「彼は既婚」37歳女性が落ちた婚活パーティーの穴
婚活パーティーのここが利点
婚活パーティーは、1人対多数の出会いだ。お見合いだと1人にしか会うことができないのだが、パーティーなら一度に多人数の異性と出会える。パーティーは2時間程度の尺で開催されることが多いのだが、10対10なら、2時間の間に10人の“結婚したい”と思っている婚活者に出会うことができるのだ。
お見合いやアプリの出会いは、まず条件から入る。プロフィールには体温がなく情報だけなので、自分の理想や条件で相手を決めてしまう。
男性の場合、自分が40代後半、50代なのに、女性を35歳くらいまでに設定していて、同世代や年上は嫌がる傾向にある。ところが、パーティーで出会った女性が若々しかったり、見た目がタイプだったり、話した時の印象が良かったりすると、同じ歳や年上でも、マッチングシートにその女性の番号を記入する。
女性は女性で、なるべく年齢の近い男性、もしくは年下と結婚したいと思っている。男性のプロフィールPR欄に、“若々しく、エネルギッシュな行動派です”と記されていたとしても、10歳以上年上の男性からのお見合いは、なかなか受けようとしない。ところが、パーティーならば、目の前に現れた男性が若々しく、飲み物や料理をさりげなく持ってくるような気配りをしてくれたら、そこでいいなと感じて、マッチングシートに男性の番号を書くかもしれない。
以前、私の会員男性であるのぶお(仮名、31歳)が、えいこ(仮名、39歳)と、ある婚活パーティーでマッチングしたことがあった。結婚相談所主催のパーティーの場合、マッチングすると登録サイトを通じてプロフィールの交換をし、改めてお見合いをする。
プロフィール交換をしたときに、えいこの仲人から電話があった。
「私の会員女性は8つも年上です。(筆者の会員である)男性様、年齢を知らなかったんじゃないかしら。マッチングしていますが、お見合いはしないでお断りいただいてもいいですよ」
私がのぶおに確認すると、彼は言った。
「彼女の年齢は最後のフリートークのときに話していたので、知っていますよ。すごく明るくて感じのよい女性だったし、会話がとても前向きでよく笑う人だったんです。こんな人と結婚できたら、家庭が明るくなるだろうなと思って番号を書きました」
そしてお見合いをし、交際になり、2人はあっという間に結婚をした。パーティーでは、こうしたミラクルも起こるのだ。
身分確認が甘いパーティーは注意
ただ、婚活パーティーに参加するときに、注意していただきたいこともある。結婚相談所が主催するパーティーは、相談所所属の会員や仲人が身分を証明書などでチェックしている人たちが参加するので、全員が独身だ。しかし、それ以外で開催されている婚活パーティーの中には、参加するときに身分証明書を提示しなくていいケースもある。
入口で身分証を提示するパーティーだったとしても、免許証や健康保険証やパスポートには、独身か既婚かの記載がない。つまり、既婚者でも独身を装って参加ができる。
ことに、保険証の場合は写真がないので、年下の友達や会社の後輩のものを借りれば、年齢を誤魔化すこともできる。成婚退会をしたよしこ(仮名、当時37歳)が、入会面談に来たときにこんな話をしてくれた。
彼女は、とあるイベント業者主催のパーティーに参加した。そのパーティーは、入口で身分証明書を提示する必要があった。参加者は自分でつけたニックネームの名札をつける。そのパーティーでマッチングしたのが、「3つ下」のあきのり(仮名)だった。
「それをきっかけに、お付き合いするようになりました。彼は、都内の1DKに一人暮らしをしていて、そこにも遊びに行くようになりました」
当然、男女の関係にもなった。あるとき、彼がシャワーを浴びている間、部屋でくつろいでいたよしこがふと棚を見ると、彼の健康保険証と会社の給与明細が無造作に置かれていた。保険証を手に取ると、自分よりも3つ年下のはずのあきのりの生年月日は、自分よりも「3つ年上」になっていた。さらに、いけないとは思ったが給与明細も見た。すると、そこには扶養家族がいた。
呑気にシャワールームから出てきたあきのりに、保険証と給与明細を差し出し、「これ、どういうこと」と迫った。動かぬ証拠をつかまれ観念したのか、パーティーには、会社の後輩の保険証を借りて参加したこと、実は結婚していて単身赴任をしていることを白状した。
「すっかり騙されていました。でも、早めにそれがわかってよかったです」
この一件があって彼とは別れ、よしこは結婚相談所に入会した。
相談所は、入会するにあたって身分証明書や独身証明書、短大卒以上は卒業証明書、所得証明書、資格を有する職業についている者は資格証明書を提出しなければならない。彼女が活動場所に結婚相談所を選んだのは、プロフィールに記載された情報にウソがないと思ったからだ。
先日、男性9人・女性9人の婚活パーティーが開かれた。最初に1人ずつ、自分の番号、名前(名字のみ)、趣味などを盛り込んだ自己紹介の時間があった。そのときになされた自己紹介なのだが、あなたはこれらを聞いて、どう感じるだろうか。
「1番のさとう(仮名、女性)です。公務員として働いています。今、料理教室に通っています。まだまだ下手くそですが、これから料理のレパートリーをどんどん増やしていって、結婚したらおいしい手料理をたくさん作りたいと思います」
「5番のいいづか(仮名、女性)です。メーカーで働いています。お酒が飲めないのですが、おいしいものを食べにいくのと、車の運転が好きです。車で出かけて男性がお酒を飲んだとしても、私が運転をしますよ」
「8番のよしだ(仮名、男性)です。自営業で本当に小さな会社をやっています。繁忙期もありますが、時間のやりくりは上手なほうなので、デートの時間は作りますよ」
「4番のおおたです(仮名、男)。SEをやっています。会社には女性が少なくて、なかなかいい出会いもないままにここまできてしまいました。趣味は旅行です。学生時代から、バックパッカーでいろいろな国を旅してきました。あ、でも、女性って貧乏旅行は嫌いですよね」
「9番のよしもと(仮名、男)です。商社に勤めています。景気も悪いので仕事も大変です。こういうパーティーに参加するのは初めてなので、うまくしゃべれないかもしれませんが、よろしくお願いします」
自己紹介でこれだけ違う
1番と5番の女性、8番の男性は自己紹介が前向きだ。「料理はまだ下手だけれど、これからレパートリーを増やしたい」「お酒は飲めないけれど、男性がお酒を飲んだら代わりに運転は私がする」「自営業で忙しい時もあるが、デートの時間は作り出す」など、自分ができないこと、苦手なことをポジティブな内容に変換して話を終わらせている。
ところが、4番と9番の男性は、話の内容がネガティブな方向に着地している。
例えばだが、4番の男性だったら「女性は貧乏旅行が嫌いですよね」で結ぶのではなく、「今まで貧乏旅行しかしたことがなかったので、新しい旅行のスタイルを女性に教えていただけたら、また別の楽しみが見つかると思っています」としめくくれば話の印象が変わる。
9番の男性も、「景気が悪いので仕事が大変」と言うのではなく、「景気が悪い中でも、頑張るエネルギーだけは人一倍持っています」と、最後をポジティブに変換したら、相手に伝わる印象もよくなる。
また、「次から次へ、いろいろな人と話すから、誰が誰だかわからなくなった」と感想をもらす人が多いのだが、そうならないようにするために、番号、その人の特徴、印象に残った会話内容をメモしておくといい。例えばこんな感じだ。
<1.黒ぶち眼鏡→公務員、映画好き/2.黄色ネクタイ→SE、家は横浜、ゲーム><1.白ワンピ→看護師、お菓子づくり/2.赤スカート→保険会社、旅行、犬好き>
自分が見たときにわかればいいので、印象に残った単語をメモしておく。そして、印象がすごくよかった人には◎、普通に話せた人には○と印をつけておく。◎の人には、フリータイムになったら話しかけてみる。
お見合いトークとパーティートークは違う。
パーティーは短時間に大勢の人と話すので、どれだけ印象に残る会話ができるかが重要だ。また、女性と男性とでは会話の仕方が違う。女性は、男性にいい印象を与えるために“寄り添いの会話”をする。対して男性は、女性に対して“称賛の会話”をする。
男性の仕事がコンピューター関係だったとする。それを聞いた女性が、「コンピューター関係のお仕事なんですね。すごーい。私、パソコンのハード部分は超苦手で。新しいパソコンを買うと、初期設定とかも自分じゃできないんですよ。そういうのをスイスイやってくれる男性って、横で見ていたら素敵だなと思っちゃいます」。
男性の趣味が旅行で、最近京都に行ってきたという話になったら、「京都? 私も大好きです。神社仏閣をめぐると気持ちも落ち着くというか。コロナもあって、もう3、4年行ってないから、行ってみたいなぁ」。
ポイントは、“男性が言ったことと同じ行動ができたら楽しい。うれしい”と、寄り添うことだ。ここでは、「あなたにパソコンの初期設定をしてほしい」「あなたと一緒に京都に行きたい」と言っているわけではないのだが、言われた男性は、目の前の女性がタイプだったりすると、それを自分に置き換えた想像する。
男性はとにかく女性を褒める会話をする。
「趣味は料理です」と言ったら、「料理が得意な女性っていいですよね」と褒める。「料理が得意なんですね。〇〇さんが作った手料理を食べてみたいなぁ」はNGだ。「週一で、ヨガをやっています」と言ったら、「だからスタイルがいいんですね」と褒める。「ヨガですか。今度僕にも教えてください」は、NG。
“寄り添ったり、褒めたり、そこまで媚を売らなくてもいいのでは?”と思う人もいるかもしれない。しかし、パーティーは大勢の中で、より印象を残せるかどうかが勝負なのだ。
お見合いの1対1の会話よりも、多少あざといくらいのほうが、相手の記憶に残る。そして、10対10のパーティーだったら、10人に名前を書いてもらう気持ちで臨む。全員に名前を書いてもらっていたら、自分がいいなと思って名前を書いた人とは、必ずマッチングすることになるのだから。
パーティーで受けない人の特徴
私は、仲人としてこれまで多くの婚活パーティーに立ち会ってきた。そんな中で、マナー違反な人たちがいる。これは女性に多いのだが、会場に入った瞬間、集まっている男性陣をスーッと見渡し、そこから仲人のところに駆け寄ってきて言う。
「ムリです。誰もいません。もう帰りたい」
こうした女性は、男性陣からも「ムリ」だと思われている。パーティー終了後にマッチングシートを見てみると、誰もその女性の名前を書いていない。つまり、誰からも選ばれていないのだ。
男性で多いのが、照れからなのか、“仲人に参加しろと無理やり連れてこられました”という体で参加している人。ちっとも楽しそうではないし、無愛想で、女性を上から目線で品定めしている。
こうした男性は、マッチングシートに誰の名前も書かない。備考欄に「オファーがあったら考えます」と記入したりするのだが、女性陣からのオファーは1つもない。
婚活パーティーは、自分のコミュ力を磨ける場でもあるし、試せる場でもある。ここで出会って結婚しているカップルも多い。多少のノウハウは必要だが、「出会いがない」と嘆いていてもなにも始まらない。気になるようであれば、ぜひ一度参加してみてはいかがだろうか?
(鎌田 れい : 仲人・ライター)
04/27 10:30
東洋経済オンライン