要領が悪い人は正しい「手抜き」の仕方を知らない

(写真:アン・デオール /PIXTA)
いつの世にも要領のいい人はいます。それに比べて自分は……。要領が悪いと、仕事は増え、ストレスが溜まり、体調も優れず、そして会社からの評価も低くなってしまいます。要領をよくするためには「手抜き上手」になることだと、『ゆるく生きれば楽になる』の著者で、精神科医の和田秀樹さんは力説します。
それでは「手抜き上手」になるためにはどうすればいいのか。その方法を知ることで、これからの人生を楽しく生きていくことができるはずです。同書より一部抜粋してお届けします。

ツボを見つけて「手抜き」上手になろう

手抜き上手になるにはどうすればいいでしょうか。きっと、まわりにも手を抜くのがうまいと感心させられる人がいるはずです。あまり働いているようには見えないし、結構いい加減な対応をしているようなのに、なぜか評価は高く、成果を出し、とても手を抜いているようには見えない人がいるのではないでしょうか。

その一方で、同様に適当な態度で働いていて、社内の評価も悪い、成果も上げていないという人もいるはずです。その差はどこにあるのでしょうか。答えはずばり、手を抜いてもいい部分の見極め方です。同じ手抜きでも、「ここだけは手を抜くべきではない」ポイントを見つけられるかどうかです。

手抜きの下手な人は、何もかも手を抜いてしまいます。そうすれば当然、仕事もできず態度も悪い。あいつはダメなやつだと、全方向から悪評を浴びることになります。

手抜きの上手な人はほとんどすべてのことに手を抜いていたとしても、大事なところだけは外しません。「ここだけはきちんとしておいたほうがいい」、逆に言えば「ここさえ押さえておけばあとはそれほど重要ではない」というツボを心得ているのです。

たまたま手を抜いているところを見た人たちからの評判は今ひとつかもしれませんが、それ以外の人から見るときちんとした成果を上げているので、決して手抜きに見えないし、上司からはよく仕事をやってくれているという評価になるのです。

すべての仕事をそこそこの熱量でこなすよりも、メリハリをつけてここぞというツボに努力を集中するというのが、手抜き上手になるための秘訣です。

目からウロコの秘策に学ぼう

たとえばセールスマンがなかなか売り上げが伸びない、頑張っても結果に結びつかないという悩みを抱えているとしたら、そのままただ頑張るのではなく、他の方法を探してみるべきです。

トップセールスマンの秘策が公開された本などを読めば、いくつかは参考にできそうなやり方が見つかるでしょう。そうしたら、とにかく試してみます。いろいろ試してみればおそらく今までと違う新しい道が見つかって、うまくいけば、「こんなに楽に商談がまとまるのか!」と目からウロコが落ちるように視野が広がるかもしれません。

他の人がやっているいい方法があれば、どんどん参考にさせてもらいましょう。たとえそれが年上でも、はるかに年下でも、自分の知らないやり方を知っている人からはどんどん新しい方法を吸収させてもらいましょう。
ゆるい生き方ができる人は、いい意味で要領のいい生き方ができる人です。世間からズルいと言われようとも、他人のやり方を真似ていると言われようとも、自分でいい方法を見つけて上手に手が抜ける人です。

いくらゆるく生きる、ゆるい仕事のやり方をすると言っても、完全隠居でもしない限り、それなりの結果を出さなくては話にならないのです。

スポーツの世界などその最たるものでしょう。どれだけ頑張ってコツコツ練習をしようとも、どのような結果を出したかがすべてです。だからこそ、より効率のいいやり方があるかもしれないとなれば、きっと即座に試してみるのでしょう。

自分がストレスを感じず、体にも負担をかけず、いい結果が出る可能性があるわけですから、手抜きと言われようが気にすることなどありません。
若い頃はひたすら頑張ることで乗り切ってきた人も、人一倍の努力で成果を上げてきた人も、年をとってそんなことをすれば心身に負担がかかるだけです。これからの人生がうまく回るために、いい手抜き法を身につけましょう。

仕事ができる人はうまい方法を知っている

私の知り合いで官僚時代に驚異的に仕事ができて、出世コースのトップを走っていた人がいます。その人に仕事の秘訣を聞いたところ、「和田さん、簡単ですよ」と言うのです。

上司から与えられた仕事をすべてやっていたら、いつまでたっても終わらない。毎日夜中まで仕事をしても終わらない量だそうです。ではどうするかというと、彼のやり方はまず2つ。

ひとつは、見込みのある上司から頼まれた仕事は一生懸命やるということです。一方で、おそらく出世しないと思う上司から頼まれた仕事は、できるだけやらない。

見込みのある上司の仕事を手早くこなして成果を見せると、「さすがだね」と褒められて、その次もその人から仕事が回ってくるのだそうです。
一方、見込みのない上司から頼まれた仕事は、基本、手をつけない。「あの仕事はどうなってる」と聞かれたら、「いや、こんな仕事ができるなんて皆さん優秀なんですね。とても私の手には負えませんでした」と答える。すると、仕方のないやつだということになって、その仕事はさっと他の人のところに回るのだそうです。

そしてもうひとつは、自分の得意な仕事に一生懸命取り組み、苦手な仕事は放っておくことです。すると、苦手な仕事は回ってこなくなって、得意な仕事ばかり回ってくるので「できる人」という評価を得られるというのです。

すべてに100%の力を注いでいると潰れる

このような話を聞くと「それはズルい」と言う人が必ず現れるでしょう。ところが、そんな要領の悪い人たちはといえば、大して出世しそうもない上司のもとで、その人が手放した仕事の残務処理に一生懸命になったり、苦手な仕事と毎晩遅くまで格闘したりした挙げ句、体を壊してしまったりするわけです。

ゆるく生きれば楽になる: 60歳からのテキトー生活 (河出新書 071)

「2人の上司から頼まれた仕事を、片方だけ真面目にやって、もう一方は手を抜くなど許されないことだ」と思うようなタイプの人は、どうか考え直してみてください。

そもそも複数の上司が、部下の状況を把握した上でできるだけの仕事を振っているというわけでもないでしょう。与えられたことはきちんとやらなければならないという姿勢は一見美徳に思えますが、そもそもそれがオーバーワークだとわかるのも自分だけです。

会社にしても役所にしても、組織は全員で仕事を回してゆくところです。だから、得意なところ、おいしいところから自分の仕事にしてゆけばいいものなのです。

仕事にしても何にしても、すべてに100%の力を注いでいては潰れてしまいます。自分を苦しめることもなく、効率よくいい結果を出すことができるのは、うまい具合に手を抜けるゆるい人なのです。

(和田 秀樹 : 精神科医)

ジャンルで探す