ChatGPTだけじゃない!生成AIを今学ぶべき理由

生成AI

なぜ今、生成AIの活用が必須なのでしょうか(写真:metamorworks/PIXTA)
生成AIの登場は、私たちの生活だけでなく、ビジネスの在り方を根本から変える力を持っています。AIやデータサイエンスの知識がビジネスパーソンにとって必須となる今、生成AIをいち早く理解し、活用することが、これからのキャリアを左右する重要なカギとなっています。
本記事では、NRIデジタル・藤田一樹氏の『0から始めるAI・データサイエンス超入門』より一部を抜粋・再構成のうえ、なぜ今、生成AIの活用が必須なのか、生成AIがもたらすビジネスへのメリットについてChatGPT、Gemini、Claudeといった代表的な生成AIサービスを用いて解説します。

AIの歴史を変えたChatGPTの登場

『0から始めるAI・データサイエンス超入門』書影

2022年11月、アメリカのOpenAI社が発表した「ChatGPT」の登場は、私たちの日常にAIが浸透する大きなきっかけとなりました。ChatGPTは、まるで人間のように自然な会話ができるチャット形式のサービスです。簡単な質問を入力するだけで、AIが高精度な回答を自然な文章で返してくれます。

このChatGPTの登場は、AIの歴史における大きな転換点となりました。従来のAIは、主に画像認識や音声認識など、特定のタスクに特化したものが主流でした。しかし、ChatGPTは、人間のような自然な文章を作成できる能力を持つ生成AIとして、世界中に衝撃を与えたのです。

ChatGPTの進化は止まることなく、日々新しい機能が追加されています。テキストだけでなく、画像や音声など複数の種類のデータを同時に処理できる「マルチモーダル」への対応も進んできました。画像認識機能を使えば、画像の内容を理解し、チャットで質問に答えることも可能です。また、音声認識機能を使えば、音声でのチャットも可能になりました。

音声チャットによって、まだ文字を書くことのできない3歳の子供でも、AIを活用できるほど身近な存在へと変化を遂げた生成AIサービスが、私たちの生活やビジネスを大きく変革しようとしているのです。

日本語性能No.1 Google Gemini

生成AIの競争において、ChatGPTの強力なライバルとして注目されているのが、Googleの「Gemini」です。本場アメリカでは、Gemini(ジェミナイ)と呼ばれていますが、日本ではGemini(ジェミニ)と呼ばれ、ChatGPTに次ぐ人気の生成AIサービスとして活用されています。

Geminiの特に優れているポイントは、「大量データへの対応」と「高い日本語性能」です。

◆大量データへの対応◆

OpenAIのChatGPT-4oに匹敵する最新モデルである「Gemini 1.5 Pro」では、主要モデルで最大の200万トークンという大規模なコンテキストウィンドウに対応しています。これは、ChatGPT-4oの12万8000トークンと比較しても大きな差となります。

コンテキストウィンドウとは、生成AIのモデルが1度に処理できる単語や画像、動画の量のことです。生成AIはユーザーによって入力されたテキストや画像、動画を解析する際に、トークンという最小単位のブロックに分割して処理を行います。トークンへの分割は、日本語と英語でも多少異なり、生成AIを利用する際に英語の方が適していると言われる理由の1つが、このトークンの効率性によるものです。

日本語と英語のトークへの分割方法の違い

OpenAI社HPより作成

Geminiはこの「大量データへの対応」という特徴を活かすことで、最大で200万トークン、動画や本に換算すると「2時間分の動画」や「22時間分の音声データ」、「約2000ページの書類や本」などを丸ごとインプットデータに追加しての、生成AI処理が可能となっています。

◆高い日本語性能◆

さらに、GeminiはLMSYS Chatbot Arena Leaderboardという、AIチャットボットの性能を比較し、「どのAIが一番賢くて、正確で、役に立つ応答をするかを評価する」ランキングにおいて、160万人以上の投票の結果、執筆時点で1位となっています。さらに、日本語のプロンプトを使った日本語性能のランキングでも1位となっており、日々更新されるAIチャットの中で、Google Geminiはトップの成績を残しています。

生成AIの性能ランキング

出所:LMSYS Chatbot Arena Leaderboard

Artifactsでより便利になったAnthropic Claude

「Anthropic Claude」も、OpenAIの「ChatGPT」の強力なライバルとして注目されている生成AIサービスです。開発元のAnthropic社は、OpenAIでChatGPTの基盤技術であるGPTモデルの開発に携わっていたメンバーによって設立されました。AmazonやGoogleといった名だたる企業から出資を受けており、Claudeも生成AIを活用する専門家の中では大きな注目を集めています。

2024年6月に発表されたClaudeの最新バージョン「Claude3.5 Sonnet」は、ChatGPT-4oの発表以前に、No.1性能とされていた前バージョンの「Claude3 Opus」と比較して、大幅な性能向上を実現しただけでなく、処理スピードが2~3倍に改善されるなど、大きな改善が見られました。

「Claude3.5 Sonnet」によるグラフの読み取り

さらに、Claude3.5 Sonnetは、画像認識技術において、GPT-4oなどと比較しても高い精度を示しています。特に図表やグラフから正確に数字やテキストを取得することや図表を活用した推論能力の高さが特徴的であり、小売業や物流、金融業界などビジネスの現場で広く活用されています。

「Artifacts(アーティファクト)」の登場

その中でも、最新バージョンでの1番の変化が、「Artifacts(アーティファクト)」の登場です。ユーザーがWebサイトなどのデザインや文章からスライドの作成をClaudeに依頼すると、Claudeとの会話と並んで横にArtifacts専用のウィンドウが表示されます。これにより、ユーザーはリアルタイムClaudeの作成物を見たり、編集したり、それをもとに作業を進めたりできる動的な作業空間が生まれました。Artifactsの登場により、今まで以上に生成AIをパートナーとして活用することができるようになりました。

生成AIの急速な進化は、私たちの社会や働き方を大きく変えようとしています。 従来までの「識別AI」は、何かを「識別」「分類」、または「予測」するなど特定のタスクをこなすだけでした。例えば、過去の販売データから、「未来の商品の需要を予測する」なども、この識別AIが得意とする領域です。

一方で、新しいAIとしての「生成AI」は「文章や画像、音楽などの様々なコンテンツやデータを生成」する能力を持っています。例えば、あるテキストに基づいて新たな画像や動画を生成したり、テキストの指示に従って新しい音楽を作ったりすることができます。このような、生成AIのもつ「創造性や柔軟性」が私たちの世界をより豊かにしているのです。

識別AIと生成AIの違い

その変化の大きさは、インターネットの登場にも匹敵すると言われています。このような、AIを使いこなし、AIと共存していくスキルは、これからの時代において必要不可欠なものとなるでしょう。

生成AIを使いこなすことで、私たちの仕事は効率化され、より創造的な活動に時間を割くことができるようになります。 また、今までAIとは無縁だった職業でも、生成AIの活用によって大きな変化が訪れることでしょう。生成AIは、私たちの可能性を広げ、未来を創造するためのカギとなります。 今こそ、日々進化する生成AIを学び、その無限の可能性を体験する時なのです。

生成AIが私たちにもたらすメリットとは

生成AIは、私たちの生活やビジネスに多くのメリットをもたらします。

◆生活におけるメリット◆

●パーソナルなアシスタント:

生成AIはまるで私たちの専属秘書のように、あなたの質問に答えたり、タスクをこなしたりしてくれます。例えば、旅行の計画を立てたり、レシピを提案したり、大量の複雑な情報を要約して分かりやすく説明することが可能です。

●創造性を刺激するディスカッションパートナー:

生成AIは、あなたの創造性を刺激し、新たなアイデアを生み出す手助けをしてくれます。例えば、絵を描いたり、音楽を作ったり、物語を書いたりする際に、インスピレーションを与えてくれるでしょう。いつでもどこでも豊富なビジネスや経営の知識を活かして、あなたの仕事の悩みを一緒に考えてくれるパートナーになることも可能です。

●学習をサポートする先生:

生成AIは、あなたの学習をサポートし、理解を深めるためのツールとしても活用できます。例えば、難しい概念を分かりやすく説明したり、問題の解き方を教えてくれたりします。音声認識機能などの音声チャット機能を利用すれば、英語学習をサポートする自分専用の先生になることも可能です。

◆ビジネスにおけるメリット◆

●業務効率化:

生成AIは、多くの業務を自動化し、効率化することができます。例えば、議事録の作成、メールの返信、データ分析や大量の資料の読み込みなどをAIに任せることで、私たちはより重要な業務に集中できます。

●顧客体験の向上:

生成AIは、顧客一人ひとりに合わせたパーソナルな対応を可能にします。例えば、チャットボットによる顧客サポートや、個々のニーズに合わせた商品の提案などが挙げられます。今まではコールセンターで担当者に確認をしていた電話も、今ではAIチャットに質問することですぐさま自分の知りたい答えを確認することができるようになりました。

このように、生成AIは、私たちの生活やビジネスをより豊かに、より便利にする可能性を秘めています。 しかし、その一方で、AIの倫理的な問題やプライバシーの保護、悪用への対策など、解決すべき課題も存在します。 私たちは、これらの課題にも向き合いながら、生成AIと共存していく必要があります。

生成AIは、私たち自身の手で未来を創造するためのツールです。 積極的に学び、活用することで、より良い未来を築くことができるでしょう。

(藤田 一樹 : NRIデジタル シニアデータサイエンティスト)

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