「投資をする親子」としない親子の決定的な差

成人年齢が引き下げられたことで、金融商品・資産形成の重要性について、高校生から学ぶ時代に。より高い金融リテラシーが求められる中、どんな教育が必要なのでしょうか? (写真:shimi/PIXTA)
成人年齢が引き下げられ高校生から家計管理や株、投資信託などの金融商品、資産形成の重要性について学ぶ時代。より高い金融リテラシーが求められる中、どんな教育が必要なのか。
人気ファイナンシャルプランナーであり、6人の子ども育てる横山光昭氏の新刊『一生お金に困らない! 13歳からの3000円投資生活』から一部抜粋・再構成してお届けします。

投資をしていない大人が教えられる?

2022年4月から、高校の家庭科の授業内容が変わりました。今までも、「買い物をする際に、どのような点に気をつければよいか」など、日々のお金の使い方に関する授業は行われていましたが、

●「自分自身や子どもの教育費、家を買うお金、老後の資金など、人生において、いつ、どのくらいのお金が必要になるか」
●「病気や失業にどう備えればいいのか」
●「預貯金、生命保険、株式、債券、投資信託などの基本的な金融商品の特徴」

など、「将来、お金で悩んだり苦労したりしないために、どうやってお金を管理し、増やしていけばいいか」を、高校生のうちに学習することになっています。授業内容が変わったのは、国が「人々がお金を上手に増やして生きていくためにも、日本という国がもっと豊かになるためにも、1人ひとりが金融リテラシーをもっとしっかりと身につける必要がある」と考えたからでしょう。

なお、今年になって「高校生の金融教育がスタート」などのニュースが増えたのは、株や投資信託という具体的な金融商品についても学ぶようになったことが、投資文化を持たない日本でショッキングなことと受け止められたためと筆者は感じています。

実際に、2015年3月にできた法律で、親権者(子どもを育て、子どものお金を管理し、子どもの代わりにさまざまな契約などを行う親のこと)と一緒なら、子どもでも投資をすることができるようになっています。未成年の証券口座は、言葉のとおり「未成年口座」と呼ばれ、下記の証券会社などで開設することが可能です。

・楽天証券
・SBI証券
・岡三オンライン証券
・松井証券

しかし、金融庁が先日公表した2021年12月末時点(速報値)の口座数は、一般NISAが約1248万口座、つみたてNISAが約518万口座。野村総合研究所が3年おきに実施している「生活者1万人アンケート」にでも、25~69歳の男女の中で2021年現在、投資している人は人口の21.1%にあたる1470万人と推計。

約8割が投資をしていないと考えられるため、まだまだ投資人口は少なく、大人の中でも投資についての理解が不足しているであろうことが推察されます。また、現在の高校生が学ぶべき、長期の積立投資(投資信託)について実感を持って教えられる人は、どれだけいるでしょうか。

さらに、詐欺や、買い物・契約をめぐるトラブル。成年年齢が18歳に引き下げられたことで、社会経験の少ない若者の被害が増えることも心配されています。投資だけでなく、お金全般についても、未成年のうちに高い金融リテラシーを身につけることが求められる時代になったのです。

未成年から投資をする必要性

未成年口座は非常にすばらしい制度であるものの、今後大きな格差を生んでいく可能性を秘めています。

●コツコツと堅実に投資を続ける親子
●投資をしない親子

今後、両者の間で格差は広がり続け、取り戻せないほどの格差を生むかもしれません。子どもに投資を教える前に、まず、なぜ日本人は投資をしてこなかったのか。なぜ、未成年から投資をする必要性があるのかをカンタンに理解しておきましょう。

なぜ日本人は投資をしてこなかったのか。これは、現役世代の方なら肌感覚で理解しているかもしれません。答えは、単純です。

第2次世界大戦後、ボロボロになった国の経済を立て直すためには、人々のお金を一度金融機関に集め、金融機関がそのお金を会社に貸し、産業を活性化させるというシステムが必要でした。そのため、国は、「貯金をすることは、いいことである」という価値観を人々に植えつけました。確かに一時期は、金利が8%などいう夢のような時代もありましたので、貯金さえしておけば大きな利益が出ます。

つまり、投資は必要なかったのです。

「投資は怖いもの」という古い価値観

加えて、日本の投資信託の中には、よくない商品、つまり買った人が損をするリスクの高い商品、高い手数料を取っているわりに利益が低い商品がたくさんありました。言葉は悪いですが、「クソ」な投資信託がたくさん存在していたのです。いまだに、投資信託に対して「うさんくさい」「損をさせられる」といったイメージを抱いている人、「過去に投資信託を買って、ひどい目にあった」という人もいるのは、こうした過去の悪い状況が影響しています。

現に近年、貯金重視から投資重視へと方針を変えたとはいえ、貯金はよいもの、投資は怖いものという価値観は根強く残っているといえるでしょう。次の図を見てもらえればわかるように、2021年3月末時点の日本とアメリカとヨーロッパ(ユーロエリア)の状況を比べると、日本の現金・預金の割合がとびぬけて高く、債務証券や投資信託や株式等を買っている人(投資をしている人)の割合が低いままです。

(図版:アスコム)

よろしくない投資信託がはびこっていた時代とは違い、初めての人でも、未成年者でも、投資によって安心してお金を増やせる仕組みは、すでに整っています。

その話をするうえで欠かせないのは、2015年から2018年まで金融庁長官を務めていた、森信親氏でしょう。当時も話題になりましたが、森氏は「手数料獲得が優先されるビジネスは、そもそも社会的に続ける価値があるのでしょうか」と、講演で語ったこともあるほど。つみたてNISAの対象となる投資信託の販売手数料を無料とするなど、日本の個人資産運用の流れを大きく変えた人物といえます。

つみたてNISAの創設に伴い、日本の投資状況は一変し、かつてないほど投資環境はよくなっています。未成年から投資ができるようになったのも2015年ですから、ここ数年、国は本気で個人の投資環境の改善に取り組んできたといえるでしょう。

それでも、日本ではいまだに、投資をしている人はアメリカやヨーロッパに比べて少なく、日本証券業協会が20歳以上の男女7000人を対象に行った『平成30年度証券投資に関する全国調査(個人調査)』の結果を見ても、75%近くの人が「証券投資の必要性を感じない」と答えています。

しかし、高校生でも投資信託を学ぶ時代です。今後、ますます投資をしながら働くことがスタンダートになっていくことでしょう。

未成年口座が持つ「本当の意味」

まだ、未成年口座は多くの人に知られていないと筆者は感じています。しかし、「次世代の子どもたちの未来を大きく変えてしまう」と言ってもいいほどの制度です。特に現在、つみたてNISAなどで投資をしていないという方には、ぜひお伝えしておきたいことがあります。

まず、未成年口座では、子どもが0歳のときから、親が投資信託の運用を行うことができます。そのうえ、未成年口座で運用されている資金は、最初から子どもの名義。つまり、幼少期から親御さんのお金で積立購入した投資信託は、すべて子どもの名義となるので、あとでどれほど利益が出ようと、利益に対し相続税はかかりません。

年間110万円までの贈与税の基礎控除を使い、今後、自分たちの資産運用に加え、子どもたちのために、未成年口座での投資を始める人は増えていくのではないかと思います。投資の知識があり、投資にまわせるお金がある人は、おそらく子どもが生まれると同時に未成年口座を開設するようになるでしょう。それが最も、効率的だからです。

子ども手当などについても、目先のことに使ってしまうのではなく、未成年口座で投資信託を買うことで、より大きく増やせる可能性が高まります。

中には、子どもが成人しても、親がそのまま管理・運用を続け、ある程度の収入を子どもが得るようになったころに渡したり、自分がこの世を去る間際に遺産がわりに渡したり……というケースもあるかもしれません。もし、未成年口座で0歳から60歳まで月に1万円、利回りが6%の投資信託を購入し続ければ、積立総額720万円に対し、運用総額は約7000万円。6000万円以上の運用益が手に入ります。もし、月2万円なら、積立総額約1400万円に対し、運用総額は約1億4000万円。

親がコツコツと買い続けてきた投資信託を受け継ぎ、投資を続ければ、贈与税、相続税がかからない大きな資産を手にすることができるのです。

そんな経験をした世代が親になったときには、子どものために、さらに多くのお金を投資するようになるでしょうから、みなさんの孫世代は、より大きな運用益を得ることになるでしょう。

「投資貴族」が誕生する未来

つみたてNISAだけでなく、未成年口座を上手に利用して、一家全員が億近い投資信託を持ち、毎年、投資信託だけで多くの利益を得る。そんな家族が数多く誕生する可能性は十分にあります。特に、現在の親世代が旅立った後、子どもや孫の世代には、親が未成年口座を長年やっていたか否かで、信じられないほど格差が開いていくかもしれません。「投資貴族」の誕生です。

そう考えると、この制度は非常にすばらしい制度であると同時に、次世代やその次の世代の人生を大きく変える可能性があります。もしかしたら、みなさんの中には、「お子さんの教育費のために」と学資保険などを検討されている方もいらっしゃるかもしれませんが、利回りや使い勝手のよさを考えると、学資保険はあまりおすすめできません。

本稿をお読みいただいた親御さんのうち、まだつみたてNISAを利用していないという方は、まずご自身の未来のために、投資を始めてみてください。そこで「お金が勝手に増えていく」という経験をしたら、今度はお子さんの将来のために、ぜひ未成年口座を開き、そちらでも投資を始めてみてください。未成年口座を開き、子ども手当やお年玉、お祝い金などを使い、コツコツと投資を続けていけば、一生使える金融リテラシーが身につくはずです。

(横山 光昭 : 家計再生コンサルタント、マイエフピー代表)

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