神戸の玄関、三宮は「駅前再開発」でどう変わるか

神戸三宮駅周辺では大規模な再開発が予定されている(記者撮影)

神戸市中央区には、「神戸」の地名の由来になった、縁結びで有名な生田神社が古くから鎮座する。街の中心にある三宮という駅名も生田裔神(えいしん)八社の1つ三宮神社が起源だ。神戸開港後には外国人居留地が置かれ、異国情緒を感じるスポットが随所に残る。

神戸市最大のターミナル、三宮に乗り入れる鉄道路線は複数ある。阪急電鉄と阪神電気鉄道は「神戸三宮駅」、神戸市営地下鉄西神・山手線、ポートライナーは「三宮駅」の名称で、JR東海道本線(神戸線)の「三ノ宮駅」を囲むように位置していて、少し南には地下鉄海岸線の「三宮・花時計前駅」もある。各駅は地下街「さんちか」でつながっている。

神戸の交通の結節点

JR三ノ宮駅は京阪神を走り抜ける新快速などの通勤電車だけでなく、山陰方面の特急「スーパーはくと」、特急「はまかぜ」がディーゼルエンジンを響かせて発着。阪急神戸本線と阪神本線はそれぞれの大阪梅田駅とを結ぶほか、神戸高速鉄道・山陽電気鉄道経由で山陽姫路駅に直通する。阪神は阪神なんば線と近畿日本鉄道の奈良線を経由して近鉄奈良駅とも直結している。

地下鉄の西神・山手線に乗れば、山陽新幹線の新神戸駅までわずか2分。その先は2020年6月に市営化されて運賃が大幅に下がった北神線で、谷上駅で有馬温泉・三田方面の神戸電鉄有馬線と乗り換えることができる。一方、南へ延びるポートライナー(神戸新交通ポートアイランド線)は大型クルーズ客船が接岸する神戸ポートターミナル、人工島のポートアイランド、神戸空港への主要なアクセス手段だ。

さらに駅前の複合ビル「ミント神戸」の1階に「三宮バスターミナル」、JR神戸線の高架下には神姫バスの「神戸三宮バスターミナル」があり、淡路島や県内外の都市を結ぶ高速バスがひっきりなしに発着している。周辺には神戸市バスなどの一般路線バスの乗降場も多い。神姫バスは市内の主要観光地を巡る「シティーループ」、ウォーターフロントの連節バス「ポートループ」も運行している。

このように鉄道6駅とバス乗降場が集中し、市民の日常生活だけでなく、観光やビジネスの面でも交通の一大結節点となっている三宮だが、各路線の乗り換えは旅行者にとって難解なのが実情だ。その三宮がいま、再開発プロジェクトで大きく変わろうとしている。

神戸市は2018年9月に策定した再整備の基本計画で「6つの駅の改札階が、地下・地上・デッキの3層レベルにあることや、路線バス、中・⻑距離バスの乗降場も路上に分散しており、乗換動線が⼀⽬で判断できないといった課題を抱えている」と指摘。6つの駅を1つの⼤きな「えき」と捉え、周辺の「まち」とつないで回遊性を高める方針を示した。

駅前の三宮交差点を「三宮クロススクエア」の中心として「神⼾の『顔』にふさわしい空間を形成する『象徴ゾーン』」と位置付けるという。交通面では各路線同士や、新たに整備するバスターミナルとの乗り換え利便性を向上させる考えだ。

国土交通省と神戸市が2020年3月にまとめた事業計画によると、新たなバスターミナルはミント神戸の東側に位置する雲井通5・6丁目エリアの再開発ビルと連携して1期・2期と段階的に整備。1期では駅周辺に分散する中・長距離バスの乗車バス停を一部集約する。鉄道駅と新バスターミナルは道路上空を活用したデッキなどで接続する。

阪急の駅ビルがランドマークに

2021年4月、阪急神戸三宮駅と一体になった高さ約121mの超高層ビル「神戸三宮阪急ビル」が開業し、新たなランドマークとなった。商業施設「EKIZO(エキゾ)神戸三宮」やオフィスが入り、高層階に阪急阪神ホテルズの「レムプラス神戸三宮」がオープンした。10月には北側の「パイ山」「でこぼこ広場」の愛称で親しまれた「さんきたアモーレ広場」がリニューアルした。

2022年3月には、JR西日本と都市再生機構(UR)西日本支社、神戸市がJR三ノ宮新駅ビルの開発計画の概要を発表した。商業施設、オフィス、ホテルからなる地上32階建て、高さ約160mの超高層ビルを建設する。

JR三ノ宮新駅ビルの外観イメージ(画像:JR西日本)

総事業費は約500億円。着工は2023年度で、2029年度の開業を予定する。商業施設やオフィス、約250室のホテルのほか、駅前広場上空にデッキを整備する。発表資料で商業施設は「『神戸ならでは』の価値を提供」、ホテルについては「神戸ならではの多様な文化を体験」と、「神戸ならでは」という表現を強調している。

さらに2022年6月、雲井通5丁目地区の再開発計画がより具体的に明らかになった。バスターミナル整備の1期にあたり、神戸市勤労会館と中央区役所、商業施設「サンパル」などが建っているエリアだ。

新バスターミナルを整備

こちらは地上32階、高さ約163mで、低層部分に国が中・長距離バス用の新ターミナル、神戸市が1800席程度の大ホールや図書館などを整備する。高層階ではブライダル大手のテイクアンドギヴ・ニーズがインフィニティプールなどを備えた「ラグジュアリーブティックホテル」を展開するという。国道2号に沿って新設する歩行者デッキとは2階レベルの「屋外歩廊空間」でつながる。完成は2027年度ごろの予定だ。

雲井通5丁目地区の南西から見た外観イメージ(画像:雲井通5丁目再開発株式会社)

工事に伴って、中央区役所は市役所西側の3号館跡地へ移転、7月19日から新庁舎で業務を開始することが決まった。勤労会館内の三宮図書館も6月末で閉館、三宮フェリーターミナル近くの旧生糸検査所の建物を活用したデザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)へ仮移転する。

大阪梅田の「うめきた2期」をはじめ、全国的にターミナル駅周辺の再開発プロジェクトが進行中だ。三宮駅前は阪神・淡路大震災からの復興を優先したため、機能更新が遅れたとの指摘がある。

神戸市の担当者は「三宮は六甲山地と神戸港の間に位置していることから、自然との調和や開港以来の国際性、進取の気性といった『神戸らしさ』を街づくりに生かしていきたい」と話す。そのうえで「民間中心で開発する建築物と広場や道路といった公共空間との官民連携の整備によって、人が主役の居心地のよい場所をつくっていく」と強調した。交通の利便性改善にとどまらず、周辺の自然や観光資源を生かして、東京や大阪などほかの大都市にはない再開発が進められるかがカギになりそうだ。

(橋村 季真 : 東洋経済 記者)

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