「双子パンダ」もうすぐ親離れ?抽選なし観覧開始

上野動物園の双子パンダを見る人だかり

抽選なしで観覧できるようになった初日の2022年10月4日。左から、雄のシャオシャオ、母シンシン、雌のレイレイ(筆者撮影)
上野動物園で生まれた双子のジャイアントパンダの観覧で抽選制が終わりました。でも、この場所で双子を観覧するのは、あと3カ月足らずかもしれません。

10月4日から抽選制が廃止された

東京・上野動物園で初めて生まれた双子のジャイアントパンダ、シャオシャオ(暁暁)とレイレイ(蕾蕾)、そして母シンシン(真真)の母子3頭の観覧は、10月4日から抽選制が廃止され、列に並んだ順に観覧できるようになった。

抽選期間は約8カ月間に及んだ(新型コロナウイルス対策の約2カ月間の臨時休園を含む)。双子の姉のシャンシャン(香香)の抽選期間は約1カ月半、先着順の整理券制が約4カ月間だったので、比べると長い。「双子ということもあって、より慎重に見極めました」(上野動物園の大橋直哉教育普及課長)。

10月4日は、午前9時30分に開園してから、3頭の公開が始まる10時までの間、観覧待機列に並んだのは350人。この日の待ち時間は最長で1時間となった。

抽選が終わっても、好きな時に好きなだけ観覧できるわけではない。3頭の観覧エリアは4カ所に分けられ、それぞれのエリアで観覧できるのは各1分。4カ所のうち2カ所は外なので、3頭が室内にいれば、ほぼ2カ所でしか観覧できない。観覧者はグループに分けられ、グループごとに移動する。

この方法は抽選制の頃と同じだが、1グループの人数が異なる。抽選時は、もっと少なく、筆者の経験では、ほとんど10人未満だった。それが10月4日以降は「最多で約25人」となる。10月4日午前の取材時に数えたら、15人のケースが多かった。

上野動物園の双子パンダを観覧する人々

10月4日午前10時になり、母子3頭の室内公開エリアへ先頭の観覧者が入場(筆者撮影)

母子3頭の公開は午前10時~午後4時で、観覧列に並べるのは午後3時30分まで。混雑していれば、午後3時30分より前に締め切ることもある。その場合は園内の放送や園の公式ツイッターで知らせる。

3頭を観覧できる1日の最多の人数は、抽選時は4400人(2022年1月12日~14日は1080人、2022年3月25日~4月3日は2800人)だった。当選しても来ない人がいるので、実際の観覧者はもっと少ない。10月4日以降は、あくまで理論上だが7200人ほどに増えると上野動物園は試算している。

シャンシャンの観覧方法とかなり違う

母子3頭は上野動物園の西園、シャンシャンは東園で暮らしている。3頭の観覧方法は、シャンシャンと大きく異なる。まず公開の開始時刻。3頭は午前10時だが、シャンシャンは午前9時30分だ。

パンダは朝早いほうが起きている確率が高いので、同園では開園の1時間以上前から並ぶ人が少なくない。30分の差は大きい。3頭の公開を10時からとした理由について、大橋課長は「パンダに負担をかけず、余裕をもって展示を開始する時間です。状況をみながら変えていく場合もあると思います」とす。

観覧方法も異なる。シャンシャンの場合はグループ分けをせず、1列になって歩きながら観覧する。立ち止まることはできない。対して3頭の観覧ではグループで動き、1分間立ち止まれる。

「このほうが、ゆっくり見ていただけるだろうという判断です。本来なら、広い所で自由に見ていただくのがいいのでしょうが。施設の構造上でも、ブロックでの観覧のほうがスムーズにいくかと考えています。ただ、これが絶対に正しくて変わらないわけではなく、実行して不都合なところがあれば変えていく方針です」(大橋課長)

上野動物園パンダの観覧

観覧エリアは4つに分けられ、各1分滞在できる。2022年10月4日(筆者撮影)

双子は2021年6月23日に生まれ、一般公開が2022年1月12日にスタート(参照:『「休園」でも双子パンダ「3日間だけ公開」の舞台裏』)。新型コロナウイルス対策の約2カ月間の休園を経て、3月25日に公開が再開された。

3月25日以降の抽選倍率は、平日が10倍前後、土日祝が20倍前後だった(参照:『「双子パンダ」観覧抽選24倍の日も、狙い目はいつ?』。しかし最近は倍率が低下。抽選観覧で最後の1週間の平均倍率は、平日の9月27日~30日が約1倍、土日の10月1日~2日が約4倍だ。

ただし、時間によってバラつきがあった。一番人気は、最も早い「午前10~11時」の枠。この枠の抽選倍率は、最近でも平日が約5倍、土日祝日が約20倍に上った。人気の理由は、双子が起きている確率が高いためだ。

さらに、夏の間、冷房のきいた室内で過ごしていた双子が、9月21日から気温の低い午前中に外へ出るようになったのだ。外は室内に比べ、反射による映り込みが少なくて観覧・撮影しやすい。

ちなみに3頭が暮らす室内の映り込みは、なかなか激しい。10月4日は初めて、観覧者を入れた状態で報道関係者に公開された。映り込みに驚いた報道カメラマンたちから「出入り口の扉を閉めてほしい」との声があがったが、観覧者が出入りするたびに扉を開け閉めするわけにはいかず、できなかった。

当初、レイレイは室内に戻りたそうにしていた

夏が過ぎ、久しぶりに外に出るようになった双子。上野動物園によると、レイレイは当初、室内に通じる扉の前から離れず、室内に戻りたそうにしていた。しかしシンシンが外に出てくると、すぐ近寄った。

シャオシャオは外に出てすぐ木に登り、しばらく下りなかった。その後は双子同士でじゃれ合うなどして過ごし、シンシンが室内へ戻ると、双子も後を追って室内に戻った。

上野動物園のパンダ

シンシンが双子に授乳しているのかもしれない。2022年10月4日(筆者撮影)

まだまだシンシンに甘えているように見える双子だが、着実に成長している。9月26日の体重は、シャオシャオが36.1kg、レイレイが37.2kgだ。レイレイは7月27日ごろから糞に竹片が混ざるようになったので、竹を食べ始めたと職員は判断した。しかも9月27日時点では、竹の葉だけでなく、堅い稈(かん)も食べている。

シャオシャオは、9月24日に竹の葉が主体の糞を出したため、竹を食べ始めたと判断された。レイレイより2カ月ほど遅いが問題ない。双子で似た環境で育っても、意外と個体差がある。顔や性格の違いも出てきている。

上野動物園によると、180日齢の時の顔立ちは、シャオシャオはくっきりと整っており、レイレイはやわらかい雰囲気。性格は、シャオシャオは物事の変化に対し敏感で繊細、レイレイは物怖じせずに何事もさらっとこなしたそうだ。

双子はもうすぐ親離れの時期を迎える。近年、日本で生まれたパンダは1歳~1歳半で親離れすることが多い(参照:『和歌山のパンダ「ひとり立ち」と同時に引っ越す訳』)。2017年6月12日生まれのシャンシャンは、2018年11月13日から親離れの訓練を始め、12月10日から完全に1頭で暮らし始めた。

同じペースなら、双子は11月下旬に訓練を始め、12月下旬に親離れする。シンシンから離れても双子はしばらく一緒に暮らす見通しなので、「ひとり立ち」ではなく「ふたり立ち」だ。

気になるのが、親離れ後の部屋割り。西園のパンダ舎を中心とする「パンダのもり」は2020年9月にオープンしたばかりで、ここでの子パンダの親離れは初めてとなる。現在は、母子3頭が同じ放飼場を使っている。外と室内でそれぞれ1カ所だ。親離れすれば、2カ所ずつ必要になる。

パンダの森の地図

「パンダのもり」の概略図。公開エリアでは、母シンシンと双子が「屋外放飼場B」「室内展示1号室」、父リーリーが「屋外放飼場C」「室内展示2、3号室」を利用中。親離れした双子が「室内展示3号室」「屋外放飼場D」を使う案が検討されている(筆者撮影)

そこで上野動物園が検討しているのが、シンシンは今使っている放飼場をそのまま使い、双子は「パンダのもり」の向かって右端にある放飼場を使うという案。

父親のリーリーは室内の放飼場を2部屋使っているので、右の部屋を双子が使い、そことつながっている外の放飼場と出入りできるようにするというわけだ。

双子の鳴き声が聞けるかも?

右端にある外の放飼場はガラス柵がないので、双子の鳴き声や、竹を割る音、食べる音も聞こえるだろう。筆者は双子の鳴き声をまだ聞いたことがない。現在の双子の公開エリアは、室内も外もガラス越しでの観覧だ。上野動物園が公開している双子の動画にも音声が入っていない。もし双子に悪影響がないのなら、ガラスを介さずに観覧して、鳴き声を聞けるのはありがたい。

ただし、この案はあくまで検討段階なので、実現するかはわからない。実現には課題もある。上野動物園が指摘する課題は、オペレーションの難しさ。現状では観覧エリアの外から見えるので、人だかりができてしまうだろう。

また、この放飼場のほぼ真上には、東園と西園を結ぶモノレールの軌道がある。1957年に開業した日本初のモノレールで、車両の経年劣化のため2019年11月から運休中だ。現在は、モノレールの復活もしくは解体、新たな乗り物の整備といった計画が取り沙汰されており、内容によっては騒音などでパンダたちに影響を与えかねない。

運行休止前の上野動物園のモノレール

運行休止前のモノレール。下に見えるのは、建設中の「パンダのもり」右端の放飼場。いそっぷ橋から2019年10月に撮影。現在は、いそっぷ橋からは見えない(筆者撮影)

東京都は、モノレールに代わる新たな乗り物と収益施設を一体で民間事業者に整備・運営させることを検討している。上野動物園で初めてとなる公募設置管理制度(Park-PFI)の採用を視野に入れる。

都が2022年5月16日~5月27日に6事業者(製造業、不動産業・物品賃貸業、運輸業)から意見を聞いたところ、モノレールに関しては「レール、柱等の再利用はできず、撤去が必要」との意見が多かった。収益施設については、モノレールの駅舎を活用した観光施設や飲食施設のアイデアが寄せられた。西園の駅舎は「パンダのもり」の目と鼻の先にある。

今後の都の動きは?

この結果を踏まえ、都は事業手法や公募条件の検討を進める。新たな乗り物と収益施設を整備・運営する事業者は、2023年度中に公募する計画だ。

それに先立ち、都はモノレールの解体・撤去方法などを調査する業務を発注した。発注に当たり、パンダ舎が近接していることを踏まえ、「展示動物に配慮した解体撤去方法を取りまとめる必要がある。そのため受託者には、モノレール撤去及び駅舎設計に関する経験、知見及びこれを解体撤去方法に反映できる技術力を有することが求められる」とした。

入札の結果、建設コンサルタント会社のトーニチコンサルタントが698万5000円(税込み)で2022年9月15日に落札。業務の期間は2023年2月末までなので、解体となれば、それ以降になる。

そのとき、双子はおそらく「ふたり立ち」を果たしているだろう。双子がシンシンと別れ、どこで暮らしていても、引き続きすくすくと育ってほしい。

(中川 美帆 : パンダジャーナリスト)

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