「伸び盛り」の中小型成長銘柄ランキングTOP50

外部環境が厳しい中でも業績好調の上場企業は意外に多い。とくに規模は小さいが中長期的に成長余地が大きい“テンバガー”候補の中小型株に注目したい(写真:CHAI/PIXTA)

企業の成長力が顕著に表れるのが売上高。新型コロナウイルスの感染拡大や地政学リスクの高まり、欧米での景気減速懸念など、ここ数年にわたって外部環境面で厳しい状況が続く中でも、売上高を大きく伸ばしている成長企業は意外なほど多い。

会社四季報プロ500 2023年新春号

12月16日発売の『会社四季報プロ500』2023年新春号では、注目テーマの1つとして「中小型成長株」をピックアップ。平均増収率20%以上の高成長企業や、平均増収率10%以上かつ営業利益の2桁増が続く企業、2021年以降に新規上場した高成長・好業績のIPO(新規株式公開)企業など、さまざまな視点で中小型成長株を紹介している。

今回はこのテーマから、3期前の実績から来期予想まで5期連続増収で平均増収率が20%以上、時価総額1兆円以下の中小型成長企業に焦点を当てたうえ、今期予想営業増益率の高さで上位50社をランキングした。

光回線、電池絶縁材など多彩な顔ぶれ

増益率トップは、月額制の中小企業向け光回線サービスなどを展開する東名。従業員20名以下の小規模企業や個人事業主をメインターゲットに、LED照明や事務機器、ウォーターサーバーなど、顧客の業務効率化やコスト削減を訴求した商材をトータルで提案し、売上高を拡大させている。

利益面では、前期に押し下げ要因となった電力小売り事業が調達価格のリスク低減策により収益が急改善。全社の営業利益は約4倍となる見通しだ。創業者である山本文彦社長は光通信の出身で、大株主にも光通信グループが名を連ねる。

2位は、リチウムイオン電池の絶縁材の専業メーカーのダブル・スコープ。世界的なEV(電気自動車)市場の拡大を背景に、売上高の過半を占める主要顧客である韓国電池メーカー向けに車載電池用の絶縁材が大幅増。電動工具やコードレス家電などのハイエンド電池向けなど民生用途も好調だ。円安の追い風も受けて、今2022年12月期は営業利益が前期の約19億円から70億円へと躍進する予想となっている。

企業から個人向けのSMS(ショートメッセージサービス)の配信代行を担うアクリートが3位にランクイン。個人認証やマーケティングなどの用途が主で、平均増収率51.3%と高い成長が続いている。

とくに足元で伸びているのが、自治体などの新型コロナのPCR検査結果や感染患者への健康状況確認などの連絡手段としての用途。2022年12月期もこうした新型コロナ関連の需要が強く、会社側は8月、11月と2度にわたって従来の業績予想を上方修正しており、営業利益は前期比2.8倍となる見通しだ。

5位のsantecは、光通信関連の研究開発や生産などに使用される光部品事業と、波長可変光源や各種光測定装置などの光測定器事業を展開。光測定器事業は前期買収した子会社の貢献が拡大するほか、産業用で半導体シリコンウエハ製造関連の需要が好調。医療用もアメリカで眼科向けの販売が拡大する。円安も業績の押し上げにつながり、営業利益は前期比2.2倍となりそうだ。

首都圏や近畿圏の高価格帯を中心とする介護付き有料老人ホーム運営で高成長を続けているのが、7位にランクインしたチャーム・ケア・コーポレーション。2005年4月に第1号ホームとなる「チャームやまとこおりやま」を開設以来、着実に運営施設数を拡大。2022年9月末時点では2021年に買収した同業のライク運営分も含め、78ホーム、5000室を超える居室数を展開する。

参入障壁が高く、住宅型老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅と比較して収益性が見込める介護付き有料老人ホームに経営資源を集中していることにより、売上高の拡大とともに利益面でも高い伸びが続く。

今2023年6月期は既存施設の入居率が高水準を維持するとともに、第2の柱と位置づける好採算の不動産事業(自社開発した有料老人ホームなどの売却)の貢献もあり、営業益は87.5%増となる見通し。

成長余地が大きい未来のテンバガー候補

10位以下にも多彩な事業を展開する成長企業が並んでいる。15位のメドレーは、医師や介護職などヘルスケア領域向けの成果報酬型人材紹介を軸に、スマホアプリやビデオ通話機能などを使ったオンライン診療システムや、電子カルテといった領域にも取り組む。

23位のBuySell Technologiesはシニア層の生前整理、遺品整理などを中心に着物やブランドバッグ、ジュエリーなど高単価商材の出張買い取りを展開。買い取り件数が増加していることに加え、1件当たりの金額も上昇傾向にあり、今22年12月期は44.7%の営業増益予想となっている。

31位のSHIFTは「ソフトウェアテストのプロ集団」を標榜し、従来、ソフト開発者が内製で行ってきたテストや品質保証を専門で受託。非IT人材をテスト技術者に育成するノウハウを持ち、拡大するソフトウェアテストのアウトソース需要を取り込んでいる。

32位のMacbee Planetは、独自システムによるLTV(顧客生涯価値)予測をもとに、証券会社の口座開設やエステ店、化粧品ECなど向けにWeb広告による集客支援コンサルを行う。

成熟期に入った大企業と異なり、時価総額がまだ小さい伸び盛りの企業は中長期的な成長余地が大きい。規模が小さいだけに競争環境の変化などにより業績が変調するリスクには注意が必要だが、ランキングに入った中小型成長株から「未来のテンバガー(株価が10倍になること)」候補を探すのも醍醐味だ。

なお、『プロ500』の誌面では、業績やテーマ性、株価の動向などをもとに全上場企業から500銘柄を厳選して掲載。ランキング上位に入った銘柄でも誌面で非掲載となっているものもある。『プロ500』に非掲載の企業については、全上場企業を掲載している『会社四季報』やオンライン版の『会社四季報オンライン』で業績予想の背景などをチェックしていただきたい。

(本記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

(島 大輔 : 『会社四季報プロ500』編集長)

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