初婚中年男性と見合いを続けた女性の「最終結論」

結婚するなら初婚の人がいい。そう思って婚活を始めた女性が出した結論は――(写真:Kazpon/PIXTA)
“社会に出たら、次は結婚をする”という図式は、昭和の時代に消えてしまった。上司が部下に「そろそろキミも結婚したらどうだ」と言おうものなら、パワハラ、モラハラの大問題となる。結婚するもしないも、個人の自由。今や結婚は、個人が選択する時代だ。しかし、そんな時代になったからこそ、その気になったら簡単にできると思っていた結婚が、なかなかできない。ことに歳を重ねた初婚者たちの結婚は、難しい。
仲人として婚活現場に関わる筆者が、婚活者に焦点を当てて、苦労や成功体験をリアルな声とともにお届けする連載。今回は、なぜ歳を重ねた初婚者たちの結婚が難しいのか。その問題点を探りたい。

令和元年の初婚平均年齢は、男性が31.2歳、女性が29.6歳だった。これが24年前の平成7年は、男性が28.5歳、女性が26.3歳と、男性は2.7歳、女性は3.3歳上がっている(厚生労働省調べ)。

10代で結婚する人もいれば、年齢が上がってから結婚する人もいるので、平均値はあくまで平均値。若くして結婚する人が減ったというよりも、40代~60代の初婚者が増えたために、跳ね上がった数字なのではないか。

仲人の肌感覚でいうと、コロナになってから、40代~60代の婚活者が、初婚再婚ともに増えた。ただこの世代は、婚活で結婚するのが非常に難しい。なぜなら独身者(ことに初婚者)は、1日24時間、仕事以外の時間を自分で自由に使えるので、年齢を重ねるとともに自分のライフスタイルや価値観が自然とできあがっている。

再婚者にしても、パートナーや子どもと一緒に暮らした経験はあるものの、離婚してからの独身生活が長くなると、やはり自分の生活スタイルができている。

そうした人たちが出会い、お互いを認め合い、価値観をすり合わせ、好意を抱いて結婚していくのは、至難の業なのだ。

不倫で終わった30代

よりこ(仮名、46歳)は、1年ほど前に入会した初婚者だ。

「30代から付き合っていた男性もいたのですが、家庭がある人だったので、結婚できなかったんです。不倫を引っ張って40歳を超えてしまったのですが、あちらのお嬢さんが受験生になったタイミングで、別れる決断をしたんです。会うとお嬢さんの話ばかりするので、それがとてもつらくなってしまって」

そこからしばらくは、仲のいい独身の女友達と旅行に出かけたり、趣味を楽しんでいたりした。しかし、コロナになって行動規制がかかったときに、急に心細くなった。そこで、真剣に結婚を考えるようになったという。

入会面談では、こんなことも言っていた。

「お相手は、できれば初婚者がいいです。再婚者でも、お子さんがいない人。夫婦は離婚すれば他人だけれど、子どもは違う。離婚しても親子の縁は切れない。前の経験があるから、お相手がお子さんの話をしたら、そこにジェラシーを感じてしまうと思うんですね」

まずは交際してみます

こうして、まずは同世代の初婚者にターゲットを絞り、見合いをしていくことにした。最初に見合いしたのは、金融関係の仕事をするひろゆき(46歳、仮名)だった。

「生まれて初めてのお見合いでしたし、1時間お話ししたくらいではお人柄もわからなかったので、まずは交際してみます」

ひろゆきからも交際希望が来て、2人は仮交際へと進んだ。ところが、最初のデートをして、よりこが交際終了を出してきた。

「デートのお店選びも、待ち合わせ場所も、すべて私に丸投げでした。『僕ははやりの店を知らないので、おすすめのところがあったら、連れて行ってください』って言われて」

そこで、よりこはリーズナブルなイタリアンの店を選んだ。もしかしたら、ごちそうになるかもしれない。そんなときに、負担が大きくなるのは、申し訳ないと思ったからだ。

「“ごちそうになるかも”というのも、取り越し苦労でした(苦笑)。会計のときになったら、伝票を見て『7000円ちょっとだから、3500円ください』って言われたんです」

また、食事をしているときの会話もまったく噛み合わなかったという。

「お見合いのときから気にはなっていたんですが、話が膨らまないんです。例えば『これまでどんなところに行かれたんですか?』と聞かれたので、『国内だったら温泉地巡りが好きです。コロナになる前は、年に1回は海外にも出かけていました』と言ったら、『ああ、そうですか。僕は海外には一度も行ったことないな』。これで旅行の話は終わってしまった」

こんなふうに会話は、どんな話題も一問一答形式だったという。

「趣味の話になったときも、『私、パン教室に行っていたことがあって、一時期パン作りにハマっていたんですよ』と言ったら、『そうですか。僕はパンは店でしか買ったことないです』で、話が終わってしまって。ここで『パン教室って、どんなことをするんですか?』とか『何のパンを焼くのが得意ですか?』とか聞いてくださればいいけど、続く質問がなく、まったく違う質問をしてくるんですね」

次から次へと質問が繰り出されて、話題もすぐに尽きてしまった。しかし、話がお金のことになると状況が一変した。

「貯蓄の話になって、投資の話になったら、そこにすごく食いついてきて。私、投資なんてチンプンカンプンで、聞いていても面白くない。『あ、そうですか』『なるほど』と適当に相槌を打っていたんですが、なかなかその話をやめない。私、かなりつまらなそうな顔をしていたと思うんですけど、その私の表情も読み取れない」

結局、その投資話を15分近く聞かされることになった。

「ひろゆきさんって、今まで女性と付き合った経験がない気がします。経歴は立派だし、年収もしっかりある。あの様子だと貯金もかなりしている。結婚したら経済的な心配はないでしょうけど、あまりにもコミュニケーションがすれ違っていた。この人と結婚しても、毎日が楽しくないだろうなと思いました」

子ども部屋おじさんだった

次に見合いしたのが、メーカー勤務のつねお(50歳、仮名)だった。お見合いを終えて、こちらは、よりこが交際辞退を出してきた。

「典型的な子ども部屋おじさんでした」

子ども部屋おじさんとは、数年前にネットで話題になった実家暮らしの中年男性のことだ。ニートや引きこもりとは違って、仕事はちゃんとしている。なかには、会社でいい役職についている男性もいる。ところが、一度も実家を出たことがなく、子どもの頃から使っている部屋に暮らし、小学校のころに買ってもらった学習机や本棚やクローゼットに囲まれて生活をしている。

よりこは続けた。

「身のまわりのことは、お母さんがやっているようでした。会社を終えて家に帰れば夕食もできている。お風呂も沸いている。洗濯物は出しておけば洗っておいてもらえる。『親もいつまでも元気じゃないですし』と何度か言っていました。もし結婚したら、私を母親代わりというか、家政婦代わりにするのだと思います」

さらに、つねおを結婚相談所に登録したのは、母親だったという。

「お母さんが、大手結婚相談所の親を対象にした入会説明会に行ったようです。彼が最初入ることを渋っていたら、お母さんが『入会金くらいは、私が出してあげる。親は先立つものだから、このまま独身でいられたら心配だ』と言われたそうで。50歳にもなって、年老いた親のお金で婚活を始めるって、どうなんでしょうか。小学生の習い事じゃあるまいし」

よりこは、大きなため息をついた。

次に見合いしたのは、公務員のかつや(56歳、仮名)だった。

「10歳年上で、今までお会いした人たちのなかでは、年が一番離れていたけれど、一番お話しができたお相手でした」

そう言って交際希望を出し、かつやからも交際希望が来たので、交際になった。そして、その日からショートメールが毎日来るようになった。最初のデートも週末にすることになった。

ショートメールが来るようになって3日目のこと。よりこが「ショートメールではなく、LINEに切り替えませんか?」と提案した。するとこんな返事が返ってきた。

『LINEは使ったことがありません。どうやってつないだらいいのかもわからないので』

そこで、週末初めてのデートをしたときに、よりこがLINEのつなぎ方を教えた。そのときのデートは2時間程度の食事をし、楽しく会話をして無事終了。このとき、かつやが「LINEのやり取りだけではなく、週の半ばは電話で話しませんか?」と言ってきたので、了解した。

おじいさんと話しているみたい

そして、週半ばに電話がかかってきたので、よりこが気を利かせたつもりで言った。

「これからLINE電話にしましょう。LINE電話なら無料ですし」

すると、またも時代遅れな発言をしてきた。

「この間LINEをよりこさんに教えてもらったばかりで、LINE電話は一度も使ったことがありません。電話回線ではないものの電話って、声が聞きづらいんじゃないですか? 音声がプツプツと途切れたりしませんか?」

よりこは、「私は、LINE電話で海外の友達とも話をしているし、声が途切れたりすることもありません」と言ったのだが、「不安なので通話料がかかってもいいから、電話回線で話しましょう。僕がよりこさんにお電話しますよ」と言われたそうだ。

さらに週末は、郊外の自然公園に出かける約束をしていた。すると、前の日にこんなLINEが来た。

「明日はたくさん歩くと思うので、動きやすいようにズボンとスポーツシューズでいらしてください。僕は今日マッサージに行って、体調を整えてきました」

この2度目のデートが終わった後に、よりこは交際終了を出してきた。

「お人柄が良い方なのはわかる。ただ歳を感じさせる発言が多くって。おじいちゃんと話しているような気持ちになるんです。人としては好きになっても、男性として好きにはならない気がしました」

さらに、こんなことも言った。

「私、今回婚活を始めてみて、改めて自分のまわりにいる独身の40代、50代を見返してみたんです。初婚の人たちに限って言うと、女性は女同士で観劇に行ったり、旅行に行ったり、食事に行ったり生活を楽しんでいる。習い事をしている女性も多いですよね。ところが、初婚の男性って人とツルまない。友達もいない。家と会社をただ往復しているだけの変わった人が多いなって思いました」

中年以降、男女で異なるコミュ力

もちろん、すべての中高年初婚者に当てはまるわけではないのだが、よりこが言っていることも一理あるだろう。

以前、『話を聞かない男、地図が読めない女』という本がベストセラーになった。これは、男性脳と女性脳の違いについて書かれた本だ。太古に男の役割は、狩りに出かけて獲物をとらえること。いつ獲物に殺されるかわからない状況のなか、ムダなおしゃべりをする余裕などなかった。

一方、女はその間、女同士で集落を作り、男が帰ってくるのを待っていた。そうした集落では、まわりの女たちと衝突せず、空気を読んだコミュニケーションを取りながら、たくさん会話をすることが重要だった。

そんな由来から、“男性は論理的で結果を欲しがり、コミュニケーションを取るのが不得手。女性は直感で人間関係を捉えるので、人とうまくコミュニケーションが取れる“ということらしい。

よりこは、私に言った。

「これまで、バツのある人やお子さんがいる人は、結婚相手から外していたんですが、そちらにも目を向けてみようと思いました。1回結婚できているというのは、1人の女性が過去にその方を選んだということ。あと、お子さんがいるというのは、父親として、お子さんとコミュニケーションを取っていた経験があるということですから」

性別には関係なく、人とコミュニケーションがうまく取れる男性もいるし、物事を論理的に考える女性もいる。性差でその傾向はあるものの、やはりその人次第ということだろう。

しかし冒頭にも書いたが、中高年になると自分の思考やライフスタイルができあがっている。そこが問題なのだ。それを押し付けたり、拒否したりするのではなく、受け入れる気持ちがないと、婚活はうまくいかない。

中高年に限らず、今婚活している人たちは、自分の理想を掲げて“相手を選ぶ”ことばかりを考えていたら、結婚はできない。相手を受け入れる大きな気持ちを持って、“選ばれる自分”になってほしいと思う。

(鎌田 れい : 仲人・ライター)

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