投資初心者「漠然とした不安」解消のリスク管理術

投資初心者には「リスク許容度」の把握が欠かせないという(写真:アオサン/PIXTA)
「投資をしたいけど、なかなか実行に移せない」という人が、最初の一歩を踏み出すためには、漠然とした「投資リスク」を明確に把握することが必要だという。3度の投資詐欺被害による「重度のお金恐怖症」を克服し、現在では運用により純資産1億円を突破したファイナンシャルプランナーの櫻井かすみ氏が、投資初心者のための「リスク管理術」を解説します。
※本稿は、櫻井氏の著書『投資への不安や抵抗が面白いほど消える本:投資詐欺被害、貯金ゼロ、無職、離婚ありの「お金超恐怖症」の貧乏ママだった私でも今は純資産1億に到達!』から、一部を抜粋・編集してお届けします。

リスクを恐れていては、投資は永久に始められない

投資に限った話ではありませんが、一般的にリスクとリターンは表裏一体。リスクを抑えようとするとリターンは低くなり、高いリターンを得ようとするとリスクも高まります。

「投資のリスク」と聞いて、どのようなことが頭に浮かぶでしょうか。リスクと聞くと、危ない、損をする、負けるなど、何か恐ろしいことが起きてしまうのではないかと考える人もいるかもしれません。

投資のリスクとは「値動きの幅の大きさのこと」です。振れ幅が大きいことを「リスクが大きい」、小さいことを「リスクが小さい」としています。

(出所:『投資への不安や抵抗が面白いほど消える本: 投資詐欺被害、貯金ゼロ、無職、離婚ありの「お金超恐怖症」の貧乏ママだった私でも今は純資産1億に到達!』より)

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例えば10万円投資をした場合、1年後に5万円に減る可能性も、20万円に増える可能性もあります。このように、投資をした後の結果が予測できない場合で、特に振れ幅が大きくなりそうなものを「ハイリスクな投資」と呼んでいます。

「投資を始めたいけれども、リスクが怖い」と思ってしまう方も多いかと思います。

リスクが低く大きなリターンが期待できる金融商品があればとても魅力的ですが、残念ながらそのようなものは存在しません。そして、リスクがゼロのものは、投資の世界では存在しません。リスクを恐れていては、投資は永久に始められないのです。

リスク許容度を決めるだけで、大損する心配は消える

そこで、最初に自分の「リスク許容度」を決めておくだけで、ハードルがだいぶ下がります。

では具体的に、どのようにしてリスク許容度を見積もったらいいのか?

いきなりいわれても、よくわからない方も多いと思います。次の3ステップで考えていけば、だいぶ見当がつきやすくなるでしょう。

ステップ1)生活に支障をきたすことがない額

ステップ2)損をしても仕方がないと思える額

ステップ3)精神的にストレスがかからない額

とはいえ、損をしても許容できる金額は、個人差があると思います。1万円の方もいれば、100万円の方もいるように。

ですので、リスク許容度がわからない方は、はじめは小さな金額から、100円からスタートできる投資信託で十分です。そして選ぶ金融商品は、リターンはそこまで大きく見込めないものの、できるだけリスクが小さいものからスタートすることを強くお勧めします。

「投資信託」を一言で言ってしまうと、投資家からお金を集めて、それを資産運用の専門家が株式(株式の略で「株」とも呼ぶ)や債券などに投資・運用する商品のこと。そして、運用成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配されます。

これは身をもって体験しています。私は投資をスタートした当時にここを理解できていなかったので、苦い思いをしたのです。時間もお金も体力も無駄にして、メンタルが大きく疲弊してしまいました。

もしかしたら「投資を始めたらこんなことが起きるのではないか……」。こんな心配がブレーキになっているのでしたら、心配は無用です。自分にとって無理のないリスク許容度を把握しておけば、こんなことは起きませんから。

投資で生活が大変になってしまった方というのを、周囲やニュースで聞いたのでしたら、リスク許容度を超える投資をしたからなのです。その1人が私だったのですが。

この記事を読んでくださっているあなたには、同じ経験をしてほしくないのでお話ししていきます。くれぐれも、「確実にすぐに儲かる!」「月利〇%」などとうたっている金融商品には注意しましょう。美味しい話にはそれなりのリスクがつきもので、リスク許容度を超えている場合が多いのです。当時の私はリスク許容度をちゃんと考えずに手を出してしまいました。

過大なリスクを抱えた結果、体調不良に陥ったことも

過去の私は、早くお金を増やしたい一心で、最初はデイトレード(1日のうちに株を売買して利益や損を確定させる取引)からスタートしました。記念すべき投資デビューです。

リスクが小さいか大きいかでいえば大きいのは知ってましたが、リスク許容度を把握していませんでした。1日で数万円と大きく勝った時もあるものの、反対に負ける時もありました。

仕事中、夜間、チャート(株価など金融商品のある一定期間の動き。2ページに出てきたようなグラフのこと)が気になりすぎて寝られずに体調をくずしたり、夢にまでチャートや取引が出てたりしました。「エントリーどうするか⁉」「あ〜やっぱりあの時、売却しておけばよかった……」とうなされて、真夜中に目を覚ますこともしばしば。

QOL(生活の質)は低下し寝不足とストレスで会社で倒れ、救急車で搬送されたことは2回。金銭感覚も狂い、たまに大きく勝つと衝動買いをしてしまい、負けてもその癖が抜けず金遣いが荒くなってしまったりもしました。

ちなみに当時の私は、次のようなことを考えていました。

「今よりもっとお金があれば、自由で幸せな生活が送れるのになぁ。もっとお金がほしい、もっと稼ぎたい、もっと増やしたい、もっと豊かになりたい、もっともっと……。

お金があれば毎朝満員電車で窮屈になって職場に行く必要もない、成績や人事異動にビクビクすることもないし、上司や同僚との複雑な人間関係にも終止符が打てる。

そして、毎月ギリギリの生活で銀行口座の残高を見てため息をつくこともない。子どもの習い事も制限なくさせてあげられるし、急な出費でも心を痛めることなくお支払いできる。節約で我慢しなくてもいい」

富裕層の知人から紹介された商品で「投資詐欺」に

そんな生活に憧れを持つものの、でも現実は、何気なく使っていたクレジットカードからの請求額を見て、思っていた以上の額に驚く。なぜか手元にお金が残らない。予想以上に残高が増えない。

そこでお金が増えるという結果を焦るあまり、無謀にもロクに勉強も経験も積まずに、当時の自分には負担の大きい額で、デイトレードなんてしてしまったんですよね……。

現実をわかってないし、欲丸出しで、都合のいいことばかり考えていたどうしようもない人間でした。

それと、お金は使わないほうが正しい、とにかく安いものを手に取る、レシートをかき集めて細かく家計簿をつける、そんな生活もしていました。投資用の資金をかき集めるためにもです。

いま挙げたこと、少なからず1つくらいは該当する人は、多いのではないでしょうか。一歩間違えると、昔の私のようになってしまうかも(いや、ならないかな……)。

疲弊のあまり、短期で利益が出せるデイトレードをやめて中期投資に変えました。そして次に出会ったのが、富裕層の知人から紹介された海外の未公開株。あまり知られていない美味しい金融商品だと勘違いして、手を出してしまい、後にこれが投資詐欺だと発覚……。

「とにかくお金を早く増やしたい!」「若いうちに儲かりたい」の一心で、心も身体もボロボロになってしまいました。

わからないものへの投資=リスク許容度がわからない

気がつくと、口座残高は投資前より激減。「こんなにもお金と時間と労力を費やしたのに、増えていないどころか大損失だなんて……、最初からやらなきゃよかった」と悔やみました。

やっぱり私はツイていないし、投資に向いてないのかもしれない。また振り出しに戻り、絶望の淵に立たされたのです。この時に得た教訓は、「よくわからないものには手を出すな」ということ。

とはいえ、先ほどから「他人からの情報をうのみにするな」とはお伝えしていますが、だったら何を信じればいいのか? という話にもなりますね。

結論は、考え抜いた末に納得のいった投資をすべきなのですが、いずれにしても、よくわからない時点で手を出してはいけません。

突き詰めて考えると、リスクの許容度に照らし合わせて考えるという方法で、ブレーキをかけることができます。「よくわからないものに投資する=リスク許容度がわからない」となるからです。

私はすべて失ったからこそ、これらのことに気づきました。

過去の私が失敗した理由は、頭が悪く数字のセンスがなかったからではありません。許容できるリスクの取り方をわかっていないだけでした。

(櫻井 かすみ : ファイナンシャルプランナー、トウシナビ代表)

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