京阪線・御堂筋線、淀屋橋駅の「地上」で進む大改造
京阪電気鉄道・京阪本線の起点駅である淀屋橋は、大阪メトロ御堂筋線との乗り換え拠点として毎日多くの利用者でにぎわっている。両線とも外からは電車が見えない地下駅だが、その地上では大阪市中心部の南北を貫くメインストリート、御堂筋を挟んで2棟の超高層ビルの建設工事が進行中だ。
駅はその名の通り、土佐堀川にかかる淀屋橋のたもとにある。橋の北側は、土佐堀川と堂島川に挟まれた中之島。御堂筋の東側に大阪市役所や府立中之島図書館、中央公会堂、西側に日本銀行大阪支店が建ち並ぶ大阪の経済・行政の中心となっている。
今も昔も大阪の中心地
南北方向に走る大阪メトロ御堂筋線は梅田、本町、心斎橋、なんば、天王寺といった都心部の主要スポットだけでなく、北は東海道・山陽新幹線が発着する新大阪、さらに江坂から北大阪急行線に直通して千里ニュータウンの中心である千里中央を結んでいる。南は堺市の中百舌鳥(なかもず)で南海電鉄高野線・泉北高速鉄道線と乗り換えられる。
一方、東へ延びる京阪本線はかつての淀川の舟運ルートをなぞるように京橋、枚方市、中書島を経て、三条、出町柳に至る。淀屋橋の隣駅が北浜で、地下通路を歩いているといつのまにか着いてしまうほど、すぐの距離。大阪メトロ堺筋線との乗換駅で、五代友厚の像が立つ大阪証券取引所ビルに直結する。
中之島は江戸時代には「天下の台所」にふさわしく各地から米が集まる蔵屋敷が建ち並んだ一帯。堂島米市場は世界で初めての先物取引市場とされ、もとは淀屋橋南詰、淀屋の店先にあったという。
北浜エリアには、大村益次郎や福沢諭吉らを輩出した緒方洪庵の適塾が国の史跡・重要文化財として残る。オフィス街の中にたたずむレトロな近代建築も見どころだ。最近は比較的手頃な価格で泊まれるビジネスホテルが増えている。
淀屋橋駅周辺の再開発プロジェクトは御堂筋の東西で進む。
東側は、中央日本土地建物と京阪ホールディングスによる「淀屋橋駅東地区都市再生事業」。両社それぞれの所有だった「日土地淀屋橋ビル」と「京阪御堂筋ビル」の敷地を一体化、共同で建て替える。建物は地上31階、地下3階で高さ約150m。2022年7月に新築工事に着工した。2025年5月の完成、同年夏ごろの開業を予定する。
フロアの大部分はオフィス用途で、みずほ銀行が拠点を置く予定。30階は一般来館者も利用可能なフロアで展望テラスを設ける。地下1階で京阪・大阪メトロの淀屋橋駅と接続し、地下通路を一体的にリニューアル。地上部分も「快適でゆとりある歩行者空間を確保する」という。
京阪の担当者は「両社の敷地を共同で開発することで、御堂筋の玄関口にふさわしい施設とすることを目指すとともに、本件開発に合わせて地下コンコースの美装化など駅の整備を通じて、エリアの価値を高めていきたい」と狙いを説明する。
建物の地下1階から地上2階までは吹き抜けの「立体多目的広場」とし、観光情報を提供する場を設けるほか、イベントも開催できるようにする。ただ現時点で「低層部には商業施設を誘致する計画だが詳細は未定」(京阪の担当者)だ。
東西で工事が同時進行
一方、西側では大和ハウス工業や住友商事、関電不動産開発が参加する淀屋橋駅西地区市街地再開発組合が手掛けるオフィスビル。こちらは2022年11月、新築工事に着工した。2025年12月に竣工、2026年の開業を予定する。地上29階、地下2階で高さは約135m。地下1階で淀屋橋駅と直結する。
西地区の一角では2021年6月末までミズノの淀屋橋店が営業していた。1927年の完成から1992年まで本社屋だった場所で、同社は再開発ビルに直営店を出店する計画だ。
「御堂筋」という名称は本願寺津村別院の「北御堂」と真宗大谷派難波別院の「南御堂」に由来しており、1923年に第7代大阪市長となった関一(せき・はじめ、1873~1935年)が名付けたという。関は地下鉄御堂筋線の生みの親でもある。
1920年、御堂筋には都市景観を守る狙いで建物の高さを31mとする「百尺制限」が設けられた。1995年に土佐堀川通―中央大通(船場中央)間でビル正面の高さを50m(後方は60m)に緩和。2000年代に入ると条件付きでこれを超える高さの建物が認められるようになった。
東側の京阪・日土地共同によるオフィスビルは高さ50m地点の「基壇部の軒線」で御堂筋のほかの建物と統一感を持たせる。西側に建設中のビルは御堂筋側の高さ50mの11階部分に屋上庭園、カフェラウンジなどの眺望テラスを設け、一般にも開放する計画だ。
京阪にとって「最重要駅の1つ」
2023年は、大阪メトロと京阪、それぞれの淀屋橋駅にとって90周年、60周年の記念の年。前身の市営地下鉄の御堂筋線は1933年5月20日に梅田―心斎橋間で開業。一方、京阪本線は1963年4月16日、それまでの起点だった天満橋から西へ地下線が延伸、北浜、淀屋橋両駅が誕生した。
京阪ホールディングスは3月30日に公表した京阪グループ長期経営戦略・中期経営計画で、淀屋橋のビル共同建て替えを重点施策「大阪東西軸復権」の1つに挙げた。京阪の担当者は「当社にとって大阪中心部である淀屋橋への延伸は開業以来の悲願だった。現在も御堂筋線と接続し、オフィス街の中心に位置する同駅は大阪側の起点駅として当社で最も重要な駅の1つ」と位置づける。
大阪市内には、阪急電鉄と阪神電気鉄道のターミナルがある梅田、南海と近畿日本鉄道・阪神が乗り入れる難波の2大繁華街がある。南北の両エリアを結ぶ御堂筋沿いでは、ほかにも高層ビルの計画が進行中。淀屋橋はその玄関口として改めて存在感を示すことになりそうだ。
(橋村 季真 : 東洋経済 記者)
05/17 04:30
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