パワーカップルの7割が使う「ペアローン」のワナ

「ペアローン」とはどういったものなのでしょうか(写真:Graphs/PIXTA)

「ペアローン」とはなにか、ご存じだろうか? 今や住宅ローンを利用した世帯のうち約3割が使用しており、マイホームを購入する共働き夫婦が利用するのは普通になっている。その実態やペアローンを利用する理由、利用するうえでの注意点などについて考えていこう。

パワーカップルの約7割がペアローンでマンション購入

今回注目した「ペアローン」とは、1つの物件に対して、夫婦それぞれが自分の収入に応じて住宅ローンを借りるというもの。ちなみに、ペアローンは夫婦に限らず、同居している親子などでも利用可能だ。

リクルートの「2021年首都圏新築マンション契約者動向調査」(2021年の1年間に首都圏で新築マンションの購入契約をした7289件が対象)によると、住宅ローンを利用した世帯のうち29.4%が、世帯主と配偶者(パートナー)の「ペアローン」だった。

これを共働き世帯に限定してみると、ペアローンの比率は半数近い46.9%にまで達する。なかでも、パワーカップルと言われる「世帯総年収1000万円以上」では、ペアローンが73.5%と極めて高い比率になった。

最近は共働き夫婦が増加している。若い世帯では、妻もフルタイムで働いて一定の収入があることから、2人でお金を出し合ってマイホームを買うというのは当たり前の流れだろう。

実際にペアローンの利用者は多いのだろうか? どういった利用のされ方をしているのだろうか? 気になるので、2つの金融機関に話を聞いてみた。

まず、都市銀行のひとつ三菱UFJ銀行に聞いてみた。同行の特徴は、独自の住宅ローンの金利タイプなどが多様にあることだ。同行の住宅ローン利用者のうち、おおむね2割程度がペアローンで、特に30代での利用が多い印象だという。

さらにネット専用住宅ローンを扱う住信SBIネット銀行にも聞いた。同行の特徴は、チャネルが複数あることだ。住宅金融支援機構との提携ローン【フラット35】、ネット専用住宅ローン、対面型の住宅ローンなどがある。

30代を中心に全体の2割程度がペアローン

まず、【フラット35】ではペアローンは利用できない(この点は後で詳しく説明したい)。【フラット35】のほかの住宅ローン利用者で言えば、ペアローンの利用は2割程度で、そのうち6割程度が30代だという。

両行とも30代を中心に全体の2割程度がペアローンということだが、リクルートの調査結果では全体の3割がペアローンで、両行よりも多い。これは、調査対象が新築マンション購入契約者という要因が考えられる。新築マンションは他の住宅タイプより価格が高くなっているので、ペアローンの利用者が全体水準よりもさらに多かったということだろう。

では、ペアローンを利用する際の条件などはあるのだろうか? 三菱UFJ銀行によると、ペアローンだからという個別の条件は特にないという。ただし基本的に、それぞれが単独でも住宅ローンを借りられる条件を満たすことが必要だ。団体信用生命保険に加入ができることなども条件になる。

2人が住宅ローンを借りる基本的な条件を満たせば、両行ともに、夫婦それぞれが住宅ローンの金利タイプや返済期間を選べる。つまり、2人が同じ金利タイプ・返済期間を選ぶ場合もあれば、それぞれが異なるローンを選ぶ場合もあるわけだ。

各行で提供される優遇金利や付帯できる保険などについても、それぞれのローンで適用されるので、まさしく1つの物件に2本の住宅ローンという構造だ。

なお、住信SBIネット銀行の場合、異なるチャネルでそれぞれがローンを選ぶことだけはできないので、夫がネット専用住宅ローンのローン、妻が対面型住宅ローンという組み合わせはNGだという。一方で、同居する兄弟姉妹もペアローンの対象になるという。

実は、夫婦2人でお金を出し合ってマイホームを買う場合、方法はいくつかある。

かつて多かったのは、「夫が単独でローンを借りて、妻は頭金を出す」あるいは、「夫の収入に妻の収入を『収入合算』という方法で上乗せをする」というものだ。では、収入合算とペアローンはどう違うのだろうか? ここでは、夫婦(夫と妻)によるペアローンや収入合算という前提で説明していこう。

ペアローンでは、自分のローンは自分で返済するのが原則だが、多くの金融機関では、妻が夫の、夫が妻の連帯保証人になって、互いのローンについて返済する義務を負うことを求めている。

※最近(2020年の民法改正以降)では、互いに連帯保証人になることを求めない場合もある。

また、それぞれが住宅ローンを借りるので、住宅ローン控除の適用もそれぞれが受けられる。団体信用生命保険についても、それぞれで加入するので、万一夫が死亡した場合は夫のローンが、妻が死亡した場合は妻のローンが保険金で返済される。

「収入合算」との違いは?

これに対して、収入合算は、例えば夫が住宅ローンを借りる場合に、妻の収入を上乗せして、その収入に対してローンを借りるもの。

民間金融機関の多くは「連帯保証型」の収入合算を採っているので、住宅ローンの返済をするのは夫だが、妻は夫の連帯保証人となって万一のときに返済の義務を負う。なお、妻の収入の全額ではなく、半分程度を上乗せできるとする金融機関が多い。

また、収入合算の場合は、夫だけが団体信用生命保険に加入し、住宅ローン控除も夫だけが対象になる。したがって、妻が死亡した場合は、夫のローン返済はそのまま続くことになる。

■住宅ローンの借り方の主な違い

(注)単独ローンと収入合算は夫が主に借りる場合を想定 (出所)筆者作成

では、なぜペアローンを利用するのだろう?

両行ともに、「借入額が増える」ことと「住宅ローン控除が2人で使える」ことを挙げる。住信SBIネット銀行は、住宅価格の上昇により借入額が増える傾向にあり、夫婦2人分の総年収でローンを借りるパワーカップルが増えているという。

また、三菱UFJ銀行によると、ペアローンを申し込むのには「自分の持ち分を持ちたい」という希望もあるという。購入した住宅の所有権は、出資した額の割合で持ち分を持つことになる。ただし、連帯保証型の収入合算の場合は、あくまで借りているのは夫になるので、合算した側の妻には持ち分がない。ペアローンにして、それぞれが出資した分をきちんと持ち分という形で反映したいということだろう。

一方で、デメリットはなにか。両行ともに、2本分の住宅ローンを借りることになるので、「諸費用などが2本分発生する」ことを挙げた。

■ペアローンのメリットとデメリット
○メリット
 借入額が増える
 夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられる
 夫婦それぞれが団体信用生命保険に加入できる
 夫婦で金利プランを選べる
×デメリット
 諸費用が2本分になるなどトータルコストが増える
 返済リスクが高まる

気を付けたいのが、住宅ローンは長期的に返済していくものだということ。ペアローンは、夫婦それぞれの収入をフルに活用するので、借入額を増やすことができる。その反面、めいっぱい借りていると、返済中にいずれかが働けなくなったり職を失ったりした場合に、返済できないリスクが高まるという点も押さえておきたい。

ペアローンならではの資金計画を検討しよう

先ほどのリクルートの調査結果によると、共働き世帯の平均借入額(首都圏/新築マンション)は5272万円だった。仮に5200万円を借りる場合で資金計画を考えてみよう。

例えば、5200万円を夫婦で半分ずつ、まったく同じローンを組むとしよう。その場合は、返済中に金利が上がり下がりした場合にどちらのローンも同じ影響を受けてしまう。せっかく、別のローンを選べるのだから、金利変動リスクを分散する方法をおススメしたい。

特に今は超低金利であるものの、金利上昇圧力が高まっているので、考えるべきリスクは金利上昇リスクだ。金利上昇リスクを避けるには、長期間金利を固定するものを選ぶのが原則だ。金利が上昇しても借入時に金利を固定しているので、返済額が増えることはない。

一方で、今の超低金利を活用しない手はない。そこで、夫と妻が長期固定型と変動型を選ぶ資金計画を考えてみた。

■ペアローンの資金計画例
(※)元利均等、ボーナス返済なし、金利はスマート手続きによる三菱UFJ銀行9月金利(優遇金利適用後)

【1】

【2】

【1】は、夫婦で同じ額を長期固定型と変動型に分ける方法だ。この場合、金利上昇の影響を受けるのは妻の分だけとなる。金利が上昇してしまったときは、変動型の妻のほうを繰り上げ返済して元金を減らし、返済期間を短縮したり返済額を減らしたりして金利上昇リスクを軽減することもできる。

世帯ごとの事情に応じて選び分ける

毎月返済額にまだ余裕があり、さらに金利上昇リスクを軽減するためには、妻の借入額を減らして返済期間を短縮する【2】の案もある。変動型は金利上昇の影響を受けるが、借入額が少ないほど影響は小さくなる。

変動型の低金利を活用して、返済期間を短くすれば、元金が早く減る(利息も減る)ので、結果的に金利上昇リスクを減らすことができる。26年目からは返済額は夫のみとなり、例えば定年延長期の収入が減ったときに返済額を軽減できるといったことも考えられる。

このようにローンをそれぞれ選べることを活用して、世帯ごとの事情に応じて選び分けるのが、リスク分散につながる。やってはいけないのは、固定10年型を選んだら、11年目に金利が上がり、子どもの教育費が最もかかる時期に返済額が増えてしまった、といったようなライフプランを見据えていないローンを選んでしまうことだ。

■【フラット35】の場合の資金計画例
(※)元利均等、ボーナス返済なし、金利は頭金9割以下の住信SBIネット銀行の9月金利

【フラット35】は、1物件に1本のローンが原則なので、ペアローンは組めない。ただし、「連帯債務型」の収入合算ができる。妻は連帯保証人になるのではなく、連帯債務者となり、夫と同様にローンの返済義務を負う。

【フラット35】の収入合算では、妻の収入の全額を上乗せすることができるうえ、所有権の持ち分が持てる。持ち分に応じて住宅ローン控除の適用も受けられる。

また、金利の上乗せがあるが「デュエット」という夫婦連生団信を利用できるので、妻が死亡した場合でも、ローンが団体信用生命保険の保険金で返済される。

【2022年9月12日10時40分追記】初出時、「デュエット」の内容に誤りがあったため、修正しました。

このように、【フラット35】ではペアローンは組めないものの、ペアローンの多くのメリットを享受できるので、夫婦2人で買って、2人で所有し、2人で返済する選択肢のひとつになるだろう。

ペアローンで買った後は、夫婦仲良くが理想

ペアローンに限ったわけではないが、夫婦で力を合わせてマイホームを購入した場合、大きな問題になるのが「離婚」時だ。婚姻中の財産は2人で分けることになるが、住宅は2つに分けることができないので、どちらかが相手の分を買い取って住み続けるか、売却して現金にするかになる。

資金的に頑張ってペアローンで購入した場合、相手の分を買い取る余裕がない可能性が高い。また、売却する場合に住宅ローンの残高より高く売れればよいが、婚姻期間が短いなどで住宅ローンがかなり残っている場合は、売却額よりもローン残高のほうが多いということもありうる。

つまりは、夫婦で力を合わせてマイホームを購入した場合は、長期間一緒に返済し続ける関係性を築けるように、夫婦が仲良くすることがカギになる。マイホームは長期的な視点に立って買うべきものなのだ。

(山本 久美子 : 住宅ジャーナリスト)

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