明治「ザバス」が絶好調!プロテイン飲料最前線

「ザバスミルクプロテイン」はプロテイン飲料シェア8割と高シェア、好調が続く(記者撮影)

プロテイン飲料で約8割もの国内シェアをもつ明治「ザバスミルクプロテイン」の勢いが止まらない。

2022年度の販売金額は前期比9%、2023年度は同17%伸長(インテージSRI+調べ)した。原材料の価格高騰で2022年度に3~7%、2023年度に2~7%値上げしたにもかかわらず、2023年度は販売数量でも前年を上回る推移(4~12月期)だ。

プロテイン飲料の特徴は、時間がないときや外出先でも手軽にタンパク質を補給できること。コンビニでも購入でき、運動前後など、好きなタイミングで飲用できる。

粉末タイプは計量し、牛乳や水などで溶かして飲むのが一般的だが、飲料タイプはその手間がかからない。ザバス飲料には常温保存可能な商品もあり、まとめ買いに適しているのも売りだ。

ライバルも多い、なぜザバスが伸びる?

富士経済によれば、プロテイン飲料や食品を含むタンパク補給食品市場の規模は2580億円(2023年見込み)。プロテインブームやコロナ禍での運動不足解消需要の高まりを受け、この10年で約4倍に成長した。

近年、森永乳業の「inプロテイン」など飲料タイプの競合は増えている。タンパク質が豊富なヨーグルトやバータイプの食品も勢力を広げるなど、タンパク質のマーケットは群雄割拠の状況だ。

一方、ライトユーザーの離脱などで、2022年以降は売り上げで前年を下回る品目も出るなど、ブームは落ち着きつつある(富士経済調べ)。

そんな中でも伸び続けるザバス飲料。強さの秘訣は何か。その1つは、リピート率の高いヘビーユーザーの多さだ。ターゲットは「体を変えたい」など、目的意識を持って運動するユーザー。こうしたユーザーが購入者の大半を占め、売り上げを支えている。

継続的に購入してもらうため、明治も絶えず新商品を投入してきた。

ザバス飲料の主軸はタンパク質15グラムを含む商品群だが、昨年3月には20グラムを含むチョコレート風味の飲料を発売。昨年10月にはキャラメル風味の飲料も投入した。従来、タンパク質20グラムの商品は430ミリリットルの要冷蔵品のみだった。常温保存可能な200ミリリットルの商品では初のタンパク量だ。

従来品よりも値段は高めだ。タンパク質15グラムの商品はコンビニ店頭で税抜169円程度だが、20グラムの商品は税抜205円程度。それでも、小容量、高タンパク、常温保存可能という点が評価され、2023年度のザバス飲料の売り上げを押し上げた。

明治のスポーツマーケティング部でザバス飲料を担当する藤本章太郎氏は「より多くのタンパク質を摂りたいヘビーユーザーの深耕に成功した。価格差があっても、タンパク質を多く摂取できる価値を感じてもらえた」と語る。

根強い「おいしくない」イメージ

もう1つの要因は、マイナスイメージを覆す味作りだ。

プロテイン粉末や飲料は、いまだに「まずい」イメージを持たれることもある。タンパク質はおいしさに寄与する成分でなく、ダマになりやすい。おいしく、なめらかで常温保存可能な商品へ仕立てるのは至難の業だ。

しかし、ザバス飲料は一度飲めば「意外とおいしい」と評価されることも多い。明治は長年、乳飲料を製造し、粉末タイプのザバスも40年以上の歴史がある。乳飲料とタンパク研究の知見で、味を評価してもらえる飲料を実現させた。

目下の課題は間口の拡大だ。2023年度はヘビーユーザーの深耕が進んだ一方で、新規獲得には苦しんだ。

明治の調査によれば、プロテイン飲料全体の購入率は10%未満。つまり調査対象者の10人に1人も商品を購入していない。 急成長を続けてきたとはいえ、開拓の余地はまだ大きい。

そこで、新規獲得に向けて商品の拡充を進める。体を大きくしたい、引き締めたい、美容効果を得たいなど、プロテイン飲料を摂取する目的が多様化している点に着目し、ソイ(大豆)プロテインや女性向けの商品を拡充する構えだ。

ダノン参戦、プロテイン戦線は過熱

ザバス一強に見えるプロテイン飲料市場だが、今年4月、ついに「強敵」が出現した。ダノンジャパンだ。

同社はプロテインヨーグルト「ダノンオイコス」で国内シェア1位を誇る。そのオイコスブランドから初の飲料「ダノンオイコス プロテインドリンク」を発売した。タンパク質18グラムを配合したチルドの乳飲料(240ミリリットル)だ。

「ダノンオイコス」から満を持してプロテイン飲料が登場。ヨーグルトと異なるニーズがある(記者撮影)

飲料を発売した経緯について、ダノンジャパンの中川順子マーケティングディレクターは「運動前後は特にタンパク質の摂取ニーズが高い。ヨーグルトよりも手軽に、飲み物で摂りたいという需要に応えたかった」と話す。

朝食や間食として食べるヨーグルトと飲料は摂取タイミングが異なり、オイコス内での奪い合いは起こりにくい。また、ヨーグルトの認知度は高く、ユーザーが飲料に興味を持ちやすい点も強みだ。どれだけヨーグルトとの相乗効果を発揮させられるかが、今後のカギになる。

ダノンの参戦で、プロテイン飲料をめぐる戦いはさらに過熱しそうだ。多様化するタンパク質摂取ニーズをとらえ、差別化を図れるか。各社の開発力とマーケティング戦略が試される。

(田口 遥 : 東洋経済 記者)

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