東大生厳選「GW前に読みたい」読解力高める3冊

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読解力を高める3冊をご紹介します(写真: metamorworks / PIXTA)

ゴールデンウィークに、本を読んで勉強しよう・教養を深めようと考えている人も多いのではないでしょうか。連休は読書に最適な期間ですから、ぜひ多くの本を読んでもらいたいと思います。

しかし、読書というのはなかなか難しい行為です。「ちゃんと読んでいるのに、理解できない」「読んだはずなのに、後から振り返ると、あんまり頭に入っていなかったことに気付いた」と嘆く人も多いですよね。どうすれば読解力をアップさせることができるのでしょうか?

読むと読解力が上がる本

今回は、東大生が推薦する「読むと読解力が上がる本」を3冊紹介したいと思います。東大生が受験生時代に読んでいたものや、東大生の読解力アップの方法とマッチしている本です。これらをあらかじめ読んでおけば、きっとゴールデンウィーク中にさまざまな本を読んだときの理解力が、格段に上がるはずです。

1 現代文キーワード読解

まずは『現代文キーワード読解』です。これは、多くの東大生が受験生時代に使っていた、「現代文の概念が網羅的に載っている参考書」です。

どんな本を読んでいるときでも、「キーワード」に対する理解が低ければ、読んでもわけがわからない、という状況に陥ってしまいます。

例えば、「日本では、妖怪というものの扱いが、近代から大きく変わった」と書いてある文章を読んだとしましょう。近代がどんな時代で、中世とはいったい何が違うのか? ということがわかっていない状態だと、中途半端な理解しかできません。

「近代=すべてが科学で説明されるようになった時代のこと」だと知っている人であれば、「ああ、妖怪というものは科学で説明できないものだからなぁ」とか、「妖怪というものは近代に入ってから実在を否定されるようになった、という話なのかな」と推測することができると思います。

そのキーワードを知っているか・知っていないか、というたったそれだけのことで、文章への理解度が変わってしまうことがあるのです。

「この言葉の意味がわかっていないと、本当に著者が言いたいこと、考えていることはわからない」というのは、よくある話だと思います。

例えば、世界の国の話や世界史の本を読んでいても「資本主義と社会主義はどう違うのか」がわかっていない状態だと、わけがわからなくなり、理解が追いつかなくなってしまうことでしょう。キーワードが理解できていない状態だと、本に対する理解度が半減してしまうのです。

だからこそ、「キーワード」を噛み砕いて説明してくれる「キーワード読解」はとても意味のある一冊なのです。

この本では、本を読むうえで重要になる、さまざまなキーワードを噛み砕いて説明してくれています。

経済や哲学・近代など、その分野の本を読むうえで絶対に知っておいたほうがいい前提知識としてのキーワードをきちんと教えてくれるのです。本を読みながら「これってどういうことだろう?」と思ったときに、この本を使ってその言葉を調べるような、辞書として活用するというのも有効な使い方です。みなさんぜひ参考にしてみてください。

国語の授業で学んだ意味を教えてくれる

2 14歳からの読解力教室

2冊目は、『14歳からの読解力教室』です。

この本は、読解力を身に付けるためのお手本のような一冊です。そもそも私たちがどのように文章を理解しているのか、それはAIの理解の方法とどう違うのか、といった部分からしっかりと、「読解」というものを教えてくれます。かなり基本的なレベルから、私たちはどのように文章を読んで、理解して、覚えているのか、ということを、対話形式の読みやすい形で提示されています。

基本的にこの本に載っている内容は、すでに私たちが国語の授業で学んできたことです。

例えばこの本では「明確化」という言葉が何回も登場し、「コレ・ソレなどが何を指しているかはっきりさせる」「あいまいな表現を、つまりどういうことか言い直す」「自分の言葉で言い直す」という訓練として紹介されています。

書いてある内容を明確化する訓練が、読解力を身に付けるうえでも必要になってくる、ということです。これは、国語の授業やテストでも出てきた内容ですよね。

「これは何を指すのか答えなさい」「選択肢のうち、どれがこの文のまとめにふさわしいですか」といった問題を解いたことがある人は多いと思います。この問題は、読解力を付けるために必要な方略だったのだ、と説明されています。

このように、私たちが今まで学んできたことにどのような意味があるのか。そして読解力の身に付け方に関して、新しい視点を提供してくれる本なのです。当たり前のように私たちが実践していることだけれども、そのことは実はとても大事なものだったのだ、ということに気付かせてくれる一冊です。

どの文章にも型がある

3 『一度読んだら絶対に忘れない国語の教科書』

最後は、『一度読んだら絶対に忘れない国語の教科書』です。この本は、東大合格者が多い西大和学園の国語科教師である辻孝宗先生が、東大志望の子たちに向けて行っている授業内容を、噛み砕いて教えてくれているものです。東大に合格できるくらいの読解力を身に付けるために必須の教科書だと言えます。

この本の面白い部分は、古文や漢文の文章も合わせて、国語の授業で扱う文章には7つの型がある、と説明しているところにあります。この7つの型で、すべての文章が説明できるというのです。

①  同格型

最初にテーマを述べて、その後にそのテーマと同じことを繰り返す型。

例:「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」と始まる『平家物語』。

②  質問型 

最初に質問を投げかけて、その後にその答えとなる内容を語っていく型。

例:四季折々、いつの時間がいいのか、という質問に対する答えを書いている『枕草子』。

③  対比型

正反対なのに似ている性質があるものを2つ述べて、その2つの違いについて語っていく型。

例:「意地悪なおじいさん」と「優しいおじいさん」が出てくるような昔話。

④ 変化型

1つの物事が、結果的に形を変えていく文章の型。

例:新しい製品を発表するときに、昔の製品からどう変わったのかを説明している、など。

⑤  ギャップ型

1つの物事が、大きく変化し、その変化のギャップにフォーカスした文章の型。

例:シンデレラのようなサクセスストーリーなど。

⑥  葛藤型

2つの物事の間で揺れ動き、どちらを選べばいいか、結論が出ない文章の型。

例:天皇である父の妻である藤壺を愛してしまった主人公・光源氏が出てくる『源氏物語』。愛してはいけないのに愛してしまう、という葛藤が描かれている。

⑦  説話型

結論が語られておらず、読者が自分でその結論を考えなければならない文章の型。

例:「下人の行方は、誰も知らない」と余韻が残る『羅生門』など。

物語であれ、説明的な文章であれ、この7つの型のどれかの要素を含んでいる、というのです。確かに、どんな文章でもこの型のどれかに当てはまっています。

東大で出題されるような難しい文章でも、ちょっとした小説でも、古文の文章でも、漢文の文章でも、もっと言えば外国語の文章であっても、全部同じ型なのだというのがこの本で書かれている主張です。

読み方を身に付けて読書を楽しむ

今回の記事でも、「どうすれば読解力をアップさせることができるのでしょうか?」とまず述べたうえで、その答えが書かれています。先程のポイントの中だと、「質問型」ですね。

このように、文章の型を理解すれば、どんな結論に持っていきたいのか、ということがわかりやすくなり、読解力が身に付く、というわけです。今まで読んだ文章も含めて、文章を「型」で理解することができるようになるという点で、この本は読解力アップのための手段として有効なものだと感じます。

いかがでしょうか? どんな本を読んでも、「読み方」が悪いと、効果は半減してしまいます。ぜひ、読解力というテーマとうまく向き合っていただければと思います。

(西岡 壱誠 : 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当)

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