「やる気」に関係なく動ける人に共通する思考回路
明るい気持ちになる「色」とは?
私たちはたくさんの「色」に囲まれて生活しています。1つひとつの色には意味があり、私たちの心理や行動に影響を与えています。黄色やオレンジ色などの明るい色を見ると、私たちの気分も明るくなります。反対に、青や緑など落ち着いた色を見ると、気分も落ち着きます。
こうした心理的な効果を勘案して、世の中の商品や製品に色が使われています。
例えば、ピンク色には人の攻撃性を抑制する効果があることから、スウェーデンの刑務所の部屋がピンクに塗り替えられました。「クールダウンピンク」と名付けられたこのプロジェクトは、受刑者の気持ちを落ち着かせる目的で実施され、一定の成果を上げたそうです。
また、白は人に不安感を与えることから、病院の壁の色に使われることが減ってきています。以前は、清潔さを保つために白が選ばれていましたが、今はベージュなど温かみを感じさせる内装が主流です。
とくに小児科の病棟は、子どもたちの気持ちを動揺させないように、カラフルな色どりになっています。
赤は身につけた人の気分を高揚させるため、欧米では政治家や経営者がここぞのタイミングで赤のネクタイを身につけ、強さや情熱をアピールしています。赤のネクタイは「パワー・タイ」と呼ばれています。
オレンジは活発な印象や暖かい印象を与える色で、身につけた本人や目にした周囲の人を明るい気持ちにしてくれます。ファッションのどこかにオレンジ色のアイテムを取り入れることで、やる気の高まりを感じられるはずです。
ストレス社会を生きる私たちは、日々多くの心配事や悩みに振り回されています。今、目の前の仕事に集中しなければならないのに、過去の失敗を思い出したり、将来の不安について考えてしまったりしています。
どんどんネガティブに物事を捉えて、ストレスを抱え込んでしまっている人も多いのではないでしょうか?
マインドフルネスはそうした雑念を取り払い、気持ちを「今」に集中させるために行うものです。具体的には「瞑想」が用いられます。瞑想を行うことで余計な雑念が消えるため、不安やストレスから解消され、心身のコンディションを整える効果が期待できます。
私が「やる気を上げる」という観点でマインドフルネスに注目しているのは、自分の内面と向き合うことで、あるがままの自分を受け入れながら、「自分」と「自分の感情」を切り離していくことができる点です。
マインドフルネスの瞑想では、目を軽く閉じて呼吸を整えていきます。呼吸に集中しながら、あるがままの自分を観察します。
余裕がない自分やイライラしている自分……。こうした自分を否定するのではなく、ある意味俯瞰して捉えるのです。
自分を俯瞰して見る感覚が身につくと、「自分の感情」と「自分」を分離して捉えられるようになります。「やる気が出ない私と、私自身は別である」とか「つらい過去にこだわっている私と、今の私は別である」という感覚です。
この感覚をものにすると、やる気が出ないときは、「今日はやる気が上がらない私がいるな」と自分を俯瞰して見たうえで、「やる気が出ないなりに、できることをやってみよう」と、「感情」と「自分」を切り離して行動することができるようになるのです。
「今日の私は気持ちが落ちている」、しかし、「私自身がどこかに落下していっているわけではない」と思えるようになるのです。
「自分の感情」と「自分」を分離して捉えられるようになると、イヤなことがあってもそれとは関係なく、前向きに動くことができるようになります。「やる気が上がる」というよりは、やる気の有無にかかわらず行動することができるようになるのだと私は考えています。
多趣味な人の方がやる気がある?
趣味はたくさんあった方が、人生を前向きに過ごすことができるのかもしれません。
しかし「多趣味な人」というと、一見、活動的でやる気のある人を想像しますが、実は飽きっぽくて何をやっても続かない人なのかもしれません。
たくさんのことに取り組むエネルギーはあっても、やる気が続かないから、つねに別の何かに目を向けているとも考えられるのです。多趣味な人に、「あなたの本当の趣味は何ですか?」と聞けば、困ってしまう人も少なくないのではないでしょうか。
一方で、長く打ち込める趣味を1つ、2つ見つけてそれをずっと楽しんでいる人は、やる気を持続させるコツをつかんでいると考えることもできます。
趣味以外のことでもやる気を上げて、それをキープするのがうまいのではないでしょうか。やる気をコントロールする術は、仕事以外のことからでもたくさん学べると私は思います。
(田中 伸明 : ベスリ会総院長、日本神経学会認定医、医師会認定産業医、東洋医学会専門医)
09/20 09:00
東洋経済オンライン