腐らせ食材ナンバー1"もやし"冷凍保存の裏ワザ
安価なもやしは家計の救世主!
もやしは、今も昔も人気の食材です。
人気の理由は、まずは使い勝手のいい野菜であること。もやしは皮むきやカットがいらないことに加えて、意外と知らない人もいるかもしれませんが、出荷前にきれいな水で洗浄されているので、基本的に水洗いは不要。袋からそのまま鍋やフライパンに入れて手軽に調理できます。
それから栄養面。
もやしにはカルシウムや葉酸、ビタミンC、アスパラギン酸など健康に役立つ栄養素が含まれています。かつ、低カロリーでヘルシーな食品なので、ダイエット中の方も好んで利用されているかもしれませんね。
そして、もちろん安価ということも挙げられるでしょう。
食料品の値上がりが続く今でも、もやしはとても安く買えます。スーパーで目玉商品となっていることもあります。消費者にとってはうれしいですよね(価格が安すぎることは、別の問題を引き起こしているのですが、これについてはあとで述べます)。
「うっかり腐らせる」野菜1位!
習慣的に料理をする2000人を対象にしたアンケートで、「うっかり腐らせてしまった経験のある食材」の1位は「もやし(21.7%)」でした(旭化成ホームプロダクツ調べ※外部配信先では図を閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。
安いのでとりあえず買っておいたものの、もやしは足が早いので、使いそびれてしまうケースが多いのかもしれません。
そんな食材こそ、冷凍が力を発揮します!
では、具体的なもやしの冷凍方法をご紹介します。
一番重要なのは鮮度。買ったらその日のうちにすぐ冷凍してください。逆にいうと、鮮度が落ちてしまったもやしは冷凍せずに、生のまますぐ調理して食べてしまってください。
冷凍するときは、生のまま冷凍用保存袋に移し替えて、冷凍庫に入れます。先に述べたように、もやしは洗わなくてよいので、そのまま保存袋に入れて冷凍しましょう。洗ってしまうと水分がついてしまい、冷凍時に氷の結晶が大きくなり傷みやすくなります。
また、冷凍しても早めに使ったほうがよく、目安は3週間以内です。
おいしく食べる解凍のポイント
次に大事なのは解凍の仕方です。
凍らせるともやしの組織が壊れて、解凍時に水分とともに栄養や風味も流れ出てしまいます。ですので、自然解凍せず、凍ったまま加熱調理することがポイントです。出てきたうま味たっぷりのエキスも一緒に摂れる、スープやあんかけ炒めなどがおすすめです。
一方、生のもやしに比べて食感は柔らかく、水分もかなり出るので、通常の炒め物にはあまり向きません。冷凍することで食感は変わりますが、調味料が染み込みやすく、味しみがよくなるメリットもありますので、そのあたりをうまく活用しましょう。
少し手間ですが、茹でたもやしを下味冷凍することもできます。
事前に火を通しているため、解凍後の調理時間も短くてすみ、生で冷凍するより食感や色を保ちやすく、カサも減ります。加熱後に調味料で味付けをすれば保存性も高まり、解凍後にすぐ食べられるので便利です。
(関連記事:時短以外にもメリット、おいしさ保つ「下味冷凍」)
冷凍もやしの絶品レシピ
冷凍もやしを活用した、筆者おすすめのレシピをご紹介します。
ヘルシーなのに食欲が湧くおかずも、冷凍もやしがあれば時短で完成! ナムルは茹でたもやしを使う下味冷凍なので、解凍のみですぐに食べられます。
冷凍もやしのウマウマあんかけ炒め
【材料1人分】
冷凍もやし 1袋(200グラム)
ごま油 大さじ1
A〈鶏ガラスープの素 小さじ1 オイスターソース 小さじ2〉
B〈片栗粉 小さじ2 水 小さじ2〉
青ネギ…適量
【作り方】
①ごま油をひいたフライパンに冷凍もやし、〈A〉を入れ、中火で2分加熱する。
②もやしから水分が出てきたら、一度火を止めて、少し冷ましてから〈B〉(水溶き片栗粉)を加え、手早く全体を混ぜる。
③再び中火にかけ、混ぜながら1分ほど加熱してとろみをつける。
④器に盛り、お好みで青ネギをかける。
冷凍もやしを炒めたときに出るうま味豊富なエキスを、あんかけでまるごといただきましょう。ほかの野菜や豚肉などをを加えるなど、アレンジもできます。
もやしのナムル(下味冷凍)
【材料2人分】
もやし 1袋(200グラム)
すし酢 大さじ2
しょうゆ 大さじ1
ごま油 大さじ1
【作り方】
①耐熱ボウルにもやしを入れてラップをかけ、電子レンジ(600W)で3分加熱する。
②冷凍用保存袋に粗熱を取ったもやしを汁ごと入れ、すし酢、しょうゆ、ごま油を加える。
③空気を抜き、なるべく薄く平らに広げて冷凍する。
食べるときは、保存袋のままボウルに入れ、流水解凍します(途中で手でほぐせば10分程度でとけます)。冷凍&解凍中に調味液を吸うので、調味料は少なめでOK! 加熱してから冷凍するとカサが減るので、保管でスペースをとりません。
30年前より「安い」もやし
最後に、もやし生産者の話をさせてください。
総務省の家計調査によると、もやし1袋(200グラム)の全国平均価格は、約30年前の1993年は40.48円、2023年は33.60円。
一方で、原料種子となる中国産緑豆の価格は3倍以上に。人件費や光熱費も含め、生産コストはどんどん上がる反面、平均価格はむしろ下落傾向にあり、生産者の利益が出ない状況に陥っています。
では、どうしてここまで、もやしは安く売られているのでしょうか。
もやしの生産を手がける(株)旭物産の会長で、工業組合もやし生産者協会理事長を務める林正二さんに伺うと、1つは「生産者と小売店との隔たりに理由がある」といいます。
というのも、もやしを安く売ることは、スーパーなどの小売店が自店の安さをアピールする看板になり、もやしが安い=お店の野菜全体が安いという印象を与えやすいのです。
「小売店もわれわれの窮状は理解しているものの、競合店の多い地域では利益を求めず、安く売る。すると他店も対抗するという構図になってしまっている。適正価格で売買されないことで、生産者は卸価格を上げるのが難しく、打撃を受けています」(林さん)
さらに、もやしが工場栽培で安定して大量生産できることも影響していると、林さんは話します。
小売店にとっては、年中安定した価格・品質で取引できるもやしは、仕入れ見込みを立てやすいがゆえ、安売りの常態化につながってしまうというのです。安定的な供給ができる野菜だからこそ、「価格の優等生」だからこそ抱えるジレンマといえるのかもしれません。
もやしが食卓から消える!?
そして、非常に大きな問題が、もやし生産者の激減です。
1995年は550以上だった生産者数が、2022年では110と5分の1に(工業組合もやし生産者協会調べ)。いくら企業努力を重ねても、生産コストに価格が見合わず赤字経営となり、廃業する生産者が相次いでいるのです。
もやしはもっと値上げしてもまだ十分に安く、家計の頼りになります。もやしは冷凍術をうまく活用することで、その魅力をさらに広げられると考えます。
もやしが日本からなくなってしまわないように、私たちがもやしをこれからもおいしくいただくために、もやし生産者を取り巻く窮状にも、耳を傾けてみてほしいのです。
(構成/田中絢子)
(西川 剛史 : 冷凍生活アドバイザー)
06/23 13:00
東洋経済オンライン