当にやりたい仕事をしたい」と、大学を出て就職をせずにアルバイトを続けた後、神戸の老舗フランス料理店で働き始めたこと。そこには郷土料理とワインの組み合わせでマリアージュを楽しむという、当時の日本にはまだなかった世界観があって感動した。
その土地の食文化と密接に関係するワインは、今や世界中で造られていて、料理との組み合わせも無限にある。
僕は飲食業界に身を置くものとして、必然的にソムリエの資格を目指すことになったが、飲食業界の人にかかわらず、ワインの仕事に関わっていない方でも資格を取りたいという方が年々増えてきた。こんなに熱心に勉強したいという魅力のある飲み物は、ワイン以外にほかにないのではないか。
(加藤 光彦 : ライター)
09/08 09:00
東洋経済オンライン