中学でも成績伸びる子「小学生時代3つの共通点」

知的好奇心

中学でも伸びていく子は、小学校時代何をしていたのでしょうか(写真:yosan/PIXTA)
【質問】
小学校3年と5年生の子どもがいて、2人とも中学受験を目指しています。中学受験は合格してしまえば、終わった感が出るようですが、聞くところによると、中学に入ってからが大変とも聞きます。中学生以降も特に勉強に遅れることもなく、できれば順調に進んでもらいたいと思っています。
そこで、お聞きしたいのですが、中学でも伸びていく子は小学生のとき、何をやっているのでしょうか。
滝さん(仮名)

「中学でも伸びていく子」の小学時代は?

「中学でも伸びていく子が、小学校時代何をしていたのか? どういう状態だったのか?」

この問いに対して、「早期教育」「ピアノ」「英語」など様々な回答を想像されるかもしれません。もちろん、そのようなことをやっていた子もいることでしょう。しかし、個別の習い事や学習内容については千差万別であり、その子の特徴や性格に合わせていくことが望ましいと考えています。滝さんには、そのような具体的なことよりも、もう少し根本的視点に立ってお答えしたいと思います。

国公立、私立中学で若干異なる面はありますが、これまで筆者が出会ってきた子どもたちを俯瞰してみると、中学に進学後にぐんぐん伸びる子たちに共通する、「小学生時代3つの共通点」があると感じています。もちろん、その傾向がないと伸びていかないというものではありませんが、全体的な傾向として参考にしてください。

(1)勉強内容を面白い遊びのようなものととらえている

子どもたちの中には、勉強のような一見つまらなそうなものを、面白いことに変換してしまう子がいます。具体的に統計を取っているわけではありませんが、筆者がこれまで直接指導してきた4500人の子どもたちから推察すると5%程度の子が元々そのような状態でした。

例えば、つまらない知識はダジャレにして覚えてしまうことや、文章題に出てくる内容を自分の体験とつなげて理解してしまいます。算数の文章題で太郎さん花子さんが出てきたら、これを自分の好きなアニメであるコナンと蘭に置き換えて理解するなどです。

また、新しい四字熟語を学ぶと、それをすぐに使って“遊び”ます。例えば、「四面楚歌」であれば、「ぼくは家で四面楚歌状態なんだよね〜」など普段の会話に織り交ぜて使っていきます。まるで勉強した知識を、遊びや日常会話のツールとして活用しているかのようです。

伸びる子は「なるほど!」と面白がる

間違った問題の答え合わせをしたときにも、伸びる子は、解説を見たり聞いたりして「なるほど!」と、面白がる傾向にあります。ゲームの攻略法を知ったときのような感覚です。

もちろんすべての勉強をこのようにやっているわけではありませんが、伸びる子たちは、勉強を「ゲーム、クイズ、なぞなぞ」の類として考えている傾向にあります。

一方、多くの子どもたちはそうではありません。つまらない勉強はやりたくない、知識を覚えるなどもってのほか、算数の計算問題は苦痛以外の何ものでもないと感じています。こちらのタイプが一般的なのですが、できる子たちを基準と考えると、このような子たちは怠け者、やる気のない子と断定されてしまいます。

しかし、そうではなく、一見つまらないものを面白くできるのは、レアケースであり、通常はできません。ですから、指導者がいるのです。指導者は、その一見つまらなそうな内容を加工し、わかりやすい形に変換して教えていく必要があります。

例えば、理科が楽しくて仕方がない先生に教えてもらうと子どもたちは理科が楽しくなっていきます。つまり、「理科は面白いもの」とインプットされたわけです。親御さんも、「勉強をしなければならないもの」ととらえるよりも、内容を面白がる、楽しむスタンスを取ることで子どもにそれが伝わり、「ひょっとして勉強は面白い?」と感じるようになっていきます。

(2)知的好奇心が強い

中学、高校になっても学力が伸びる子は、小学生の段階から、わからない問題や間違いに対して疑問をもち、突き詰めて考える傾向にあります。そして、理解に至ったときに、「そうだったのか!」と気づき、さらに“面白い”という思いとの相乗効果が生まれて、前向きに勉強に取り組みたくなるようです。

勉強ができる子の共通点の一つに、間違えた問題の解説を聞いて、「なるほど!」と言葉を発することがあります。この言葉が出てくるということは、そもそも初めに知りたいという好奇心があったということです。

知的好奇心が大切ということを聞いたことがあると思いますが、では知的好奇心はどのようにして培っていけばいいのでしょうか。

勉強の本当の面白さは「なぜ?」の部分

もともと子どもは、爬虫類が好き、宇宙が好き、料理が好きなど、好きな分野があれば、それに関する知識はどんどん吸収していきます。好奇心があれば勝手に行動し、頭脳も動きます。しかし、そうではない対象になると途端に興味を失い、まったく関心を寄せることはありません。

そのような状態でも、知的好奇心を引き出すことができます。そのためにはある問いかけをしていきます。それが「なぜ?」というマジックワードです。

知識のインプットだけでは面白くありません。勉強の本当の面白さは、その背景にある「なぜ?」の部分なのです。テストでは「なぜ?」の部分は問われないので、そのような問いは必要ないと思うかもしれません。しかし、テストに必要かどうかという問題ではなく、好奇心そのものを引き出すことが大切で、それさえ出してしまえば、後は自動的に学びの方向へと向かうのです。

つい、必要なことだけをやらせようと考えがちですが、学ぶための知的好奇心があって初めて勉強という行為に向かいます。

(3)抽象度が高い

3つ目は「抽象度が高い」ということです。抽象度が高いとは、物事を高い位置から俯瞰して考えることができる状態のことです。

では、この抽象度をもう少しわかりやすく説明していきます。

例えば、山田さんがチワワを飼っていました。石川さんもチワワを飼っていました。山田さんのチワワも石川さんのチワワも具体的ですね。具体的な世界というのは比較や争いが起こります。山田さんはこういいます。「石川さんのチワワは耳大きすぎない? うちのチワワの方が断然可愛いわ〜」と。しかし、山田さんのチワワも石川さんのチワワも、「チワワ」というカテゴリーに入っています。つまり“同じ”ですね。

すると今度は、内田さんのトイプードルが登場します。すると今度はまた比較、争いが起こります。内田さんは「チワワなんてうるさい犬よく飼うわね〜。うちのトイプは全然吠えないし、お人形さんみたいで可愛いわ〜」と。しかし、チワワもトイプードルも一段上に上がって見れば「小型犬」というカテゴリーです。“同じ”部類になります。

するとさらに、今度は木村さんのゴールデンレトリバーが登場します。すると、また比較争いが起こります。トイプの内田さんは「よくあんな大きな犬飼うわね〜。餌代かかるし、信じられない」と。しかし、トイプもゴールデンも一段上に上がって見れば、「犬」というカテゴリーになります。“同じ”部類です。

このように、「チワワ→小型犬→犬→哺乳類→脊椎動物→動物→生物」と上がっていくことを「抽象度が上がる」といいます。つまり共通部分を見抜いていくことで、抽象度は上がっていきます。

これを、算数に当てはめてみましょう。問題集1ページに10問の問題があったとします。抽象度の低い子は、すべて10問とも別々の問題と思っています。「これは、分数が出ている。これは小数があって、この問題は分数と小数があって」と。しかし、抽象度の高い子は、これらすべて10問の問題は“同じ”であることが見えています。ただ、違いも認識できています。この問題は分数、この問題は小数という表面的に形が違っているけど、「やっていることは同じ」であると“見えて”いるのです。

国語に当てはめてみるとこうなります。例えば国語の説明文。1つの段落で言いたいことは通常1つしかありません。抽象度の低い子は、書かれている文章の用語が違っているし、構造が違っているから、すべて違っていることが書いてあると錯覚しています。だから字ヅラを追い、設問では答え探しが始まります。しかし、抽象度の高い子は、表面的な形は違っていても、「言っていることは同じ」ということが“見えて”います。

抽象度が高い子は、上から物事が見える

このような見え方、感じ方ができているかどうかは、はたから見てもわかりません。ただ問題を解いている、文章を読んでいるとしか見えないからです。しかし、実態は、まったく異なります。抽象度が高い子は、上から物事が見えるので、ポイントを即つかんでしまいます。

では、抽象度を上げるにはどうすればいいでしょうか。ここでもある問いかけをしていきます。そのマジックワードは「要するにどういうこと?」という問いです。「要するに?」と聞かれると、人はまとめ出します。まとめるということは、たくさんある情報を簡潔にまとめて「抽象化」するということです。

国語の文章でも、「この段落は要するに何の話?」と問われれば、自然と単純化した言葉でまとめるはずです。これが抽象度を上げるプロセスです。子どもが小さいうちは「要するに?」の意味がわからないこともあるので、そのときは「何が似ていると思う?」と共通部分を見抜かせる問いを投げかけます。共通部分がわかると抽象度が上がっていきます。

以上、3つの共通点についてお話ししてきました。ここに書いた項目が小学生のときにまだできなくても中学に入ってから急激に伸びる子もたくさんいますので、できなくても心配しなくて大丈夫です。問いかけを日常の中で時折入れていくことで、子どもの頭脳は動き出しますので、参考にしてみてください。

(石田 勝紀 : 教育デザインラボ代表理事、教育評論家)

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