東京の赤羽エリア「億ション」開発続々の舞台裏

首都圏の新築マンション価格はバブル期の最高値を上回る

「『あの赤羽の案件を落札した』と、三菱地所の社員はしたり顔でしたよ」。都内の不動産売買会社の幹部は苦笑する。

「あの案件」とは東京都北区とUR都市機構が2020年3月に売り出した土地のことだ。正式名称は「赤羽台周辺地区中高層住宅複合B地区」。赤羽台東小学校跡地の一部とUR都市機構の敷地からなる広大な土地で、敷地面積は約1・3万平方㍍にのぼる。

入札には大手デベロッパー7グループが参加

ターミナル駅であるJR「赤羽」駅から徒歩およそ4分という好立地の大型複合開発用地のため、デベロッパーの用地仕入れ担当者は一様に熱い視線を注いだ。

週刊東洋経済 2023年1/7-1/14【年始合併特大号】(熱狂のマンション 崖っぷちの戸建て)

激しい競争を勝ち抜いたのは三菱地所グループだった。2022年10月、三菱地所レジデンスは住友商事や近鉄不動産とともに土地譲受事業者に選定された。地上29階・地下2階の大型複合施設(延べ床面積約5・9万平方㍍)を建設する予定で、分譲マンション553戸の他、クリニックなどの生活利便施設なども誘致する。 

複数のデベロッパー関係者によると、住友不動産や東京建物を始めとする大手デベロッパーなど計7グループが入札に挑んだ。ただ審査途中で5グループがふるい落とされた。最終的には三菱地所レジを中心とするグループと、大手ゼネコンの長谷工コーポレーションの一騎打ちになったようだ。

ある大手デベロッパー関係者は「三菱地所のグループより高い入札金額を提示した事業者は阪急阪神不動産など複数いたが、なぜか落とされた」と首をかしげる。「開発計画の提案で差があったのだろう」(別の大手デベロッパー関係者)とみる向きもある。

三菱地所レジデンスのグループが赤羽で獲得した開発用地

三菱地所レジデンスのグループが赤羽で獲得したマンションの開発用地(記者撮影)

気になるのは、三菱地所レジらが手がけるタワーマンションの販売価格だ。複数のデベロッパー関係者は「だいたい坪単価480万円での販売を検討している」と証言する。70平方㍍(約21坪)換算するとまぎれもない「億ション」である。

「億ション計画」はほかにも複数ある

赤羽はこれまで、新築マンションは最高価格でも坪単価300万円台で推移してきた。駅周辺には都内でも屈指の飲み屋街があり、住宅環境は良好とは言えない側面もあった。ただ、東京駅まで20分以内で異動できる交通利便性が過小評価されてきたとも言える。

2023年5月で閉店する西友赤羽店

赤羽駅周辺で関係者の耳目を集めるのは、西友の本拠地の閉店後の開発だ(記者撮影)

2023年に竣工予定の物件で、新築マンションの相場はようやく坪単価400万円台に届く。

三菱地所レジデンスが開発した「ザ・パークハウス赤羽フロント」は坪単価400万円弱、住友不動産の「シティテラス赤羽 THE EAST」も坪単価400万円超とみられる。三菱レジが提示する「坪単価480万円」は、そうした赤羽駅周辺の相場を1~2割引き上げる「新価格」だ。

「億ション計画」はこれだけではない。赤羽駅周辺ではほかにも、再開発案件が複数ある。関係者の耳目を集めるのは小売り大手の西友の本拠地だ。新相場を形成する新たな激戦区。赤羽エリアの動向から目が離せない。

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(佃 陸生 : 東洋経済 記者)

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