ひょんなことから1円で7LDKの家を買った男の話

家投資を始めて自分が好きな地域に家を持つことができれば、金銭面だけでなく、さまざまな面でメリットが生まれます(写真:foly/PIXTA)
現在、全国各地で「空き家問題」が深刻化しています。空き家の増加によって、公衆衛生や治安の悪化など、周辺地域にさまざまな悪影響が出ています。ところが今、その空き家に目を付け、「家投資」に励む1人の男性がいます。その男性の名は永野彰一(32歳)。
永野氏は「山」への投資で注目される若手投資家ですが、現在は「家」への投資を並行して進めており、その体験を『一生お金に困らない家投資の始め方』にまとめて出版しました。なぜ空き家に投資するのか? メリットは? リスクはないのか? 3回にわたり永野氏に聞きました。

僕が「家投資」を始めたのは、2016年9月のことです。今から6年前ですが、現在では、全国各地に複数の家を手に入れて、定期的な家賃収入を得ながら、公私にわたって「多拠点生活」を満喫しています。

これからは家を複数持つ時代

家投資とは、自分が住むための家を格安の値段で手に入れ、その数を増やしていくことで、「多拠点生活」を可能にする投資術です。手に入れた複数の家は別荘として使えるだけでなく、人に貸すことによって、そこから家賃収入を得ることができます。

なぜ複数の家が持てるのかといえば、「空き家の値段が下がっているから」です。空き家とは、誰も買わない、誰も借り手がない家のことです。その多くは日本社会の高齢化が進み、遺産相続によって、子どもや孫が所有しているものですが、彼らは相続した家を少しでも高く売りたい、できるだけ高く貸したいと考えがちです。

その結果、誰も住まない家が全国各地に急増して、近隣への悪影響などを含めて、社会問題化しているのです。

全国の空き家となった物件は、大幅な値段の下落を余儀なくされており、5万円とか10万円という、ちょっと無理をすれば手の届く金額で売られているものも普通にあります。物件によっては、1円とか10円で売りに出されているものもありますから、複数の家を持つことが、頭で想像するほど難しい時代ではなくなっているのです。

僕はこうして値段の下がった家を探し求めて日本中を駆け回り、全国に多くの物件を所有しました。自分が住むことを目的とした家は、北海道、新潟、長野、東京、愛知、京都、福岡などの全国7カ所にあり、各地に物件の下見に行く際の、活動の拠点として使っています。

家投資のスキーム(枠組み)を簡単にまとまると、次のようになります。

【STEP①】複数の「空き家」を安く入手する
  ↓
【STEP②】自分が住む家&「別荘」として活用し、「多拠点生活」を楽しむ
  ↓
【STEP③】自分で使わない家を「賃貸住宅」として貸し出す
  ↓
【STEP④】「家賃収入」が得られる
  ↓
【STEP⑤】「自宅」+「別荘」+「家賃収入」が手に入る

家投資を始めて自分が好きな地域に家を持つことができれば、金銭面だけでなく、さまざまな面でメリットが生まれます。

家投資で生まれるメリット

例えば、ここ数年、日本全国で大地震や集中豪雨などの自然災害が多発しています。日本の各地に複数の家を持つことは、自分の身を守ることにつながります。危機管理の面から見ても、大きなメリットがあるのです。この先、万が一の事態が起こっても、別の場所にも住む場所があるという安心感は、何物にも代えがたいものがあります。

また、都会暮らしの人でも、いい環境で過ごせるのもメリットです。コロナ禍によってリモートワークが定着したことで、東京にいなければ仕事ができない時代ではなくなりました。どこにいても仕事に支障がないならば、物価が高く、人が多い環境にしがみつく理由はありません。

完全に移住するとなると大胆な決断が必要になりますが、好きなときに、好きな場所で気軽に過ごすことができる……という選択肢を手に入れれば、物価が安く、緑が多くて、空気もきれいな場所で、充実した時間を送ることが意外に簡単に可能になります。現在、東京で暮らしている人ほど、経済的にも精神的にも大きなメリットが得られるということです。

とはいえ、そもそも論として、「人が住んでいない空き家を手に入れても、それを借りる人など、本当にいるのか?」という素朴な疑問を持つ人もいることでしょう。その疑問に対して、僕は自信を持って、人が「住まない」から空き家になっているのではなく、人が「住めない」から空き家になっているんです……と答えることができます。

僕はつねに全国各地の空き家を見て回っていますが、自分の感覚でいうと、大半は貸せない状態にあると思っています。地方に空き家を内覧に行っても、カギを渡されて、その日から住めるような家は、ほとんどありません。

その原因は、空き家の大部分を「遺産相続」によって所有者となった人が占めていることと、密接に関係しています。遺産相続で故郷にある実家などを譲り受けた人は、自分が住んでいなくても固定資産税が発生しますから、早く何とかしたいと考えます。

できるだけ早くと思いながらも、それは親が残してくれた「遺産」ですから、できれば高く売りたいという欲が出ます。欲を出して高く売ろうとするから、いつまで経っても買い手がつかず、家がだんだんと古くなってしまい、気がついたときには、人が住めない空き家になっているのです。

家というのは、どれだけ古くても、どれだけボロ家であっても、「人が住める状態」であれば、売ることも、貸すこともできます。古い家であれば、手を入れてレトロ感のある店を開くために買ってくれる人がいます。賃貸であれば、格安の家賃にすることで、住みたい人が出てきます。ニーズがないのではなく、ニーズの受け皿になっていないから、買い手も借り手もつかないということです。

実際、僕が全国各地に持っている数百軒の家のなかで、賃貸人が住んでいない未入居状態の家は、ほんの数軒しかありません。それは、自分でできる範囲のリフォームは業者に頼まず、僕がコツコツと改修に回っているためで、そこまで手が回っていない家に限られています。

リフォームせずに貸せた!

実際に僕が投資している物件を1つご紹介します。この家は、ネットの「空き家バンク」で見つけて1円で買いました。山形県の南部にある人口1万5000人ほどの小さな町にある物件です。

この家のいいところは、2階建て7LDKの広さがあり、クルマが3台も入るガレージ付きの駐車場があることです。ラッキーだったのは、和室の畳なども新品同様の状態なので、リフォームする必要がなかったことです。

実は、この家を買う時に町のことを調べていたら、あることに気づきました。この町には、賃貸住宅がほぼ1軒もないということです。地元の人に話を聞いてみると、「このあたりは借りる人がいないから、賃貸はできませんよ」と教えてくれました。

しかし、家賃4万3000円で募集を出したところ、すぐに6人家族が入居してくれました。これまでに何度か入れ替わっていますが、そのたびにすぐに入居者が決まっています。

すぐに入居が決まる理由は、家賃でも2階建て7LDKいう広さでもなく、単純に「他に賃貸住宅がない」ということのようです。

「賃貸できない地域」といわれているのは、借り手がいないとか、賃貸需要がないからではなく、賃貸物件がないから、そういわれているだけのことです。都会に住んでいる人は、「地方ではあまり人の移動がないだろう」と考えがちです。この町のケースで考えても、小学校や中学校の先生などは転勤が多いですから、つねに賃貸住宅を探している状態でした。

家投資を進めて、賃貸住宅として人に貸し出す際には、最初から賃貸住宅がないエリアを探して買うのも、有効な作戦のひとつだと思います。僕も、そうした視点で家を探して、実際に人に貸している家が全国に何軒もあります。

不動産会社などは、確実に賃貸需要が見込めるエリアを狙って物件を探していますから、その「逆張り」をすることが効果を発揮するのです。

(永野 彰一 : 投資家・事業家)

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