地銀の大株主に出現「村上系ファンド」の腹づもり

2022年の山梨中央銀行の株主総会招集通知の大株主欄。昨年は記載のなかった「シティインデックスイレブンス」の名前があった(写真:編集部撮影)

地方銀行の経営者にとって決して無視できない動きだろう。

村上ファンド系の投資会社であるシティインデックスイレブンス(以下シティ)が、地銀に触手を伸ばしている。

5月24日に公表された、山梨中央銀行の株主総会招集通知。大株主の欄に、1.92%の株式を保有する第7位の大株主としてシティの社名が記載されている。5月30日に公表された滋賀銀行の招集通知にもシティが登場した。1.67%を保有する第9位の大株主だ。

これ以外にも東洋経済の調査で、シティはさらに3つの地銀の株式を保有していることがわかった。

財務体質は優良だが、株価水準は著しく低い

1つ目は長野県を地盤とする八十二銀行。シティは1.36%を保有する13位の大株主だ。2つ目は秋田銀行で、0.94%保有し同じく13位に位置する。最後は東京きらぼしフィナンシャルグループ(以下、きらぼし)。保有比率は1%で、こちらは12位だ。

東洋経済の調査によると2021年9月末時点で大株主にシティの名前がなかったことから、地銀への投資は最近になって開始したようだ。

シティが投資した地銀は、自己資本比率の高さが目立つ。全国地方銀行協会によれば、地銀平均の自己資本比率は国内基準行で9.92%、国際統一基準行で14.23%。きらぼしを除く4行は、平均値を超える財務基盤を誇っている。

株価も著しく安い。PBR(株価純資産倍率)は0.1~0.2倍台と、解散価値の目安である1倍を大きく割っている。割安に放置された株式を取得して余剰資本を生かした株主還元を要求し、株価を向上させる出口戦略をとりうるだろう。

シティの狙いは株価水準以外にもありそうだ。東洋経済の取材に対して、村上世彰氏はこう話す。「(機関投資家である)生命保険会社が、地銀の株式を売り始めた。安定株主を失えば、株式市場と向き合わざるをえなくなる」

地銀の大株主として名を連ねながらも、株式の売却を進めているのが日本生命保険だ。

2020年度末時点で八十二銀行株を1700万株保有していたが、2021年度末には1360万株に減少。同様に秋田銀行株も、保有株式数が1年間で62.5万株から43.7万株に減った。安定株主の存在感が低下すれば、シティのようなモノ言う株主の声が通りやすくなる。

なぜ、きらぼし銀行の株式を保有しているのか

一方で、5つの地銀の中で特異なのがきらぼしだ。自己資本比率は5行で唯一、地銀の平均値(9.92%)を割っており、株主還元を一層強化する余地は限られる。ある地銀役員は「再編を期待した投資だろう」と指摘する。

きらぼしは再編の観測が絶えない(写真:記者撮影)

シティには再編をめぐる「成功体験」がある。昨年にSBIホールディングスがTOB(株式公開買い付け)を行った新生銀行だ。シティはTOBの進捗と並行して新生銀株を買い進め、12月には共同保有者と合わせた保有比率が9.16%にも達した。その後TOBの成立を受け、シティは全株式をSBIに売却した。

銀行業界初となる敵対的買収が成立したことについて、村上氏は「金融庁もマーケット中心主義へと舵を切った」と評価する。企業価値向上に資するなら、金融庁は再編を推奨すると見ている。

きらぼしの再編相手としては、横浜銀行と東日本銀行を傘下に持つコンコルディア・フィナンシャルグループが考えられる。折しも、昨年8月にはストラクチャードファイナンスなどの分野において、きらぼし銀行とコンコルディア傘下の横浜銀行が業務提携を発表した。

きらぼし銀と東日本銀は同じ東京都が地盤で、両者の再編観測は浮かんでは消えを繰り返している。仮に再編が成就すれば、シティにとっては新生銀行に次ぐ「二匹目のどじょう」となる。

シティによる株式保有で何が起こりうるのか。村上氏は地銀株の保有についてこう述べた。

「地銀には3つの選択肢がある。1つ目は合併や買収が起こりうること。2つ目は非上場化すること。3つ目は企業価値を上げること」

今回投資対象となったある地銀は「すでにシティと接触を図っている」と話す。目をつけられた以上、地銀は何らかの対応に動かざるをえないだろう。少なくとも「3つの選択肢」はいずれも難路だ。

(一井 純 : 東洋経済 記者)

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