似た者同士の結婚ほど「うまくいく」は本当なのか

共通点の多い相手ほど結婚生活が楽に送れるという(写真:Pangaea/PIXTA)
結婚相手に選ぶなら「自分と似た人」がいいのか、それとも「自分にはないものを持っている人」がいいのか? 気になるその答えを、社会生活における人の心と行動のメカニズムを解き明かす「ビジネス心理学」の第一人者・内藤誼人氏が、最新研究に基づいて解説します。
※本稿は『すぐに実践したくなる すごく使える社会心理学テクニック』(内藤誼人 著)を一部抜粋・再編集しています。

テクノロジーに弱い人は結婚できなくなる時代に

テクノロジーの進展によって社会構造は大きく変わります。そして、社会構造が変化すると、それに伴って自然と人との付き合い方も大きく変わります。

私が若い頃には、スマートフォンなどありませんでした。パソコンはありましたし、インターネットもありましたが、使いこなせる人はそんなにいなかったのではないかと思います。私もせいぜいメールをするくらいでした。

そんな時代でしたから、もし恋人をつくろうとすれば、どうしても友人の紹介に頼るしかありませんでした。マッチングアプリなど存在しませんでしたから、友人にお願いするしかなかったのです。

けれども今は違います。人と人とがオンラインでつながることのほうがむしろ主流になってきているのです。

スタンフォード大学のマイケル・ローゼンフェルドは、5421名の異性愛者のカップルがどのようにして出会ったのかを調べた、1995年のデータと2017年のデータを比較してみました。その結果は以下のようになっています。

(出所:『すぐに実践したくなる すごく使える社会心理学テクニック』より)

※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

結果はもっとたくさん続くのですが、どれもこれも数パーセントでしたので省略しました。

1995年にオンラインで出会うのは、わずか2%。1995年というと、当時は私も大学生だったので、よくわかります。オンラインで知り合う人など、めったにいない時代でした。

それからわずか20年ほどで、オンラインで知り合う割合は39%にまで増えています。驚くべき変化だと言わざるを得ません。これはアメリカのデータですが、日本も実情はそんなに変わらないのではないかと思います。

「誰かいい人を紹介してやる」もハラスメントに

これからの社会は、テクノロジーを理解し、積極的に扱えるようにならないと、ひょっとすると「出会いすらできない」という状況が生まれてくるのかもしれません。

友人や家族、あるいは会社の上司に紹介してもらうという機会は、どんどん減り続けるでしょうから。

昔は恋人がいないと、世話焼きの友人や上司が「だれかいい人を紹介してやるよ」と申し出てくれたものですが、そうした行為はハラスメントとなりかねないので避けられ、期待はできません。

オンラインの技術を使いこなし、自分で積極的に動かないと結婚できない時代がくる、いや、もうすでにきているのかもしれません。

結婚をするにあたっては、相手を選ぶことがとても大切です。結婚してからできるだけ苦労をしないほうがいいに決まっています。

結婚相手の選定にあたって、心理学的なアドバイスをするとすれば、「できるだけ自分に似ている人」を選ぶといいですよ、ということがいえます。

似た者同士で結婚するのが一番ラクなのです。

これを心理学では「類似性の原理」とか「類似性の法則」と呼んでいます。相手との共通点(類似点)が多くなればなるほど、一緒に生活していても、そんなにストレスを感じないのです。

価値観や文化が大きく異なる「国際結婚」の難しさ

「外国人と結婚したい」という人もいるでしょうが、国際結婚はあまりおススメできません。宗教も違えば、モノの考え方、価値観、文化も大きく違いますので、類似性の原理からすれば真逆の相手と結婚することになります。

オーストラリア国立大学のマティアス・シニングは、8000組の夫婦に、結婚生活の満足度を聞いたところ、最も高かったのは同国人同士での結婚で、最も低かったのは国際結婚の夫婦でした。

日本人にとっては、やはり結婚相手も日本人のほうがうまくいくものと思われます。

国際結婚の場合、文化的な風習や価値観の違いから、ちょっとしたことが気になるようになります。恋愛中にはそういうところが気にならなくとも、結婚するとひどく気になるようになります。そのうち我慢の限界がきて破局、という結果になりやすいのです。

絶対に破局するとはいいませんが、その危険は相当に高いことを覚悟しましょう。

やはり類似性の原理に従って、年齢も同じくらいの人がいいでしょうし、出身地も同じ人のほうがいいですし、学歴も自分と同じくらいの人のほうがいいのではないかと思われます。

デンマークにあるオーフス大学のグスタフ・ブルーズは、ハリウッド俳優400人の結婚について調べてみたのですが、やはり同等の学歴の相手と結婚していることがわかりました。

有名人でも、一般人と同じで、自分との共通点が多い人のほうがラクだからでしょう。

結婚をするにあたっては、「理想のパートナー」についていろいろ夢見ると思いますが、自分となんの共通点もない人と結婚するのはやめたほうがいいかもしれません。むしろ、自分と同じような人を選んだほうが、結婚生活も長続きする可能性が高くなります。

「高学歴女性」ほど離婚しないというデータも

カナダにあるトロント大学のフィリップ・オレオポウラスによると、学歴と離婚率には密接な関係があり、学歴が高くなるほど離婚しなくなる傾向があるそうです。

オレオポウラスが調べたところ、高校中退以下の学歴の女性の離婚率は16%。高卒になると10%。そして大学院卒の女性になると、離婚率はわずか3%にまで落ちるそうです。

高学歴の女性というと、収入の多い仕事にもつけるので夫に頼らなくとも生活できそうですし、それだけ離婚しやすいようにも思うのですが、それは違うようです。

どうして高学歴女性は、離婚しないのでしょうか。その理由は、よくわからないのですが、オレオポウラスは次のような可能性を指摘しています。

・ 高学歴女性は、結婚市場で人気がある。そのため質の高い男性を選ぶことができ、離婚しにくくなるのでは?

・ 高学歴の女性ほど、雇用が安定している。そのため、結婚生活にストレスを感じることも少なくなるのでは?

・高学歴女性ほど、晩婚の傾向がある。それだけ慎重に男性を選んでいるのでは?

本当のところはどうして高学歴女性が離婚しにくいのかはよくわかっておらず、あくまでも推測にすぎないのですが、オレオポウラスの指摘はどれも当たっているような気がします。

結婚するときには、できるだけ慎重になりましょう。これは、女性だけでなく、男性もそうです。すぐに結婚するよりは、できるだけ長くお付き合いし、相手のことをよく知ってから結婚しても遅くはありません。

「慌てる乞食は貰いが少ない」ということわざもありますが、慌てて結婚すると「ハズレ」を引いてしまう可能性が高くなります。

結婚も離婚も、一度頭を冷やしてから

カリフォルニア工科大学のコリン・キャメラーによりますと、アメリカのいくつかの州では、結婚しようとしているカップルがいても、一定期間が経過するまでは結婚許可証を出さない州もあるそうです。

すぐに実践したくなる すごく使える社会心理学テクニック

「少し頭を冷やして、それから結婚したほうがいいのでは?」というためでしょうか。

慌てて結婚するのもやめたほうがいいのですが、離婚を決めるときにも慎重になりましょう。衝動的に、「もう別れる!」と言い出してはいけません。少し頭を冷やしてから離婚してもまったく遅くありませんから。

アメリカでは、カリフォルニア州やコネチカット州のように離婚が正式に認められるまでに一定の期間が設けられている州もあります。人は心変わりするのが当たり前なので、そういう期間があれば離婚を抑制できるというのです。

「やっぱりよく考えたら離婚しないほうがいい」と冷静に判断してもらうには、ある程度の期間があったほうがいいのでしょう。

結婚も離婚も、早まって決めるよりは時間をかけてゆっくり考えるのがポイントです。

(内藤 誼人 : 心理学者、立正大学客員教授、アンギルド代表取締役社長)

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