双子パンダ1歳「個性も発揮」ぐんっと成長の記録

木の上のシャオシャオに近寄るレイレイ。2022年6月20日(筆者撮影)

東京・上野動物園で初めて双子のジャイアントパンダが生まれてから、昨日で1年。これまで2頭とも病気をせず、元気に育っている。

誕生日当日の6月23日、筆者は観覧抽選に当選していたので、午後2時過ぎに訪れた。室内では、左側にある低い木の上で雌のレイレイ(蕾蕾)がお尻をこちらに向けてすやすや。母のシンシン(真真)は右側の床の上で壁を向いて寝ていた。外に出ると、雄のシャオシャオ(暁暁)が木の上にいる。意外と細い枝の上に体を乗せて、鼻と右の前足を他の枝と枝のすき間から出すという器用な体勢だ。寝ているようだが、ほんの少し動いていた。

この3日前の6月20日は、シャオシャオが室内の木にもたれかかっていた。レイレイはシャオシャオに近づくも、相手をしてもらえないと悟ったのか、そそくさと退散して、シンシンのそばへ。シンシンは竹を食べるのに夢中だ。レイレイも真似をしてか、まだ食べられないのに細い竹を1本くわえて、シャオシャオと反対側にある木に登り、ほどなく眠りに落ちた。

小池知事も顔をほころばせパンダ鑑賞

この日、6月20日は、休園日を利用して、園内で「シャオシャオ・レイレイの1歳を祝う会」が開催された。式典が終わり、東京都の小池百合子知事が母子3頭を観覧した際は、全員がお昼寝中。知事は「爆睡中ですね」と声を漏らした。

(左)お昼寝中のパンダの母子を観覧する東京都の小池百合子知事、上野動物園の福田豊園長、抽選に当たって招待された子どもたち。2022年6月20日(写真:公益財団法人東京動物園協会提供)、(右)パンダ舎の前で取材に応じる小池百合子都知事。2022年6月20日(筆者撮影)

直後の会見で、小池知事は「コロナ禍で皆さん、パンダに会えないという思いを抱いていらしたと思います。動物園にも、なかなか来られないという状況が続きました」と、長期に及んだ臨時休園に言及。

そして、「(シンシンと双子の)パンダについては抽選制が続きますけれども、少しでも上野動物園で楽しんでいただければ、そしてパンダの成長を見守っていただければと思います」と顔をほころばせた。

「祝う会」で小池知事は、食べ物の詰め合わせを双子にプレゼントした。中身は、リンゴ、竹、人工乳の「パンダミルク-10」(参照:『世界初パンダ専用ミルク「日本」で開発の深い事情』)だ。

双子の姉のシャンシャン(香香)は、1歳の誕生日にハンモックをプレゼントされた。古い消防ホースを飼育係が編んだ手作りだ。

双子には、ハンモックのような遊具はないのだろうか。6月20日の会見で尋ねた。

「今回のプレゼントは式典でお渡しできるものということでセッティングしています。誕生日などにかかわらず、必要になったら、そういう遊具を置いてあげるということです。誕生日だから特別なものではなく、普段通りの飼育をしながら、その中で必要なものをどんどん与えていくのが、動物園としての飼育の方法なのかなと思っています」(上野動物園の大橋直哉教育普及課長)とのことだ。

もしハンモックを設置するとなれば、双子なので2つなのか、それとも1つにして、譲り合って使うのか。あるいは取り合いになるだろうかと想像が膨らむ。

双子は基本的に母乳と人工乳だけでここまで育った。前述の「祝う会」のプレゼントのうち、人工乳は毎日与えているが、それ以外は、実際はまだ十分に食べることができない。

リンゴは5月に初めて食べたが、この時は、飼育係が双子の口元にリンゴのかけらを近づけたら、パクッと食べただけ。リンゴを置きっぱなしで与えるかは、もう少し様子を見て判断する方針だ。

竹はくわえているが、6月20日時点では食べていない。パンダの腸の長さは肉食動物と変わらないため、食べたものをあまり消化できず、ほぼそのまま糞として出す。もし竹を食べたら、竹の切れはしが糞の中に出てくるはずで、それはまだ確認されていない。双子は今のところ、ミルクを飲んだ時に出る「ミルク便」を出している。

体重は生まれた時の200倍近く

2021年6月23日、1頭目は午前1時3分、2頭目は午前2時32分に誕生した。シンシンが2頭目の出産直後、2頭一緒に抱いたので、シャオシャオとレイレイのどちらが先に生まれたのかは、今も分からない。

シンシンは6月23日に子どもをくわえようとして、うまくいかず、1頭を床に置いた。そのすきに職員が拾い上げて、保育器に移した子どもは、後に雄と判明。シャオシャオと名付けられた。シンシンが出産後、ずっと抱いていた子どもは雌だったので、レイレイだ。シャオシャオは誕生当日に体重をはかることができて124g。レイレイは6月24日に計測して146gだった。

体重は、双子をそれぞれバケツに入れて計測したこともあったが、成長した現在は、じっとしている時に衣装ケースに入れてはかっている。双子の6月19日の体重は27.35kgで、偶然ピッタリ同じだった。誕生時のおよそ200倍だ。

上野動物園の福田豊園長はこの成長ぶりについて、手作りのフリップを使いながら、6月20日の「祝う会」で紹介。「まだまだ小さい2頭ですけれど、上野動物園では、これからもシャオシャオとレイレイを大切に飼育してまいります」と話した。

ちなみに体長は、2021年11月30日に測定したのが最後で、シャオシャオは84.0cm、レイレイは83.5cmだった。飼育係は、双子が170日齢を迎えた同年12月10日にも計測しようとしたが、双子が激しく動いて、測れなかった。双子の動きが活発になってきたため、以降、体長測定はしていない。

コロナ禍で中国の専門家が来られない

双子はコロナ禍に誕生した。上野動物園の飼育展示課長でもある冨田恭正副園長は、双子の誕生時をこう振り返る。

「1頭目の出産に続いて、2頭目の出産が確実視された時、正直、喜びと同時にいわれのない緊張感に包まれました。そのことは今も忘れません。1頭だけでも決して楽ではないのですが、双子を育てるという時、飼育係によるサポートが全然足りないことは分かっていました。コロナ禍で、本来ならこちらに来てくれて、一緒に取り組むはずの中国の専門家が来ることができませんでした」

そうした中、上野動物園で初めて双子パンダを育てることになった。シンシンは出産後、食欲が回復しなかった。シンシンが少しでも栄養を補給できるように、職員はシンシンが食べそうな竹を探し回った。

また、双子の誕生後しばらくは、シンシンと飼育係が交互に育てた(参照:『「すり替え作戦で育児」双子パンダ誕生の舞台裏』)。例えば、シンシンがシャオシャオを抱いている間は、レイレイを保育器に入れて、飼育係が面倒をみる。その後、シャオシャオとレイレイを入れ替える。

一般的にパンダの母親は、双子を生んでも2頭とも育てることが難しい。だが、こうして入れ替えれば、両方を育てられる。シンシンも、シャオシャオとレイレイの両方を熱心に育てた。

とは言え、保育器にいる子どもの人工飼育は簡単ではない。職員はシンシンから母乳を搾り、子どもに与える。「間違って気管に入ったりしないように、慎重に、慎重に飲ませました。24時間、まったく気を抜けない状況が続きました」(冨田副園長)。

その甲斐もあってか、2頭はすくすくと育っている。

双子は成長にしたがい、性格の違いも出てきた。飼育係によると、シャオシャオは、感情表現が豊か。楽しんでいる、怒っている、怖がっているというのが分かりやすい。物音や動きなど、些細なことに驚いてしまうことが多く、少し繊細な面もある。その一方で、台の上からシンシンの体の上に飛び降りるなど、唐突に大胆な行動をとることもある。

食事が一段落したシンシンと、木の上でうとうとするシャオシャオ。2022年6月20日(筆者撮影)

レイレイは、マイペースでおっとりしている。シンシンやシャオシャオの動きをよく見て、要領よく行動する一面もある。例えば、シャオシャオがシンシンから母乳をもらう時は、シンシンが食事している最中に行ってしまい、邪険にされることが多い。レイレイは違う。飼育係によると「シンシンが寝ている時など、チャンスを見計らって行くので、飲む頻度が高いのではないか」とのことだ。

最近のシャオシャオとレイレイのお気に入りの場所は、室内の木の上。この場所を巡って、シャオシャオに戦いを挑まれたレイレイは、さっさと別の場所に移動して、寝ることがある。譲ってあげているのか、うっとうしがっているのかは、飼育係にもわからない。

最近は20度の室内で涼しく過ごす

双子の現在の日常生活はというと、飼育係の掃除などで場所を移動した直後の朝は、よく動いていることが多い。それからすぐ寝る日もあれば、少し遊んでから寝る日もある。

筆者が当選して観覧した3月下旬から6月中旬までの場合、涼しい午前中は双子が外でシンシンにじゃれついたり、木に登ったりしていることが多かった。

だが最近の上野は、気温30度近くで暑い。パンダは、野生では中国の高地に生息するので、暑さが苦手。双子も20度ほどに設定された室内で過ごすことがめっきり増えた。双子が寝る場所は、ほとんど木の上。これは幼いパンダが外敵から身を守る習性のためとされる。シンシンは地面か床の上で寝ることが多い。

抽選制の現在、観覧時間は1カ所につき1分。パンダが外にいれば計4カ所で観覧できるが、室内なら、ほぼ2カ所でしか見られない(パンダの位置によっては、3カ所目のエリアでも少し見えることがある)。

西園にあるこのパンダ舎は、2020年に完成した(参照:『シャンシャンに弟妹?上野「新パンダ舎」の底力』)。東園のパンダ舎に比べ広く、シンシンと双子の3頭が同じ部屋で暮らしていても、今のところ問題ないそうだ。

双子は2022年1月に初公開された。観覧には、ずっと抽選制が採用されている。1月に3日間だけ公開された際の倍率は平均348倍に上った。その後は、双子の公開時間が延びて、当選者数も増えたので、倍率は大きく低下している。6月の平均倍率は、土日なら約10倍だが、平日なら約3倍だ。

抽選制はしばらく続く予定。「双子の成長の状況を見ながら、慎重に時期を見極めたいと思っていますが、いずれ抽選制はなくさなければいけないと思っています。日程は未定です」(大橋課長)。

シャンシャンも公開当初は抽選で、その後、整理券制になったが、1歳になる直前の2018年6月5日から、観覧列に並べば誰でも観覧できるようになった。そのためシャンシャンの1歳の誕生日は長蛇の列ができ、筆者は3時間55分並んだ。

ちなみに、シャンシャンが5歳の誕生日を迎えた2022年6月12日は、1歳の誕生日に匹敵する人の多さだった。日曜日のうえ、コロナ対策の休園や入園制限が3年ぶりになくなったことや、シャンシャンが上野動物園で迎える最後の誕生日となる可能性があることなどが理由だろう。シャンシャンの中国行きは、コロナ禍で延期を重ねてきた。

この日、筆者が午前8時50分に上野動物園に着くと、正門前の広大な広場は、すでに人で埋め尽くされていた。最後尾に並んだが、かなり後方なので、午前9時30分に開園しても、すぐに入園できず、入園しても長蛇の観覧列に並んだ。

シャンシャンの前にたどり着いたのは、入園前に並んだ時間も含むと4時間後。シャンシャンは台の上で気持ち良さそうに眠っていた。SNSを見ると、ほとんどの人が4時間並んだようだ。シャンシャンの観覧受付を締め切るのは通常、午後4時だが、この日はなんと正午だった。

独り立ちの時期はシャンシャンが目安

双子が迎える次の大きなステップは独り立ち(親離れ)だ。独り立ちすれば、双子がシンシンと遊んだり、母乳を飲んだりすることはなくなる。シャンシャンの場合は、1歳半になる2018年12月12日の約1カ月前、11月13日からシンシンと離れて過ごす訓練を始め、同年12月10日から終日1頭で暮らすようになった。

双子をどのように独り立ちさせるかは決まっていないが、上野動物園は、シャンシャンが独り立ちした時期を目安にする方針。具体的な日程は、双子の今後の成長で判断する。

独り立ちの前か後かは分からないが、職員が双子と同じ部屋に入らない「間接飼育」の時期も迎えることになる。その後は、双子が別々に暮らすようになる見通しだ。繁殖のために中国へ行く時期は決まっていないが、いずれ旅立つ日が訪れるだろう。引き続き、成長を楽しみに見守りたい。

(中川 美帆 : パンダジャーナリスト)

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