「数学好きな子に育つ」東大生家庭の"簡単ゲーム"

ドラゴン桜 永田耕作 数学

子どもが数学が好きになる、買い物での一工夫とは(写真: KAORU / PIXTA)
世の中は、想像以上に数字であふれています。現役東大生・ドラゴン桜チャンネル塾長の永田耕作氏が上梓した『東大式 数値化の強化書』では、さまざまなシチュエーションを交えながら、ビジネスでも日常生活でも役に立つ「数値化力」を鍛えるコツを紹介しています。本書を一部抜粋・再構成し、子どもが数学好きになる簡単なゲームを紹介します。

スーパーで子どもと遊ぶ「どちらがお得かゲーム」

みなさんは、数学が得意な子どもが育つ家庭で遊ばれている“あるゲーム”を知っていますか?

われわれカルペ・ディエムでは、東大生やその親御さんに定期的にアンケートやインタビューを実施しています。その中で、数学が得意なお子さんが育つ家庭では、あるゲームで遊んでいる場合が多いことがわかりました。今回はそのゲームについてみなさんにご紹介したいと思います。

そのゲームとはずばり、「どちらのほうがお得か」ゲームです。

たとえば、小さいときに親子でスーパーに買い物に行くことも多いと思います。買い物の際に、子どもたちに、さまざまな場面で「どちらのほうがお得か」を判断させるのです。

具体的にお話ししましょう。スーパーには卵のパックが売っていますよね。たとえば6個200円の卵パックAと、10個300円の卵パックBが販売されていたとします。このときに、親御さんは子どもに「どっちがお得かな?」と聞いてみるとしましょう。

小学生で割り算を習っていれば「B!」と答えられる子どもが多いと思います。

「全部の値段÷個数=1個あたりの値段」を計算できますから、「A:200円÷6個」「B:300円÷10個」で、Aの卵が約33円、Bの卵が30円となります。

Bのほうが1個あたりの値段が安いので、Bを買ったほうがお得だと考えられるわけですね。

このような問題は、小学生の勉強ドリルに載っているものですが、日常生活で実際に計算する機会はなかなかないでしょう。このように、算数で勉強していることを、日常生活の中で活用させることで、算数に対する勉強意欲が高まるのです。

小学校高学年は即答しなくなる

ところが、子どもたちが小学校の高学年になると、「B」とは即答しなくなります。確かに、卵1個あたりの値段に換算して考えれば、値段が安いのはBです。しかし、この考え方では単純に値段のことしか考えていません。卵の賞味期限や卵の消費スピードが、考慮されていませんよね。

例えば、本来であれば卵を1週間に3個のペースでしか消費しない家庭が、賞味期限が2週間の卵を10個購入した場合を考えてみましょう。

普段と同じペースで卵を消費していた場合、卵は賞味期限が切れたタイミングで4個余ってしまい、残りの4個は賞味期限が切れて、味の落ちた状態で消費されることになります。あるいは、賞味期限内にすべての卵を消費しようとした場合、無理をして1週間で卵を追加で2個消費することになります。

つまり、一見お得のように見える「Bを選択する」という行動が、「わざわざ100円多く支払って、普段食べる量よりも多くの卵を買っている」という行動だと言うことができるのです。それはお得と言えるのでしょうか?

こう考え出すと、一概にBのパックがお得だ、とはならなくなります。このように、ほかのシチュエーションも考えながら、比較できるようになると、子どもたちもいろんなものを数値で表そうとするようになります。

例えば、お小遣いに関しても同じように質問をしてみましょう。

「1カ月で1000円ずつもらえるのと、1年の最初に一括で1万円渡されるのと、どちらのほうがいい?」と聞けば、子どもたちは「1カ月ごとに1000円もらったほうが、1000円×12カ月=1万2000円だから、1万円もらうよりも2000円儲かることになるな」「でも、最初にもらったほうがいろんなことができるし、ほしかったゲームが先に買えるかもしれない」などと考え出して、「うーん」と頭を悩ませることになります。

そうやって悩んで結論を出そうとすること自体が、子どもにとっては数学を使ってものを考える習慣となり、数学に興味を持てるようになるのです。

レストランでも同じことが言えます。例えば、親子2人でレストランに入ったとします。そこでは前菜、ピザ、パスタ、ドリンクがすべて1品500円(税抜き)です。

その一方で、コースを選ぶこともできます。2時間飲み放題付き3000円(税込み)で、前菜からピザやパスタまで出てくるコースです。

なお、アラカルトで頼む場合、1人あたり300円(税抜き)のチャージ料金がかかります。

コースとアラカルト、どちらがお得?

そのときに、子どもに「コースとアラカルト、どちらのほうがお得だろう?」と聞いてみるのです。子どもに計算してもらい、どちらがお得になるかを考えてもらうのです。

「飲み放題2人分で6000円なので、500円のメニューが12品頼める」とつい思ってしまいます。

しかし、この計算は、一見正しいように見えて間違っています。なぜなら、アラカルトにはチャージ料金が発生するからです。

また500円という料金も、細かく見ると「税抜き」で書かれているため、実際にはイートインの税率である10%が加算されて550円となるのです。

この2つの情報を踏まえて、改めて頼める品数を考えてみると、以下の通りになります。

・8品(1人4品)頼んだ場合
(300円×1.1)× 2 + (500円×1.1)× 8 = 5060 円
・10品(1人5品)頼んだ場合
(300円×1.1)× 2 + (500円×1.1)× 10 = 6160 円
・12品(1人6品)頼んだ場合
(300円×1.1)× 2 + (500円×1.1)× 12 = 7260 円

このように考えてみると、2人でコースを頼んだ場合は税込み3000円×2人=6000円ですから、10品以上アラカルトで注文するよりも、コースのほうがいい、ということがわかります。

このように、レストランでの注文の仕方も、どちらがお得かを考えてもらうのです。

日常生活でも数学を取り入れる

こうすれば、日常生活で計算する習慣が身に付きます。数学を勉強すればするほど、得した気分になれる。そうやって計算を続けていると、だんだんと数学が楽しくなっていき、自分から数学を勉強するようになる、というわけです。

頭のいい子どもが育ちやすい家庭の特徴として、勉強と日常生活の境目がないことが挙げられます。ただ机に座っている時間だけを勉強だと定義するのではなく、日常生活の中でも数学や英語・社会を使って思考することを促している家庭のほうが、頭のいい子が育ちやすく、頭もよくなりやすいです。みなさんぜひ、参考にしてみてもらえればと思います。

(永田 耕作 : 現役東大生・ドラゴン桜チャンネル塾長)

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