スマホ通知の"ダイエット"する人としない人

1日中届くスマホの通知は煩わしいが、だからといって完全にオフにもできないという悩ましさも(写真:metamorworks / PIXTA)

家族や知人とのやりとりに使っているLINEや、仕事で使っているGmailのみならずSNS、ゲーム、クーポンなどさまざまアプリから1日中、通知が届き続け、「何かに集中すること」がなくなってしまったように感じていないでしょうか?

フロリダ州立大学の研究者らが2015年に発表した研究によると、スマートフォンのテキスト通知を受けるだけでメッセージに返信しなくても作業に対する注意力が大きく損なわれるとされています。この注意力の低下は、運転中に携帯電話で通話したりメールをしたりする場合と同程度だといいます。

本記事で解説する「スマホ通知のダイエット」とは、本当に必要な通知だけに絞り込むこと。最初は面倒に感じるかもしれませんが、それは自分の時間集中力を取り戻すための第一歩です。自分のペースで情報を取得できるようになれば、仕事もプライベートもより充実したものになるでしょう。

まずは「通知の数」を把握する

PR TIMESの調査プロジェクトMikkeによる「スマートフォン利用に関する生活者実態調査2021」では、iPhoneのスクリーンタイム機能を活用して通知の数を収集しました。1日の通知数は平均88回、中央値は58回だそうです。

この調査では通知が最も多い10人の通知数と、その人に最も多く通知を送っていたアプリを明らかにしています。ほとんどの人がツイッター(現在はX)かLINE、メールから通知を受け取っていました。

スマホ通知のダイエットのために、まずは自分自身のスマホにどのくらいの通知が来ているのか把握しておくといいでしょう。

最近のスマホには、デバイスとヘルシーに付き合うため「デジタルウェルビーイング」という機能があり、通知の数を確認できます。

iPhoneでは、「設定」→「スクリーンタイム」にある「アプリとWebサイトのアクティビティ」から確認できます。

各アプリから送られている通知の回数を確認できる(著者撮影)

Androidでは、「設定」→「Digital Wellbeingと保護者による使用制限」という項目を開くと、通知数が表示されます。

Androidでは「Digital Wellbeingと保護者による使用制限」で通知の数を表示できる(著者撮影)

通知数とともに、どのようなアプリが多く通知を発信しているかも確認できます。通知の多いアプリに絞って対策するのが手っ取り早い方法です。

アプリごとの通知設定を見直す

iPhoneでは「設定」アプリの「通知」を開くとアプリごとに通知設定を確認できます。特に通知の多いアプリに絞って、本当に必要な通知だけを受け取るよう設定を変更しましょう。

Androidでは「設定」アプリを開いて、検索バーに「アプリの通知」と入力しましょう。通知設定画面を開けます。

通知の表示場所には「通知エリア」「バナー」「アプリのアイコンバッジ」の3種類があります。本当に重要な通知以外は、「通知エリア」のみか「サイレント通知」に設定するのがおすすめです。バナー表示は画面の邪魔になり集中力が途切れやすいので、必要最小限にしましょう。

アプリによっては、通知を完全にオフにするのもアリです。例えば、読書アプリなど即時性が求められないものは、通知をオフにしてもいいでしょう。頻繁に使うアプリも、わざわざ通知を得る必要がない場合があります。筆者は自ら定期的に開く習慣のあるXなどのSNSについては、あえて通知をオフにしています。

SNSの通知は細かく調整する

Androidでは「設定」のアプリ通知の項目から移動せずに細かい通知の設定が行えます。アプリごとの通知設定画面に、詳細な機能別の通知をオン・オフできるボタンが用意されています。例えばインスタグラムの通知設定を開くと「いいね!」が付いたときはサイレント通知のみ、「コメント」が付いたときはポップアップ表示する、というように細かく設定できます(Galaxyなど独自UIを採用するメーカー製端末では、一部表現が異なっている場合があります)。

AndroidはOSの設定アプリから、アプリごとの細かい通知機能を開ける(著者撮影)

iPhoneではシステム側の通知設置と、アプリ側の通知設定が別になっており、それぞれ設定する必要があります。例えばXアプリでは、メインメニューの「設定とプライバシー」→「通知」→「設定」→「プッシュ通知」とたどると、機能ごとの通知設定をより細かく選択できます(アプリによってはシステム設定に、アプリ側の設定へのショートカットが表示される場合もあります)。

iPhoneのXアプリ場合、メニューをたどって通知を設定する必要がある(著者撮影)

メッセージアプリでは、話している相手ごとに通知のオン・オフを設定するといいでしょう。LINEの場合は、トークルームごとに通知を設定できます。トークルーム右上のメニューから、「通知オフ」を選ぶと、そのトークルームの通知をオフにできます。

Androidの場合は「会話の通知」という通知の設定があります。電話アプリやSlack、Facebook メッセンジャーなどの会話相手ごとに通知をオフにできます。

LINEはトークルームごとに「通知オフ」の設定を行う(著者撮影)

メールはGmailを活用、重要な通知のみをオンに

メール通知の減量に効果的なのは「Gmail」アプリの活用です。GmailにはAIによるフィルター機能があり、重要なメールが来たときのみ通知を届けることができます。

Gmailは「高優先度のみ」に設定すると、重要なメールのみ通知されるようになる(著者撮影)

Gmailの「重要な通知」のみを受け取るには、まずGmailアプリを開き、左上のメニューアイコン(三本線のアイコン)をタップします。次に、サイドメニューから「設定」を選択し、「メール通知」の設定を開きます。そして、「高優先度のみ」をオンにすれば完了です。これで、Gmailが判断した重要なメールの通知のみを受け取ることができるようになります。

Gmailの重要な通知は、普段の行動によって判断されます。例えば、一斉配信ではなく自分宛の宛名が付けられたメールや、自分が返信したメールへの返信は重要と判断されやすくなります。また、普段よく読むメールに付けられたキーワードも重要と見なされるほか、アーカイブやメールの削除といった操作でも重要度が変わります。

集中モードを使いこなす

通知をすべて止めるのは不安でしょう。しかし、このときだけは集中して目の前のことに取り組みたいというときもあるはずです。そこで、iPhoneでは「集中モード」、Androidでは「フォーカスモード」という機能が役立ちます。どちらもユーザーが特定の状況で通知を制御し、集中力を高めるための機能です。

iPhoneの「集中モード」は、通知をカスタマイズして特定の活動に集中できる機能です。仕事、個人、睡眠、運転などのシーンで設定できます。連絡先やアプリを選んで通知を許可し、特定の時間や場所に応じて自動的に集中モードがオンになります。これで、仕事中には仕事関係の通知のみを受け取ることができ、運転中にはすべての通知を消音できます。

iPhoneの「集中モード」。シーンごとに指定した通知のみが届くように設定できるほか、ホーム画面に表示するアイコンも厳選できる(著者撮影)

Androidの「フォーカスモード」も同様の機能です。この機能を使えば、スマホの通知、特定の通知だけを受けることができます。会議や寝ているときに、すべての通知を消して、大切な連絡だけを受けることができます。

Androidの「フォーカスモード」は、特定のアプリの通知をオフにするというシンプルな機能(著者撮影)

スマホに使われるのではなく、使いこなす

スマートフォンの通知は、日々の食事のように欠かせない存在となっています。しかし、やみくもにすべての通知を受け取るのは得策とは言えません。自分にとって本当に必要な通知は何か、アプリごとに吟味し、設定を見直すことが大切です。

通知のダイエットは、最初は面倒に感じるかもしれません。しかし、それは自分の時間と集中力を取り戻すためにとても重要なこと。通知に振り回されず、自分のペースで情報を取得できるようになれば、仕事もプライベートもより充実したものになるでしょう。

スマホに使われるのではなく、スマホを使いこなす。そのための第一歩が、通知のダイエットなのです。

(石井 徹 : モバイル・ITライター)

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