「ニュージーランドワイン」手がける日本人の挑戦

シャトー・ワイマラマ ニュージーランド

ワイマラマ(写真:著者撮影、協力:TANAGOKORO THE BAR)

日本におけるワイン消費量は、10年前と比較すると約128%伸びている。

赤ワインや、白ワイン、ロゼワインなどの非発泡性ワイン(スティルワイン)のなかでも、日本人に人気なのが、フランス産ワインだ。国別で見ると、輸入量ランキングで1位に輝く。次点はチリ、3位はイタリアと続く。

注目が集まり始めているニュージーランドワイン

欧州産ワインが輸入量全体の6割を占める中、ここにきてじわりと伸びているのがニュージーランド産のワインだ。2022年の輸入量は前年比112.3%も伸びている。なぜ人気を集めているのか、その理由を探ってみよう。

ニュージーランドワインの歴史はまだ浅く、1836年にイギリスからの移民であるジェームズ・バズビーが初めてニュージーランドワインを醸造したことに始まる。1980年代には、マールポロ地区で造られたソーヴィニヨン・ブランが、国際的なワイン・コンペティションで最優秀賞を受賞したことで、世界中から注目されるようになった。

南北に長い島国であるニュージーランドは、それぞれの土地で個性的なワインが造られている。スクリューキャップを導入したり、先進的な醸造技術を研究したりと、チャレンジ精神が旺盛で、上質でエレガントな味わいはさまざまな料理とも相性が合う。

そんなニュージーランドには、高級ワインを生産する日本人オーナーのワイナリーが存在する。

それは、エイブル&パートナーズ代表の佐藤茂氏が手がけるシャトー・ワイマラマだ。「ワイマラマ」はニュージーランド先住民マオリ族の言葉で「水面に映る月明かり」を意味する。

佐藤氏はもともとワインが好きで、ボルドースタイルのワインを造りたいと考えていた。ニュージーランドにも興味をもっており、現地で収穫されるブドウが素晴らしいことから、ニュージーランドでワイン造りを始めたのだ。

葡萄畑はわずか4.5ヘクタールという大きさで、剪定や間引き、収穫に至るまですべて手作業で行っているのが特徴だ。

シャトー・ワイマラマが始動したのは1998年で、2023年11月には25周年を迎えた。日本では、高級ステーキの「ウルフギャングステーキ・ハウス」各店舗、西麻布「とり料理屋」、乃木坂の人気中華店「結」、銀座「TANAGOKORO THE BAR」などに提供している。

シャトー・ワイマラマは、「KIRARAKA(キララカ)」(1万8700円)、「MINAGIWA(ミナギワ)」(1万6500円)、「EMIGAO(エミガオ)」(1万8700円)が主力だ。最上級の「SSS」(5万5000円)や、ロゼの「vin rosé」(6380円)も販売している。

シャトー・ワイマラマ オーストラリア

ワイマラマ(写真:著者撮影、協力:TANAGOKORO THE BAR)

「SSS」は、2012年に2009ヴィンテージが「ニュージーランド・インターナショナル・ワインショー」でゴールドメダルを受賞。人気が高い一方で、生産量が少ないため、ワイマラマのオンラインショップでも購入できない幻のワインだ。

実際に飲んでもらう機会を増やす

シャトー・ワイマラマは、年間で約2万本のワインしか生産していない。これまでは法人向けギフトとして利用されることが多かった。

一方で、現在はマーケティングと営業に力を入れて、より幅広い層にリーチできるよう試みている。

シャトー・ワイマラマは、ワイナリーから販売まで一気通貫しているブティックワイナリーであり、直営業でしか販売していない。大量生産・大量消費されるワインではないが、より多くのレストランでの提供や、イベント開催を考えているという。

「ワインの質も高くなっています。オンライン販売を強化したり、多くのレストランでもお取り扱いいただいたりして、これからはもっと幅広い消費者のみなさまにシャトー・ワイマラマのワインを届けたいと考えています。コロナ前に開催していたサロンを再開したり、イベントを企画したりもしたいですね」(ワイマラマジャパンの神長崇子社長)

日本は少子高齢化が進んでいる。あえてお酒を飲まないソバーキュリアスも増えている。これからどう市場を広げていく予定なのか。

「日本人だけではなく、インバウンドで訪れる方や『アジアのベストレストラン50』でも上位を占める東南アジアの高級店にも販路を広げていきたいです。ワイマラマのワインはお肉料理全般によく合いますし、フランス料理やイタリア料理はもちろん、しっかりめの中国料理や繊細な日本料理にもマリアージュすると考えています。ロゼは、女性に人気で前菜からメインの料理まで合うので、もっと盛り上げていきたいですね」(神長社長)

人員の強化が課題に

さまざまな挑戦を仕掛けようと試みる一方で、課題になるのが人員だ。マーケティングや営業の強化、ECサイトの刷新には、現在の倍くらいは人員が必要だと神長社長は語る。

「まずは社内の体制を整えていき、この数年はブランドの認知力を上げていきたいです。30周年を迎える2028年頃までには、毎年完売するようなワインにしていければと思います」

ニューワールドで世界から注目されているニュージーランドワイン。日本のワイナリーが、次世代のニューワールドを牽引することができるか。

(東龍 : グルメジャーナリスト)

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