「男の気持ちにもなって」成婚できない彼のぼやき

なかなか成婚に結びつかない男性。デート代はかさむばかり…(写真:jessie/PIXTA)
結婚相談所における出会いは、言わずと知れた結婚を前提にしたものだ。ところが、「お見合いをしても、しても、なかなか結婚したいと思う相手に出会えない」と嘆いている人たちがいる。これはどうしてなのか? 仲人の経験則で言うなら、男性と女性とでは、婚活への捉え方が違うので、気持ちが盛り上がるスピード感や気持ちの成熟感がズレてしまうからのような気がしている。
仲人として婚活現場に関わる筆者が、婚活者に焦点を当てて苦労や成功体験をリアルな声とともにお届けしていく連載。今回は、男女で違う結婚を決める経緯とその時の気持ちについて綴りたい。

“男性は考え方や行動が論理的、女性は感情的”とは、よくいわれていることだ。

男性の場合、行動を起こすときにはそこに“目的”があり、その行動によって得られる結果を欲しがる。対して女性は、どんな行動を起こすにも自分の感情を優先し、“共感”がモチベーションになっている。

これを婚活に置き換えるなら、男性は、婚活をスタートさせた時点で“結婚”が目的であり、その結果を欲しがる。

一方女性は、相手が自分の気持ちをわかってくれるのか、また自分が相手を好きになれるのかと、結婚に至るまでの気持ちの共感を求めている。つまり女性は、付き合っていく過程が大事なので、そこをすっ飛ばして結婚を決めることができない。

恋愛の感覚が忘れられない

こんなことがあった。

さよこ(32歳、仮名)は、20代で結婚したのだが、30歳の手前で離婚をしたバツイチだ。前夫は5つ年上だった。女子校育ちで恋愛経験がほとんどなかったさよこの前に現れた彼は、頻繁にデートにも誘い、女性が喜ぶような愛の言葉で口説き、瞬く間に彼女を恋に落としてしまった。

そして、結婚。それから3年経った頃、彼が会社での人間関係がうまくいかなくなり、家で塞ぎ込むようになった。目の前に現れた素敵な王子様は、いつしか仕事に疲弊したつまらない男になっていた。

「毎朝、会社に行く前に洗面所の鏡に向かって、ブツブツと何か独り言をつぶやいている。ある時から奇声や大声を出すようにもなって、これは普通じゃないと感じるようになりました」

彼は会社にも行けなくなり、精神科に通うようになって、夫婦関係がギクシャクし出した。話し合った末、子どももいなかったので離婚をすることにした。

それから2年後、再婚をすべく婚活をスタートさせたのだが、さよこは前夫と出会ったときの、恋愛に夢中になっていた感覚が忘れられずにいた。

婚活をスタートさせ、いくつか見合いをしたものの、「ピンとくる人がいない」と言う。そこで私は、「自然に出会っての恋愛結婚と婚活での結婚は、性質が違うんですよ」と伝えた。

「自然に出会って恋愛結婚するときには、好きという気持ちができあがって恋人になり、そこから結婚という気持ちができあがって結婚をしていく。“気持ち先行型”なんですね。でも、婚活での結婚は、お互いのことを知らなかった2人が1時間程度のお見合いをして、交際をスタートさせる。スタートさせた時点で、まだ気持ちができあがっていないのに、結婚が灯るんです。婚活で結婚していくためには、交際に入ったら気持ちを育てていかないといけないのですよ」

生活圏内で大恋愛するときは何か突発事故のようなもので、そこにドラマがあったりする。女性はそこで感情が揺さぶられると、一気に恋に落ちてしまう。モテる男というのはそれを知っていて、ドラマを作るのが上手なのだが、婚活市場にいる多くの男性はそれが最も不得手だ。

そのこともさよこに伝えた。

「だからフラットな気持ちで相手にお会いして、交際に入ったらご自身の気持ちを育てていくようにしてみましょうね」

結婚を前提にした交際が始まった

こうして、いくつかの見合いを進めていくうちに、せいじ(36歳、仮名)と交際に入った。せいじは毎日LINEをよこし、週末はデートに誘い、順調に交際は進んでいき、出会ってから1カ月半で、結婚を前提にした真剣交際へと進んだ。

そして、お見合いから3カ月になろうとしていた頃、デートの別れ際に、せいじからこんな提案をされた。

「僕は相談室から、『お見合いから、3カ月くらいで結婚を決めてください』と言われています。僕らもそろそろ結婚を考えませんか?」

そのデートを終えた後で、さよこは私に連絡を入れてきた。

「そう言われたんですけど、相談室から言われているから結婚をするって、私の気持ちを無視していませんか? 私自身、彼と結婚するというところまで、まだ気持ちが育っていません。悪い人ではない、嫌いではないけど、もう少し時間をかけて彼を見ていきたい」

そこで、私はせいじの相談室に連絡を入れた。

「結婚したいという気持ちはあるようなのですが、まだ時期尚早のようです。もう少し、彼女の気持ちが育っていくのを待っていただけませんか?」

すると、相談室の仲人は言った。

「わかりました。今ここで無理に進めてもいい結果にはならないと思うので、女性の気持ちが結婚に舵が切れるようになるまで、待つように男性には伝えます」

そこから、また2人は週末にデートを重ねていたようだった。そこから3週間が経った頃、私はさよこに交際の進捗を尋ねた。すると彼女は言った。

「せいじさんが私のわがままを聞いて、待ってくださっていることにとても感謝をしています。せいじさんは、私の中でどんどん大切な存在になってきています」

ところが、その2日後。せいじの相談室から“交際終了”の連絡が来た。気持ちを育てていたさよこの速度に、“結婚”という結果を欲しがっていたせいじは痺れを切らしてしまったのだ。

「交際終了がきましたよ」

そう伝えると、さよこは呆然としていたが、結婚を決断するタイミングがズレたというのは、縁がなかったということだろう。

成婚退会も、実らず…

としや(37歳、仮名)は、私の相談所で婚活を始めて半年になる。実は、それ以前に大手相談所で活動をしていて、そこで成婚退会をした。ところが、結婚の話を具体的に進めていく中で、結婚に向かうお互いの意向にズレが出てきた。としやは、「なんとか調整をしたい」と思っていたのだが、女性側から、「婚約は解消したい」という申し出があった。

そのときの女性側の理由が、こうだった。

「なんでもかんでも、そちらのペースでことを進めようとしている気がしました」

としやにそのつもりはまったくなかった。

結婚する時期、住む場所、結婚後に女性側が仕事を続けるかどうかなど、毎回会うたびに同じ話になる。“堂々巡りで話が進まない”と感じたとしやは、順序立てて「○月○日までに、住む場所を決める」「×月×日に両家顔合わせ」「△月△日入籍」と、計画表を作った。

もちろん計画通りに進まなくても構わない。あくまでも提案だったのだが、女性はそう捉えなかった。

「私の気持ちをないがしろにしている」

彼女は、じっくりと自分の話を聞いて、そこに寄り添ってほしかったのだろう。

一旦切り替わってしまった女性の気持ちが、再び裏返ることはない。婚約は破談になり、その後、私の相談所で新たに活動を始めることになった。

としやは、大卒で大手メーカーに勤め、見た目も清潔感のある好青年。年収も1000万円近くあったので、お見合いはスムーズに組めた。ところが、交際に入っても、1度か2度会うと、断ったり、断られたりが続いていた。

そんな中でよしみ(35歳、仮名)とは、お見合い後に3回のデートをすることができた。

「次は4回目になるので、少し遠出をしようということになっています。そこで、真剣交際に進む話をしてみようと思っています」

そう私に連絡を入れてきたのだが、そのデートの場所決めをする前に、LINEで軽くよしみに前振りをしたようだ。「次のデートは4回目になりますよね。僕としては、この日いろいろな話をしながら、交際を前に進めたい気持ちがあります」

すると、こう返信が来た。「それは、真剣交際にステイタスを変えるということですか? もう少し時間をいただけませんか?」

この返信を読んで、自分と相手とでは“結婚に向かうスピード感が違っている”と感じたようだ。としやは、私に言った。

「遠出したら、1日一緒にいることになる。時間もお金も使って結局お断りが来たら、がっかりしてしまいます。遠出はやめて、やっぱり都内の食事のデートにしたほうが無難かな」

そうこうしているうちに4回目のデートを前にして、よしみの相談室から「交際終了」の連絡が来た。相談室からの終了理由には、こう記されていた。「真剣交際を打診されて進むかどうかを考えたときに、まだそこまで気持ちが育っていない。その答えを今出さないといけないのなら、ここで交際を終了しようと思ったようです」。

交際終了がきたことを伝えると、としやはガックリと肩を落として言った。

「またダメでしたか。こんなことは言いたくないけど、女性は“気持ち”ばかりを優先させていますが、デートの度に散財している男の気持ちにもなってほしいです。今回も、有名焼肉店に行ったり、ホテルでアフタヌーンティーをしたり、それはすべて女性からのリクエストでした。車で出かければ、ガソリン代や駐車場代もバカにならないじゃないですか!」

婚活は最も利益率の悪い投資?

“結婚”という結果に結びつくなら、デートで使うお金は生きた投資となる。しかし、“交際終了”が来た途端、それは水の泡となる。“婚活は、最も利益率の悪い投資だ”と言った男性会員もいたくらいだ。

そこで、婚活男性にアドバイスしたい。

毎日LINEを入れる、週に1回はデートを企画してリアルに会うというのは、婚活で結婚をしていくには、とても大切なことだ。ただ、これらは、婚活をうまくいかせるためのアクションにしか過ぎない。

“結婚”という結果が得たいがために、着実にタスクをこなすような行動をしていても、それは結婚には結びつかない。そこが仕事とは違うところだ。感情を優先させる女性だから、難しくなる。女性は、自分のことを理解してくれる人、気持ちに寄り添ってくれる相手を探しているのだ。

清潔感は大事だが、イケメンである必要はない。デートで行く店も見栄をはって有名店や高級店に行く必要もない。身の丈の店でいい。その身の丈の店を、「こんな店しか知らないのね」という女性は、そもそもあなたの結婚相手ではないのだから。

誠実で謙虚を心がけ、女性の話をきちんと聞き、気持ちに寄り添いながら婚活を前に進めていく。アクティブに行動しながらも、そこに着眼したほうが婚活はうまくいく。

そして女性たちは、“自分のことをわかってほしい”と、共感ばかりを求めるのではなく、男性が頑張っていることを認めてあげる、受け入れてあげる大きな器を持ってほしい。

(鎌田 れい : 仲人・ライター)

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