「お見合い前でよかった」彼女が知った彼の"問題"

過干渉な親を持つ息子が婚活に苦戦する理由とは――(写真:takeuchi masato/PIXTA)
親が子を心配するのは当然のことなのだが、社会人になった子どもの婚活にまで口を出してくるのは、いかがなものか。
仲人として婚活現場に関わる筆者が、婚活者に焦点を当てて、苦労や成功体験をリアルな声とともにお届けしていく当連載。今回は、過干渉な親を持つ子ほど結婚できない現実を考えていきたい。

息子には内緒で裏で婚活に干渉

あるとき電話が鳴った。出てみると、「そちらでお世話になっている、〇〇ゆきお(47歳、仮名)の母です」と名乗る女性からだった。ゆきおは、活動3カ月目の会員だ。

「この間、息子に婚活の様子を聞いたら、41歳の女性と交際しているそうですね。もうガッカリしました」と母親。そしてこう続けた。

「ゆきおは、上場企業に勤めていて、年収も800万円以上ある。もっと若い女性と見合いできるんじゃないですか? しかも、相手の女性はバツイチだというじゃないですか。もうガッカリですよ」

憤った声を出しながら、「ガッカリ」を何度も繰り返した。

「息子は、経歴がよくても見た目がよくないから、41歳のバツイチ女性としかお見合いができなかったのでしょうか」

上場企業に勤めていて年収もある自慢の息子が、41歳の女性とお付き合いに入っていることが、不満のようだった。

そこで、筆者は言った。

「30代の方とも何人かお見合いをしましたよ。ただ、41歳の女性が一番話しやすかったと言って、その方と交際に入っています」

電話があったことは言わないで

ゆきおのお相手のきみえ(仮名)は、男性受けする見た目ではなかったが、いつもニコニコ笑っていて、気立てがよかった。20代のときに結婚をしたが、7年前に夫が不慮の事故で亡くなった。子どもはいない。

その悲しみから時が経ち、これからの人生をともに歩いていけるパートナーを探そうと、婚活に乗り出した。

母親は、電話を切る前に言った。

「私から電話があったということは、ゆきおには伝えないでくださいね。私が電話したことがわかると、とんでもなく怒ると思うので」

筆者は、この電話のことはゆきおには伝えなかった。ただ、きみえと成婚になったとしても母親はいい顔をしないだろう。きみえにとっても、こんな過干渉な親が義母になったら苦労をする。

しかし、そんな心配は無用だった。4回目のデートで、ゆきおはきみえからあっさりと振られてしまった。

あるときの面談で、ゆきおがこんなことを言っていた。

「ウチの両親は昔から過干渉で、高校時代に兄に付き合う女性ができたときに、母がその女性を兄には内緒で呼び出して、『今やるべきことは、男女交際ではなくて勉強でしょう』みたいなことを言って、無理やり別れさせたことがありました」

兄は彼女に振られた。振られるときに、彼女から母親が会ったことを聞かされたそうだ。

「『アナタとは、付き合うな』だって。別れ際に、『今日のことは、息子には言わないでね』とも言われたわ。コソコソしていて、サイテーね」

その捨て台詞とともに振られた兄は激怒し、家に帰ってくるなり母親を怒鳴りつけた。するとそこに父が参戦し、母側について大げんかになったという。

そんな様子を見ていた中学生のゆきおは、“女性と付き合うと面倒なことになる”と思ったそうだ。そして、女性と付き合うことがないまま学生時代を終えて、社会に出た。

入会面談のときに、ゆきおが言っていた。

「これまで女性と2人きりで食事をしたことは、片手でも数えられる程度です。彼女がいない歴イコール年齢なんですが、こんな自分でもうまくいくでしょうか?」

そんな不安もあったのだが、お見合いは順調に組めていた。

いつくかのお見合いを経てきみえと交際に入り、「一緒にいると自然体でいられる」と言っていた。いい関係を築いているときに、母親から筆者に電話が入った。

知らぬ間に身についた「性格」

どういう経緯できみえとの交際を母親が知ったのかはわからないが、きみえの年齢とバツイチという経歴が気に入らなく、いてもたってもいられず電話をかけてきたのだろう。そして、切る間際に母親は筆者に言った。

「私から電話があったということは、ゆきおには伝えないでくださいね」

親の勝手な判断で裏から立ち回り、子どもにはわからぬように恋愛や結婚を潰していく。

その後、ゆきおは30代にばかりお申し込みをかけるようになった。母親から結婚する女性の年齢について、何か言われたのかもしれない。

親の支配のもとで成長したゆきおは、40代後半になっても、親の顔色をどこかでうかがう性質が、知らぬ間に身についてしまったのだろう。

ゆかり(41歳、仮名)が、ひとまわり上のよしや(53歳、仮名)のお見合い申し込みを受諾したのは、同じ大学の出身で、山登りや美術館巡りが好きという趣味が共通していたからだ。

しかし、お見合いを調整しているときに、ゆかりに海外赴任の話が持ちあがった。学生時代に留学経験もあり、海外で自分の実力を試してみたいという気持ちもあって、「このお見合いは、キャンセルをしたい」と言ってきた。

お母様がすごく楽しみにしていた

よしやの相談室にその旨を告げると、よしやの仲人は、困惑したように言った。

「お母様がすごく楽しみにしていたお見合いなんですよ。お見合いがなくなったと言ったら、何ておっしゃるかしら」

結婚する本人よりも、仲人は母親に気を遣っているようだった。実は、よしやのことを結婚相談所に入れたのは、78歳の母親だった。入会後に、母親から相談室に連絡が入ったという。

「お見合いのお申し込みが来たら、私にも教えてくださいね。どんな経歴か私も知りたいんです」

そして、まずは母親が相手をチェックして、合格点を出した相手とだけ、よしやはお見合いをしていた。そんななかでも、ひとまわり下で、息子と同じ大学出身のゆかりのことは、いたく気に入っていたようだ。

仲人は言った。

「成立したお見合いだし、お見合いだけはしていただけないですか?」

事情をゆかりに説明すると、彼女は即答した。

「お見合いはキャンセルさせてください。そんな母親がいることを、お見合いの前に知ることができてよかったです。その母親に育てられた息子がどんな人が想像できます」

「子どもの判断で、結婚を決めるのは心配。こちらの目でも相手を判断したい。それが親心だ」と、子離れのできていない親は信じて疑わない。しかし、それは心配という名の過剰な支配だ。

こうしたタイプの親は、自分が考えていることが一般常識、正義だと思い込み、それを子どもに押し付けようとする。

本来なら、社会に出た子どもの人生は子どもに選択させ、それを見守っていくのが親なのだが、“心配する”“危険から遠ざける”ことを愛情だと勘違いしている。

もちろん、そんな親に育てられたとしても、干渉してくる親に反発をして、親離れをしていくタイプもいる。

しかし、反発ができずに、“親にとってのいい子”を装って成長するタイプは、自立できないまま大人になってしまう。そして、彼ら(彼女ら)は、婚活に苦戦をする。

親離れできない人の特徴

ここで、親離れできない人の特徴を見てみよう。

■男性の場合
・親の希望した大学に入り、希望した職についている
・親と同居。家事全般を母親がしている
・母親が買ってくる下着やパジャマを抵抗なく着ている

■女性の場合
・母親と友だちのような関係を築いている
・母親といつも買い物や旅行に行くのが楽しみ

婚活がうまくいっていない人は、親との関係をもう一度見直してみよう。うまくいかない原因が親子関係にあると感じたら、親離れすることを考えてみてほしい。

(鎌田 れい : 仲人・ライター)

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