アキナ、「M-1」優勝候補からの惨敗で得た気付き

芸人コンビの「アキナ」

「アキナ」の秋山賢太さん(右)と山名文和さん(左)(撮影:中西正男)
まだまだ“上がり”の歳でもない。かといって若手でもない。これからどこへ向かえばいいのか。そんな狭間の年代が40代。芸能界という答えがない世界で、その葛藤とどう向き合っているのか。新連載「夢と諦念、ミドルエイジ芸人のリアル」の第1回は、お笑いコンビ「アキナ」の秋山賢太さん(39)、山名文和さん(42)に話を聞きました。
「アキナ」は、同世代の「かまいたち」や「アインシュタイン」、「和牛」らが全国区へと羽ばたく中、地元・関西を中心に活動、MBSテレビ「せやねん!」や関西テレビ「2時45分からはスローでイージーなルーティーンで」などレギュラー番組も多数抱えます。
さらに、秋山さんは2019年にABCテレビの塚本麻里衣アナウンサーと結婚。昨年、第一子となる長女が誕生しました。山名さんも昨年吉本新喜劇の宇都宮まきさんと結ばれ、今年4月には第一子となる長男も授かりました。
はたから見れば順風満帆。しかし、その中で思うこともあるといいます。

原点に戻り大切なものを見つめ直す

山名:40歳を超えた頃から新たな覚悟みたいなものが定まったという感覚はあります。

若手の頃は、例えば先輩と飲んでいる時に「明日、朝から北海道で営業やねん」という話を聞いたら、純粋に「すごいなぁ」と思っていました。朝から飛行機で北海道まで行って、10分ネタをして大阪に戻ってくる。それってどんな世界なんやろうと。

東京のテレビに出る。大きな賞レースに出る。若い頃の自分からしたら「どんな世界なんやろう」と思うものが一つずつ減っていく。そして40歳になった頃にはそれがほぼなくなっていた。

その時に思ったんです。「今一度、自分が『大切だと思っていること』を見つめ直そう」と。

大切なこと。僕の場合、それがネタなんです。改めて、漫才やコント、劇場出番を大切にする。いろいろな仕事をさせてもらって「どんな世界なんやろう」がなくなってきたからこそ、今一度しっかりとそこを大切にする。

そもそも、それがやりたくて、それが好きでこの世界に入ってきたんですけどね。あらゆる“それ以外のもの”を経験してきたからこそ、その思いが40歳の頃に定まりました。

ネタで勝負する最高峰とも言える「M-1グランプリ」。2020年、優勝候補と目されていたものの8位となり、憧れの世界タイトルマッチでKO負けを食らうような経験をしました。大切なものでダメージを負う。その衝撃は大きいものだったといいます。

山名:2020年の「M-1」惨敗も大きかったと思います。もともとネタがしたくてこの世界に入ってきたのに、その最高の場で逆の烙印を押されるようなことになった。

もちろん、このまま終わりたくはないし、終われるわけない。そして、一生ネタはしていきたい。そう思ったら、より一層、ネタをやるしかないと。そうなりました。何一つムダなことはないというか。それも強く感じましたね。

もう一度「M-1」で勝負する

アキナの秋山賢太さん、山名文和さん

ネタで勝負するという「アキナ」(撮影:中西正男)

今は“アラフォー芸人受難の時代”ともいわれています。広告収入的にテレビ局は若い世代に番組を見てもらいたい。そうなると、積極的に起用するのは鮮度のある若手芸人。

一方で、そういった新たな“食材”を光らせるために腕のある“シェフ”も必要。「ダウンタウン」に代表されるように、50代以降のベテラン芸人には変わらず需要があります。

一番あおりを受けているのが、その間にいるアラフォー芸人。鮮度はなく、もう賞レースにも出られないので一発逆転もしにくい。幾重にも不利が重なります。

秋山:山名君からネタに関する話はその都度聞いていたので、僕はそこを尊重するというか、コンビの舵は山名君に握ってもらっているのが現状です。

いろいろなやり方があるでしょうけど、僕もやっぱりもう一つ上に行くのはネタだと思っています。このまま何となくテレビを増やしていって、なんとなく少しずつ上に行くというのは正直難しい。そうなると、やっぱりネタなんですよね。

僕らはコンビになったのが遅かったので、アラフォーですが、まだ資格的には「M-1」にも出られるんです。出られるなら、そこで結果を出す。それを目指すしかないなと。

山名:せっかく見つけた一番好きなもの。それを2人でマックスまで高める。極論すれば、そんなネタができたら、賞レースで優勝できなくてもいい。そうも思うんです。

「M-1」で負けたら悔しいですけど、一歩外に出て、師匠方やもう「M-1」には出られなくなった先輩たちのネタを劇場で見ていると、ボッコボコお客さんにウケているわけです。

自分たちの好きなことを突き詰めて、そして誰にもまねができない作品を作って、お客さんに喜んでもらう。一番カッコいいのはそこだなとも思うようになってきました。

それでいうと、「オール阪神・巨人」師匠ももちろんですし、桂文珍師匠もだし、圧倒的な才能と積み重ねで今も力を見せ続けてらっしゃる方々、本当にすごいと思います。

60歳、70歳になってもウケていたい

秋山:今、山名君が名前を挙げさせてもらった方々のように、自分らが60歳、70歳になった時に20歳くらいの若い芸人さんが「カッコいい」と思ってくれる。そんな文脈で名前を挙げてくれる。そういう存在でいられたらなというのは一つの目標ではありますね。

逆に「なんであの人らまだやってんねん…」とは絶対に思わせたくない。もし、そんな声がフワッとでも耳に入ったら、もうその時点で辞めると思います。

惰性や名前で残っているんじゃなくて、面白いから残っている。カッコつけたみたいな物言いになってますけど(笑)、本当にそうなっていないとダメだと思うし、そうなれるようにやっていきたいと思っています。

■アキナ
1983年6月24日生まれで兵庫県出身の秋山賢太と、1980年7月3日生まれで滋賀県出身の山名文和のコンビ。「アキナ」結成前はお笑いトリオ「ソーセージ」として活動し注目を集めていたが、2012年にメンバーのトラブルでトリオが無期限謹慎処分となり、当該メンバーの脱退をもってトリオは解散。秋山と山名の名前を合わせた「アキナ」として再出発する。

MBSテレビ「せやねん!」などレギュラー多数。2015年には「第45回NHK上方漫才コンテスト」で優勝。「キングオブコント」は2014年、2015年、2017年の3回、「M-1グランプリ」は2016年、2020年に決勝進出した。コンビのYouTubeチャンネル「アキナのアキナいチャンネル」も展開中。8月28日に吉本興業のタレント養成スクールなどを運営するよしもとアカデミー(大阪・難波)を拠点に行われる小中高生を対象にしたイベント「エンタメサマーキャンプin大阪」にも出演する。

(中西 正男 : 芸能記者)

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