「雑談力」こそ「人生最強の武器」である超納得理由

日本人の雑談力は世界ワースト1位(写真:amadank/PIXTA)
日本を代表する一部上場企業の社長や企業幹部、政治家など、「トップエリートを対象としたプレゼン・スピーチなどのプライベートコーチング」に携わり、これまでに1000人の話し方を変えてきた岡本純子氏。たった2時間のコーチングで、「棒読み・棒立ち」のエグゼクティブを、会場を「総立ち」にさせるほどの堂々とした話し手に変える「劇的な話し方の改善ぶり」と実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれている。
その岡本氏が、全メソッドを初公開し、15万部を超えるベストセラーとなった『世界最高の話し方 1000人以上の社長・企業幹部の話し方を変えた!「伝説の家庭教師」が教える門外不出の50のルール』に続き、このたび『世界最高の雑談力 「人生最強の武器」を手に入れる! 「伝説の家庭教師」がこっそり教える 一生、会話に困らない超簡単50のルール』を上梓した。
コミュニケーション戦略研究家でもある岡本氏が「『雑談力』こそ『人生最強の武器』である超納得理由」について解説する。

「コロナによるコミュ力不調」が増加している

「最近、どうも口の回りも頭の回転も鈍くなった」「リモートで、部下や上司とのコミュニケーションがうまくいっていない」「人と話すのが苦手になった」そんな声をよく聞くようになりました。

コロナ禍で人との接触が制限され、長引くマスク・リモート生活で、コミュニケーションに「課題感」を持つ人が増えています

政府の直近の孤独に関する調査によると、コロナ禍でなんと、67.6%の人が、「直接会ってコミュニケーションをとることが減った」と答えました。それに伴い、対人力、対話力も低下し、孤独感を覚える人も増えています。

この「コロナによるコミュ力不調」を打破するカギとなるのが、ズバリ、「雑談力」なのです。

「雑談」には実に多くのメリットがあります。まず、雑談や会話など、話をすることは、脳内ホルモンを分泌させ、脳や身体の活性化につながるとされます。

気分のいい会話は、脳内に「ドーパミン」「オキシトシン」「エンドルフィン」といった刺激・快楽ホルモンを放出させ、健康や幸福感を高めてくれるからです。雑談にはまるで「万能薬」のように、人の苦しみや悩みを和らげる効果があります

じつは「雑談」が職場の潤滑油だった!

たとえば雑談には、こんな効能があることが知られています。

・見知らぬ人との「気楽な会話」は気分を上げる
・「つながり」を感じ、孤独感が和らぐ
・「幸福感」が上がる
・人に対して「共感力」を持って接することができるようになる

雑談のメリットは、個人の健康や幸福感を高めるにとどまりません。コロナ禍の中で、じつは「雑談」が職場の潤滑油であり、思いがけないイノベーションを生む源泉であったことに企業も人も気づきはじめました。

偶然の出会いによる会話は、社員の「コラボレーション」「創造性」「イノベーション」を高めることが知られています。人と人との摩擦熱が、組織に火をつけ活性化していくというわけです。

日本の職場では「おしゃべりは無駄」という空気感が根強くありますが、アメリカのラトガーズ大学などによる調査では、「オフィスのおしゃべりのメリットは、デメリットを大きく上回る」という結果でした。

雑談により「社員の気分が上がり、助け合おうという機運が高まる」のだそうです。とくに昨今のリモートワークの普及により、社員間のつながりの希薄化が進み、「接着剤」としての雑談の役割が大きく見直されているのです。

雑談や会話は、「人間関係のイロハを学ぶ大切なトレーニング」であると同時に、「人と人をくっつける磁石」。一連の研究を行う行動科学者、シカゴ大学ブース・ビジネススクールのニコラス・エプリー教授はそう形容しています。

しかし、これだけメリットはあるのに、雑談にビビり、「恐怖感」さえ覚える人は少なくありません。なぜ雑談、とくにあまり知らない人との話は難しいのか。それは、何より「人は拒絶されることに、とてつもない恐怖心を覚えるから」にほかなりません。

人からの拒絶は「自らが群れから排除されるリスク」を意味するので、人は人から拒絶されることを極端に恐れます。そうした拒絶に、人は身体を傷つけられるのと同じぐらいの苦痛を感じるのだそうです。

世界で断トツに「コミュ力がワースト1位」の日本

そもそも、人類は脅威から身を守ることで生き抜いてきました。

「敵を避けること」が「友達や仲間をつくること」よりも生存に直結するので、簡単には人とつながれないようにできています。安易に人を信用して、心を許してしまうことには、リスクを伴うからです。だから、知らない人の雑談や会話のリスクや居心地の悪さを過大視し、その楽しさや充実感を過小視してしまう。

シカゴの通勤電車の中で、知らない人に話しかけるという実験をしたところ、「当初、多くの人が躊躇し、嫌がったものの、実際に話しかけてみたら、予想以上に楽しかったという人が大半だった」という結果でした。

とくに、リスク回避志向の高い日本人はとりわけ、雑談への苦手意識が強く、世界でも「おしゃべり、とくに知らない人との会話が苦手な国民」ということが知られています。

大手旅行サイトExpediaの調査では、機内で知らない人に話しかける割合は、日本人はたった15%で、堂々のワースト1位でした。トップのインド(60%)、メキシコ(59%)、ブラジル(51%)、タイ(47%)、スペイン(46%)と比べても、その差は歴然です。

ちなみに日本以外の下位4カ国は、韓国(28%)、オーストリア(27%)、ドイツ(26%)、香港(24%)で、日本とは10ポイント近くの差がありました。

「飛行機の中で、頭上の棚に荷物を入れるのを手伝うか」という問いに、オーストラリアやドイツ、スイス、オーストリア、アメリカはほぼ半数の人が「手伝う」と回答しましたのに対し、日本人は24%と世界最低でした。

一方で、機内の迷惑行為に対して「何も言わずに黙っている」と答えた人の割合は39%と、世界一「我慢強い」一面も明らかになりました。

海外の飲食店や職場などで、人々が気軽に言葉を交わす姿を見ていると、「日本人は頭抜けて雑談が苦手な国民である説」も、「さもありなん」と感じてしまいます。

その理由としては、まず、「雑談が無駄」であるととらえる風潮が強いということが挙げられるでしょう。そもそも、「以心伝心」「上意下達」「無口上等」という文化の下で、コミュニケーション「技術」「スキル」を磨く機会がほとんどありませんでした

かつては、他人とのかつては隣近所との付き合いや世代の違う人々との交流の中から、雑談術を学んできたわけですが、核家族化、都市化の進展で、そうした場も減ってきています。「飲ミュニケーション」も今どきはなかなか難しい。そうした流れの中でのコロナ禍、ということで、日本人の雑談力は低下傾向にあるというわけです。

日本人は世界の中でもとくに「幸福感が低い」ことで有名ですが、こうした閉塞感や不安の裏にある要因のひとつが、「人とのつながり」の希薄化です。

じつは人の幸福感や健康を決定づける第一の要因は、お金でも仕事でもなく、「人とのよいつながり」です。つながりがあるかどうかは、心臓病やがんの予後、血糖値、肥満度にまで影響を与えます。

これは無数の科学的研究から結論づけられている真理ですが、日本では、「つながり」が地域や家族、会社などの「しがらみ」と同一視され、煩わしいと考えられがちです。

そうした「しんどい束縛」を、「心地いいつながり」に進化させていくことが、これからの不透明で不安な時代を生き抜くカギになるでしょう。

「雑談」で「弱いつながり」を上手につなげていく

「会社」「家族」「地域」のように、「すじこ」のようにべったりとした関係性でなくても、まるで「くもの巣」のように、細くても、複数のネットワークにつながっておくことで、「おひとりさま」でもたくましく生きていけるのです。これが社会学でいうところの「弱い紐帯(つながり)」です。

スタンフォード大学の社会学で高名なマーク・グラノベター教授が唱える「家族や親友、同じ職場の仲間のような『強いネットワーク(強い紐帯)』よりも、ちょっとした知り合いなどの『弱いネットワーク(弱い紐帯)』が価値ある情報伝達には重要である」という考え方です。仕事なども、そこまで仲良くない人のツテのほうが見つかりやすいんだとか。

近くのお店の常連や近所の人などとの何気ない短い会話や声掛け、趣味を通じたゆるい人間関係。そういった「弱いつながり」の中でも、自分の存在を認めてくれたり、手を差し伸べてくれたりする人がいてくれるだけで、「幸福感」はぐんと上がります。

まさに、「雑談」は「くもの糸」というわけです。上手に張り巡らせれば、人生はもっと安定し、安心感をもたらしてくれるものなのです。

「雑談力・会話力」は決して才能ではなく、誰でも学べ、あっという間に上達できるスキルです。不透明な時代を生き抜くカギとなるこの「人生最強の武器」をみなさんも手に入れてみませんか

(岡本 純子 : コミュニケーション・ストラテジスト)

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