2輪世界最大排気量「ロケット3ストーム」の凄み

東京モーターサイクルショーに展示されていたロット3ストームR

東京モーターサイクルショーに展示されていたロケット3ストームR(筆者撮影)

近年、バイクにもさまざまな排気量のモデルがあるが、なんと世界最大の2.5L・3気筒という4輪車並みの巨大エンジンを搭載するのが、英国トライアンフモーターサイクルズ(以下、トライアンフ)の「ロケット3」シリーズ。その2024年の新型モデル「ロケット3ストームR(Rocket 3 Storm R)」と「ロケット3ストームGT(Rocket 3 Storm GT)」が国内販売を開始した。

2004年の初代モデル以来、20年の歴史を誇るクルーザーモデルがロケット3。最新の2024年型では、最高出力を従来モデル比15PSアップの182PSへ向上。トルクも4N・mアップの225N・mとし、さらに高いパフォーマンスを発揮する改良が施されている。

ここでは、新型ロケット3ストーム・シリーズの概要を紹介するとともに、「第51回 東京モーターサイクルショー(2024年3月22~24日・東京ビッグサイト)」に展示された現車を実際に見た印象などもお伝えしよう。

トライアンフのロケット3とは

最新型のロケット3シリーズ

最新型のロケット3シリーズ(写真:トライアンフモーターサイクルズジャパン)

120年以上の歴史を誇るイギリス老舗メーカーのトライアンフが生産するのが、ロケット3だ。初代モデルの「ロケットⅢ」は、2004年に登場。当時、大きな人気を博した「マッスル系バイク」と呼ばれるジャンルに属するモデルだ。

マッスル系バイクとは、長距離ツーリングなどに適したクルーザーというジャンルのなかでも、とくに直線での速さを競うドラッグレーサー風のスタイルを採用したモデルを意味する。大排気量エンジンによる圧倒的な加速力と、ボリューム感満点のフォルムなどに特徴がある。

【写真】量産として世界最大排気量のバイク、トライアンフ「ロケット3」シリーズの最新モデルが発売。そのディテールを徹底的にチェック(30枚以上)

一時期、販売を終了していたロケットⅢだが、2019年に車名をロケット3と変更して復活。エンジンの排気量を2300ccから2458ccへと拡大することで、量産2輪車として世界最大排気量の記録を更新する。ラインナップには、スポーティな「ロケット3R」と、ツーリング性能を高めた「ロケット3GT」を用意。かなり個性的なモデルながら、全世界で1万8000台以上の販売を達成し、根強いファンを持つモデルに成長している。

国産バイクで最大排気量を持つモデルがホンダの「ゴールドウイング ツアラー」になる

国産バイクで最大排気量を持つモデルがホンダの「ゴールドウイング ツアー」になる(写真:本田技研工業)

ちなみに、国産2輪車の最大排気量バイクといえば、ホンダの大型ツアラー「ゴールドウイング ツアー」が挙げられる。だが、搭載するエンジンは1833cc・水冷4ストローク水平対向6気筒。ロケット3の排気量は、軽自動車1台ぶん(660cc)に近い625ccも大きい。そのぶん、最高出力は、ゴールドウイング ツアーの126PSに対し、従来モデルのロケット3でも167PSを発揮。最大トルクも170N・mのゴールドウイング ツアーに対し、221N・mと51N・mも大きい。国産車としては、かなり圧巻のフォルムと高い動力性能を持つゴールドウイング ツアーだが、より余裕ある出力特性を持つという点では、ロケット3に軍配が上がる。

ロケット3ストームのラインナップと価格

最新モデルのロケット3ストームR

最新モデルのロケット3ストームR(写真:トライアンフモーターサイクルズジャパン)

最新モデルのロケット3ストームGT

最新モデルのロケット3ストームGT(写真:トライアンフモーターサイクルズジャパン)

車名に嵐を意味するストーム(Storm)を追加したロケット3の最新モデル。ラインナップには、従来モデルと同様に、スパルタンでスポーツ志向の強いロードスター風のロケット3ストームRと、ゆったりとしたポジションなどでツーリングでの快適性も追求したロケット3ストームGTを用意する。

ロケット3ストームRのハンドルまわり

ロケット3ストームRのハンドルまわり(筆者撮影)

これら2タイプの大きな違いは、まずハンドル。GTは、Rに対してグリップ位置を125mm高くすることで、よりアップライトなライディングポジションを実現する。また、シートもそれぞれ専用で、Rでは、走行中の体重移動なども考慮した形状とし、シート高は773mmと、大型モデルとしては比較的低い設定だ。対するGTのシートは、立体的なツーリング向けタイプで、ゆったりと座れるパッド入りリアシートと、位置調整の可能なリアバックレストを装備。シート高は750mmで、さらにライダーの快適性を向上させている。

新型モデルの外観は、個性的な顔付きを生むツインLEDヘッドライトなど、基本的な装備は従来モデルを継承しつつ、各部をブラック仕様に変更している。インテークカバーやマフラーエンド部などにはブラックパウダーコーティング、フットレストやブレーキペダル、ギアペダルなどはブラックアルマイト仕上げとすることで、さらなる高級感を演出する。

ロケット3ストームRのタンク

ロケット3ストームRのタンク(筆者撮影)

また、容量18Lの大型タンクには「Storm」のロゴを追加。車体色は、Rに「カーニバルレッド×サファイアブラック」「サファイアブラック×グラナイト」「サテンパシフィックブルー×マットサファイアブラック」の3色を設定。GTのカラー設定も同様だが、タンクのカラー分割を逆にすることで、Rとの差別化も図っている。

車体とパフォーマンス

ロケット3ストームRのリアビュー

ロケット3ストームRのリアビュー(筆者撮影)

車体サイズは、Rが全長2365mm×全幅920mm×全高1125mm、ホイールベース1677mm。GTは全高1183mmで、そのほかのサイズはRと同じだ。いずれも、バイクとしては比較的大柄な車体。しかも燃料タンク下に鎮座する巨大な2.5Lエンジンが、否が応にも見る者へこのバイクの存在をアピールする。

ロケット3ストームRのシートまわり

ロケット3ストームRのシートまわり(筆者撮影)

ちなみに今回のショーでは、ロケット3ストームRが展示されていたが、実際に見る世界最大排気量のバイクは、新型で施したブラック基調のカラーにより、ワイルド感がよりアップした印象だ。とくにエンジンは、写真などで見るよりも巨大で、威圧感さえ覚える。

また、展示車は、走行こそできなかったが、停車状態で実際にまたがることもできた。ワイドなバーハンドルを握ってみると、かなりゆったりとしており、腕に余計な力が入らないであろうことがうかがえる。また、巨大な車体ながら足つき性も良好。身長165cmの筆者では、両足を地面に着けるとつま先立ちになるが、片足なら踵までベッタリ。ただし、Rの車両重量は317kg(GTは320kg)。せまい駐車場で押して移動する時などは、かなり苦労しそうだ。

また、渋滞で低速走行する際も、バランスを取るのが大変な気がする。もちろん、高速道路を使ったロングツーリングなどでは、余裕あるエンジン出力などにより、かなり快適に走れるだろう。そう考えると、市街地などで日常使いより、休日のバイク旅など、非日常でより楽しめるバイクであることがうかがえる。

量産2輪で最大排気量となる2458ccを誇るエンジン

量産2輪で最大排気量となる2458ccを誇るエンジン(筆者撮影)

とくに新型モデルでは、エンジンの排気量などはそのままに、前述のとおり、最高出力を134kW(182PS)/7000rpm、最大トルクを225N・m/4000rpmに向上。従来モデル以上のパフォーマンスを発揮することで、さらに鋭い加速感などが堪能できそうだ。

ホイールやモード設定について

ロケット3ストームRのり阿保イール

ロケット3ストームRのリアホイール(筆者撮影)

新型モデルでは、フロント17インチ、リア16インチのホイールも変更されている。デザインを、よりスポーティな10本スポークにしたほか、軽量なアルミ鋳造製を採用。バネ下質量を低減することで、走行中のステアリング・レスポンスをアップし、さらに軽快なハンドリングなどを実現するという。

また、従来モデルと同様に、最新の電子制御システムも搭載する。走行状況や好みに応じて選択ができるライディング・モードには、「ロード」「レイン」「スポーツ」といった3タイプに加え、任意に設定が可能な「ライダー」も用意する。加えて、走行中のリーンアングル(車体の傾く角度)に応じ最適な制御を行うコーナリングABSや、滑りやすい路面などで後輪のスリップを低減するよう出力特性を調整するトラクション・コントロールなども搭載。さらに、登り坂などに停止し再発進する際などに、ライダーが走り出すのを感知するまでリアブレーキを利かせ、車体の後退を防ぐヒルホールド機能も採用。これらライダーの走りをサポートする数々の先進システムを備えることで、安心感の高い走りに貢献する。

ロケット3ストームRのスタイリング

ロケット3ストームRのスタイリング(写真:トライアンフモーターサイクルズジャパン)

新型モデルの価格(税込み)は、ロケット3ストームRが298万9000円、ロケット3ストームGTが305万9000円と、いずれも300万円前後。排気量だけでなく、車体価格も4輪車並みだ。だが、国産車で最大排気量のゴールドウイング ツアーは、価格(税込み)346万5000円とさらに高い。先述したとおり、ロケット3ストームの排気量は、ゴールドウイング ツアーより軽自動車1台ぶんほど大きく、輸入車であることも考慮すると、比較的リーズナブルなのかもしれない。

従来モデルも継続販売

なお、国内販売を手がけるトライアンフ モーターサイクルズ ジャパンでは、従来モデルも継続販売しており、価格(税込み)は、ロケット3Rで282万5000円~288万5000円、ロケット3GTで289万5000円~295万5000円だ(いずれもカラーで異なる)。新型と比べ、最高出力や最大トルクはやや落ちる従来モデルだが、そのインパクト感満点なスタイルなどは変わらない。

差額は、RとGTのどちらも10万4000円~16万4000円だから、予算によっては、従来モデルでも十分に選択肢に入るといえるだろう。

いずれにしろ、規定外ともいえる存在感という意味では、世界的にもかなり突出しているといえるのが、ロケット3・シリーズ。とくに趣味としてバイクを愛し、休日のツーリングだけでなく、スタイルにも個性を求めるライダーには、最適なモデルの1台ではないだろうか。

(平塚 直樹 : ライター&エディター)

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