「相続のプロ」が父の相続をやって節税できた割合

相続のプロである税理士が、父の相続をやってみて節税できた割合はどれくらいだったのでしょうか。(画像:書籍から一部抜粋)
相続税の節税対策で効果をあげるには、とにかく早く、かつ計画的にはじめることが定石です。しかし、6,000件以上の相続税を申告してきた税理士が、父の相続税の節税対策を行ってみて気づいたのは計画どおりにはいかない現実でした。
本稿では相続税節税のリアルについて、ランドマーク税理士法人・清田幸弘氏の新著『相続専門の税理士、父の相続を担当する』から一部抜粋、再構成しお届けします。

父が亡くなる20年以上前から準備

私の生家は、400年以上続く農家で、代々、山林や農地を受け継いできました。

父はまだ小学生だったときに、先代(祖父)から土地を譲り受けています。当時の民法は、「長男が跡取りとして財産のすべてを受け継ぐ」ことを認めていたため、「相続」を経験することなく、父は早世の先代に代わって、家長になったわけです。

父にとって、先代から受け継いだ農地、土地、山林を守るのは当然の役目だったはずです。

ですが私には、父が亡くなる20年以上前から、税理士の知見として、

「このまま土地を所有し続けると、将来、相続手続きが難航する」

「土地をそのまま守り続けることが、結果的に家族に不利益をもたらす可能性がある」

「このまま農業を続けても、事業として成立しない」

と、危機感を抱いていました。

父は農地のほかに、高低差が20m以上もある山林といった「問題地(有効活用ができない土地のこと)」や「行政によって開発を制限されている土地」を所有していました。

こうした空き地は、

「土地としての評価が低い(売却しにくい)」

「収益力がない」

「固定資産税がかかる」

「維持費、管理費がかかる」

といった理由から、不良資産になります。土地を持っていても、現在の税制では、相続税や固定資産税が重くのしかかり、何も対策を講じなければ、資産は目減りする一方です。

一般的に、都市近郊農家の農業所得は、さほど多くありません。

「現預金はない。収入も少ない。けれど、利用価値の低い土地だけはたくさんある」という実情を改善しなければ、「相続税を払うこと」も、「相続手続きをスムーズに進めること」も難しくなることが私には予想できました。

そこで私は、父と相談をして、「父がまだ元気なとき」から、

「問題地の解消」

「農業に代わる現金収入の確保(賃貸事業)」

「不動産管理会社の設立」

「生前贈与」

「遺言書の作成」

など、「相続対策(相続税対策)」と「相続税の申告、納税の対策」に取り組みはじめました。その結果、相続税を「約30%」減額させることに成功しました。

相続対策は父が亡くなる20年以上前から

私たち家族は、父が亡くなる20年以上前から相続対策を行ってきました。
相続には、家族の「感情」が関わってきます。感情を共有するのは時間がかかります。また、相続財産を評価し、「誰にどの財産を相続させるのか」を決め、相続対策をするのも時間がかかります。

相続は死後に発生するため、家族が元気でいるときは、つい先延ばしにしがちです。

ですが、相続のタイミングは、いつやってくるかわかりません。不慮の事故や病気など、突然そのときがやってくるかもしれない。認知症などを患って、正常な判断ができなくなるかもしれない。

そうなってからでは、遺言書の作成も生前贈与も、大きな節税対策もできません。

早く相続対策をはじめたほうがいい理由は、もうひとつあります。「毎年、税制が改正される」からです。将来的には、「相続時精算課税制度と暦年贈与のあり方が見直される」とも言われています。

仮に、暦年贈与がなくなれば、「110万円までの非課税枠を使い、少しずつ財産を贈与する」ことはできなくなります。

相続税の税制が改正されると、多くの場合「増税」が予想されます。税負担を軽くするためにも、相続対策は早めに取り組むべきです。

今回、父の相続に関しては、ほぼ、計画どおりに進みました。「ほぼ」としたのは、一部、計画外の事態があったからです。父の生前、「父が所有する土地に企業の独身寮を建設する」という話が持ち上がり、契約を進めていました。

ですが父が亡くなったために、急遽、私の名義で建設することになったのです(結果的に、私の相続対策になっています)。

今回の相続を自己採点してみると?

専門家としての知識、経験を総動員して、しっかり対策をとり、準備したけれど、それでもすべて計画どおりにはいかない。人はいつか死ぬ。でもそのいつかは誰にもわかりません。それだけ相続は一筋縄ではいかない、難しいものであるということです。

(清田 幸弘 : ランドマーク税理士法人代表税理士)

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