ANAとJAL「日本で乗り継ぐ外国人」で稼ぐ懐事情

業績が回復基調にあるANAとJALの旅客機

ANAとJALの第1四半期決算は、両社の想定を上回る滑り出しとなった(撮影:尾形文繁)

「国際線は計画対比で非常に好調」

8月初めに開催された決算会見で日本航空(JAL)の菊山英樹代表取締役専務執行役員は胸を張った。

ANAホールディングス(以下、ANA)の中堀公博上席執行役員も、決算会見で「(国際線は)旅客が予想より若干多く、第1四半期は想定以上に需給がタイトだったため、計画以上に単価が向上している」と説明した。

国際線が想定外の好調となった要因

コロナ前と比較して、旅客が6割程度回復している国内線ではなく、回復が3割程度で低空飛行が続く国際線が「想定外の好調」となった要因は何か。

6月に1日の入国者制限が1万人から2万人に緩和されたこともあるが、それ以上に国際線の業績に大きく貢献をしたのが、三国間流動だ。

国際線には大きく分けて2つの需要がある。1つ目が出発地と目的地を往来する直行便、2つ目が日本など第三国を経由して2つの目的地を結ぶ三国間流動だ。ANAとJALは、乗り継ぎ外国人の取り込みに成功しているのだ。

2022年の4~6月時点で、ANAの国際線に占める三国間流動の割合は5割、JALは3割となっている。国際線自体が低迷する中でも、三国間流動の旅客数はANAがコロナ前と比べて横ばい、JALに至ってはわずかに増加しているという。

両社が三国間流動の需要を獲得できた要因は大きく分けて2つある。1つ目が路線戦略だ。

各国政府が新型コロナ感染防止を目的とした海外渡航制限を講じると、国際線の利用頻度は激減した。実際、ANAとJALも国際線の減便を進め、1年前の2021年8月ごろの運航率は、ANAは2020年度事業計画比で19%、JALは同25%だった。

ANAとJALは需要に応じて復便を進めた

しかしその後、状況が一変する。三国間流動の需要が大きく回復し始めたのだ。「2021年11月8日にアメリカが水際対策を緩和したことが(三国間流動の需要拡大などにおいて)非常に大きかった」、ANAで国内線と国際線の運賃戦略を策定する宮川弘之氏は語る。

とくに三国間流動の旅客が多いのは、東南アジアと欧米を結ぶ航路だ。移民が多いアメリカにコミュニティがあるフィリピン、ベトナム、インドネシアなどは、もともと往来する旅客が多かった。

さらに、アメリカと東南アジアは渡航制限の緩和が早く、コロナ禍で制限されていた帰省をする旅客が増えているのだ。

こうした需要に対応するためANAは、アメリカや東南アジア方面の路線を中心に復便を進めている。8月時点での運航率は、37%と前年同月から2倍になった。

対するJALは、三国間流動への対応はANAから一歩遅れていた。JALでアメリカ大陸と東南アジア路線の収支管理を担当するレベニューマネジメント推進部の丸山洋平グループ長は「2020年のゴールデンウィークの海外旅客数で大きな差がついたことが、三国間流動を強化するきっかけとなった」と打ち明ける。

確かに、コロナ禍直撃から間もない2020年GWの旅客数の実績を比較すると、ANAは6591人だったのに対し、JALは2030人と3分の1以下にとどまっている。

これを受け、JALはアジア便の多い成田空港の乗り継ぎ利便性を高めるため、東南アジア便を2020年11月に増便した。成田空港を起点として三国間流動の需要を獲得することに成功している。

従来、両社の稼ぎ頭だった日本と目的地の直行便は、相手国の航空会社とANA、JAL程度しか競合がいなかった。

しかし、三国間流動に関しては、コロナ前は両国の航空会社に加え、中東のカタールやエミレーツ、香港のキャセイパシフィック、中国本土の三大航空、台湾系などライバルが多く、競争が熾烈な市場だ。ただ、この競争環境がコロナの影響で一時的に緩やかになったのが、ANAとJALにとって追い風となった。

ライバルは国際線の供給をなかなか戻せない

例えば中国の三大航空キャリアである、中国国際、中国東方、中国南方や香港のキャセイパシフィックは、水際対策の影響で国際線の供給を戻すことができていない。

キャセイパシフィックの月次実績を見ると、2022年6月の旅客は、15万人と、前年同月と比較すると2倍以上になっているが、コロナ前の2019年6月と比較すると、20分の1でしかない。

タイ国際航空など一部の航空会社は経営難に陥ったためリストラを行い、便数を減少させている。

今後に目を転じても、ANAとJALは三国間流動においてしばらくは優位に旅客を獲得できるだろう。

中国系航空の多くはしばらく国際線の供給を戻すことは見込みにくい。中国はゼロコロナ政策を堅持し、海外渡航の制限はもちろん、国内で小規模なロックダウンなど行動制限が繰り返されている。業界関係者の多くは、「2022年秋までは、今の状況が続くのではないか」と推測している。

加えて、渡航制限が解除されたとしても、すぐに供給量を戻すことは難しそうだ。例えば、キャセイパシフィックは、コロナ禍で大胆なリストラを行っており、パイロット不足が懸念される。現地報道によれば、2023年末までに700人パイロットを採用する方針を明らかにしている。

香港のキャセイパシフィック航空はパイロットの獲得を急ぐ(編集部撮影)

日本は入国者の制限は行っているが、乗り継ぎなど三国間流動については規制を設けていない。ANAとJALは、コロナ禍において新規採用の停止、ANAはリストラを行ったものの、規模は限定的だった。一定の雇用を維持したことが機動的な復便につながった。

ただ、今後は、水際対策の緩和に合わせて、直行便の旅客も獲得していくことも求められる。

ビザや陰性証明書の取得などで、海外への渡航や訪日需要が落ち込んでいる今、三国間流動の旅客を獲得する戦略は理にかなっている。だが、国際線を下支えしている三国間流動は、直行便と比べると不便であることに加えて競争も激しく、単価の低い傾向にある。

現在、水際対策として入国者数制限のほか、訪日外国人にはビザ取得や添乗員付きパッケージツアー参加での入国が求められている。日本人の海外渡航では帰国時のPCR検査が必要で、往来の足かせとなっている。

そこで、「入国前の陰性証明書撤廃、訪日観光客の個人旅行での入国、訪日ビザの免除措置の再開を国にお願いしている」とANAの中堀氏は決算会見で明かした。

ANAとJALは、3年ぶりの営業黒字を会社計画として掲げているが、足元で国内は新型コロナが拡大し、旅客の回復は想定より遅れている。それだけに、国際線が2022年度の浮沈のカギを握る存在となりそうだ。

(星出 遼平 : 東洋経済 記者)

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