自己アピール上手が実践している「7対3」の法則

笑顔で会話するビジネスパーソンたち

話すよりも聞くほうが、よりよい自己アピールになります(写真:takeuchi masato/PIXTA)

対話の温度を上げるには、まず「話す」より「聞く」

挨拶やちょっとした自己紹介を終えた後、いきなり自分の話から始めてずっとしゃべり続けていませんか?

国山ハセン氏

国山ハセン氏(写真:東川哲也 朝日新聞出版写真映像部)

もしも「学び」や「チャンス」につながる対話を目指すなら、まずは相手の話を「聞く」。特に対話の前半は、聞き役に徹するが吉です。

久しぶりに会う人のためにとっておきのエピソードを話す準備ができていたとしても、相手が一方的に自分の話をしていたら、「今日はあの話をする出番はなさそうだな……」と引っ込めてしまいますよね。

対話のスタート時点から、相手の話に耳を傾ける姿勢を示すことで、「この人はちゃんと話を聞いてくれそうだ」という印象を持ってもらえます。

対話のスタート時点で、「安心して話せる空気」をつくることが重要なのです。

「何か面白いことを言わなきゃ」と焦ってしまう気持ちもわかります。「つまらない人と思われたくない」という不安が、そうさせるのだと思います。

でも、発想をこのように転換してみましょう。

話すことよりも聞くほうが、よりよい自己アピールになる。

「何も話していないのにアピールになるの⁉」と不思議に感じるかもしれませんね。

でも、こんな経験に心当たりはないでしょうか。

飲み会や食事会の場で、複数人でひととおり話し終えて別れた後に、最も好印象を残す人は誰か。それは一番話した人ではなく、むしろほとんど自分の話をしなかった「聞き上手」の人だった。

人は自分の話をじっくり聞いてくれる人に対して、心を開くもの。

高度な知識を誰にでもわかりやすく披露したり、鉄板ネタでドッと場を沸かせたり。そんなコミュニケーションの達人は世の中を見渡してもほんのひと握りです。

「引き算」の意識で相手に気持ちよく話してもらう役回りに徹することで、対話の時間を通じて、自分のよさを感じてもらえたらいいと私は考えています。

「ハセンさんと話すとなんだか楽しい気分になる」。そう感じてもらえたらバンザイです。

「話しやすかった」と満足してもらおう

対話の前半は「聞くが7割」という感覚で、相手の目を見て、じっくり傾聴に徹しています。

「話すが3割」くらいにしておくと、引き出しの余力を残しておくことができます。相手がこちらに興味を示してくれたタイミングで、話題を豊富に提供できて対話が盛り上がるというメリットも。

つまり、「聞く姿勢」をしっかり示すことで、相手の緊張や警戒が解け、「これも話していいかな」「あれも話してみようかな」と心の扉がどんどん開き、対話の温度が上昇していきます。

いわば対話のアイドリングの時間です。

このアイドリングの時間を意識するかしないかで、対話の中盤以降に「深い話」までできるかが決まると言っても過言ではありません。 

極端な話、その日の対話はずっと聞き役に徹してもいいくらいです。相手に気持ちよく話してもらって、「話しやすかった」と満足してもらうほうが、結果的に自分の“トク”につながるからです。

実際、貴重な経験や知見について、さらに深く教えてもらえる次の機会をいただけることは多いと感じます。「今日は自分の話ばかりしてしまったから、次回はハセンさんの話を聞かせてくださいね」と、かえって関心を向けてもらえることも。

「聞く」に徹すると決めたら、相手がどんな話をし始めるか、注意深く耳を傾けてみてください。

事前に想定した話題とは違ったとしても、アタマの中の「シナリオ」は真っ白に消してしまいましょう。今、目の前の相手が話そうとしている内容に集中してリアクションをしていくことで、「生きた対話」が生まれます。

対話のスタートに、自己紹介や近況を語ってもらう

「対話の始め方」としてシンプルかつ効果的なおすすめの方法があります。

それは相手の言葉で「自己紹介」をしてもらうこと。

初対面でなければ、「近況シェア」でもオーケーです。

今はネット検索やSNSを通じて、いつでも簡単に情報収集ができる時代なので、相手の経歴や直近でどんな活動をしているのかといった事前情報は、簡単に仕入れることができます。

とはいえ、実際に会ってみたときに、「自分について何を話したいと思っているか」はまったくの別物です。

自己紹介の仕方も、シーンや相手によって内容を変える場合もあるでしょう。すでに知っていることばかりだったとしても、あらためて聞いてみることが重要です。

本人の言葉で「まずしゃべってもらう」がポイント

アナウンサー時代に感じたのは、やはり「対話」の基礎はインプットだ、ということです。

限られたオンエアの時間で「情報を伝える」「質問をする」、時には「ユーモアを交えて展開する」──。すべてはインプットがあってこそ可能なこと。

仕事の9割はインプットだったと言っても過言ではありません。インプットにはゲストの情報を事前に調べることも含まれます。

知っていたとしてもあえて本人から伝えてもらうことで、対話の波長が合ってきます。

職場でも友人関係でも、相手のことをあらかじめインプットしておくのは有効です。

アタマがよくなる「対話力」 相手がつい教えたくなる聞き方・話し方

その上で、「最近、どんな活動に力を入れているんですか?」などと、フリーで答えられる質問を投げかけて、長めに話してもらう。この“長め”に話してもらうというのがポイントです。 

対話のスタートに、自分の言葉で自己紹介や近況シェアを語ってもらう出番をふることで、口をたくさん動かしてもらい、「話すこと」に慣れてもらうのです。

注意深く聞けば、自己紹介の中に必ず「詳しく話したいネタ」が隠れています。本人の言葉の中に、キラリと光るキーワードを察知したら、すかさず「それってどういうことですか?」と反応し、自然と話題を広げていきましょう。

(国山 ハセン : 映像プロデューサー、元TBSアナウンサー)

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