自民「政治資金パーティー」が映す権力争いの内情

自民党の各派閥はそろって岸田政権の支持を打ち出しているが……(写真:Neil Hall/ Bloomberg)

複雑化する権力闘争の構図

夏の参院選をにらみ、自民党の6派閥は4月中旬から1カ月あまりの間に、相次いで政治資金パーティーを開催した。各派閥はそろって岸田文雄政権支持を打ち出し、表向きは総主流派態勢の大合唱だったが、それぞれの会合では、主流派と反主流派による権力闘争の複雑さもにじんだ。

各派閥が国政選挙をにらんで、パーティーで資金集めをするのは永田町の風物詩。ただ、今回は岸田政権誕生後初となる派閥も多く、開催順や、それぞれの会合での各実力者の言動が注目されていた。

先陣を切ったのは4月14日の麻生派(志公会=49人)で、しんがりは5月18日の総裁派閥の岸田派(宏池会=45人)。その間、4月15日森山派(近未来政治研究会=7人)、同26日茂木派(平成研究会=54人)、5月16日二階派(志帥会=42人)、同17日安倍派(清和政策研究会=93人)の順で、そろって「自民結束による参院選勝利」へ気勢を上げた。

現在の岸田政権は岸田、麻生、茂木の3派が主流派で、森山、二階両派が反主流派との位置づけ。最大派閥の安倍派は表向き主流派だが、反主流派とも連携するという微妙な立場だ。ただ、党内影響力では安倍派が群を抜き、裏舞台での権力闘争の構図を複雑化させている。

トップバッターとなった麻生派は、会長の麻生太郎副総裁が「歴史を振り返れば参院選で負けたのを境に、次の選挙で大きく政権が動いた。負けるわけにはいかない」と強調。これに対し岸田文雄首相は「志公会(麻生派)の先生方は政権において、ど真ん中で支えていただいている」と熱いエールで応えた。

続いて、翌15日は森山裕総務会長代行が会長に就任して初となる森山派のパーティー。森山氏はロシアによるウクライナ侵攻について「努力している首相を全力で支えていくことが大切だ」と力説した。

同派はわずか7人の党内最少勢力だが、岸田首相やの山口那津男公明党代表に加え、自民党3役も含め約1200人を集める盛会ぶり。森山氏は岸田首相の歴代最長となった党国対委員長時代の手腕にも言及し「『信なくば立たず』を体現する政治家。与野党議員から高い信頼を得て、政権を支えてきた」と高く評価してみせた。

三番手となった茂木派は、会長の茂木敏充幹事長がコロナ禍やウクライナ危機に絡めて「政権の安定が不可欠。夏の参院選で勝利しなければならない」と主流派として自民全体での支援と協力を呼びかけた。

「最も仕事のできる男」と「最も話を聞く男」の蜜月

幹事長派閥とあって、パーティーには岸田、麻生両氏に加え、安倍晋三元首相も出席、岸田首相は茂木氏を「『永田町で最も仕事のできる男』と持ち上げ、『最も話を聞く男(首相)』との補完関係で新しい時代に向けて政治の責任を果たしたい」と満面の笑顔で場内を沸かせた。

一方、大型連休後の一番手となったのは二階派。岸田首相との対立で冷や飯組と揶揄されているが、会長の二階俊博元幹事長は「政権の安定とこれからの日本国の発展のために、わがグループ総動員で協力したい」とことさら政権支持をアピールして見せた。

駆けつけた岸田首相は二階氏について「与党であれ野党であれ、信頼関係を大事にする。今も、首相官邸より二階氏に要請や相談に来る人が圧倒的に多いゆえんだ」とエールを交換。パーティーには安倍、茂木両氏も参加したが、岸田、茂木両氏は、二階氏が党本部5階に陣取っているのに、そろって「党本部6階」と言い間違うなど、双方の隔たりも露呈した。

最も盛会だったのは二階派の翌日の安倍派パーティー。ホスト役の安倍氏は「岸田政権をあらゆる場面でしっかり支える決意だ」と主流派としての立場を力説。会場には各派幹部が集結し、最大派閥の威力も見せつけた。

岸田首相も、わざわざ開会時間前に顔を見せ、「自民党の宿願である憲法改正など大きな課題に向けて、安倍会長や皆さまに力添えをいただきたい」と最大限の気配りを示し、壇上で安倍氏と両手でグータッチして親密ぶりをアピールした。

そしてしんがりを務めたのが総裁派閥の岸田派。前日の安倍派と同じ会場で開催された会合には麻生、茂木両氏や遠藤利明選対委員長ら党幹部や派閥代表が参加し、それぞれのあいさつで「さすがは総裁派閥、これまで見たこともない盛会ぶり。(ウクライナ危機で)世界が喝采する決断をした総裁だからこそだ」(麻生氏)などと口を極めてほめたたえた。

これに対し、首相就任後も会長を続ける岸田氏は「新しい時代を切り開くには政治の安定が必要だ。参院選は何としても勝たなければならない」と訴えるとともに「総裁派閥であることに大きな責任を感じなければいけない」と派内の結束も求めた。

今回の各派パーティーはコロナの感染対策のため、コロナ前のような大規模な形式の開催はできず、いずれも参加者が着席するセミナー形式。このため、各派の実力者らが会場内を練り歩いて参加者と懇談する場面もほとんどなく、乾杯やガンバローの場面でも司会者が「声を出さずに心の中で叫んでほしい」と要請するなど盛り上がりに欠けた。

岸田首相の滞在時間が長かったのは?

そうした中で、すべてのパーティーに出席した岸田首相だが、顔出しのタイミングや滞在時間で差異を目立たせた。滞在時間が最も長かったのはやはり安倍派で約25分間。次いで麻生派と二階派が同じ約23分間。茂木派は約11分で、森山派はわずか約7分で退出した。

最も盛会だった安倍派は、同じ会場だった岸田派の「4倍以上の参加者」(関係者)で、最大派閥の集客力を見せつけ、茂木氏は「まるで党大会」と大仰な表現で持ち上げた。ホスト役の安倍氏は次々登壇する実力者と満面の笑みでグータッチを繰り返し、最強のキングメーカーとしての存在感アピールに腐心した。

ただ、岸田首相を始め来賓が競い合うように安倍氏の首相時代の「業績」をほめたたえる中、冷水を浴びせたのは、最大派閥の元領袖の森喜朗元首相だった。

体調不良で杖を突き、ホテル職員らに両脇を支えられて登壇した森氏。しかし、大きな声でいきなり「私は(安倍派の)会員ではなく、招待状も来なかったが、何年ぶりかで押しかけた」と発言して会場をどよめかせた。

さらに、「この派閥はほとんど私が作った」と力説したうえで、「(派閥の)数を誇っているのが一番危ない」と最大派閥領袖となった安倍氏を牽制。さらに、派閥の創設者が福田赳夫元首相(故人)だったことも持ち出し、清和政策研究会という派閥の名称についても「『清和会ではどうか』と相談したら、福田さんは『それでは派閥色が強すぎる』として現在の名称になった」と解説した。

その際の安倍派の議員席をみると、安倍氏側近が幹部席に結集する中、福田達夫総務会長は最末席に陣取って、森氏のあいさつにいちいちうなずき、それとなく安倍氏との距離感をにじませた。

その福田氏の周囲は側近議員が固め、岸田首相があいさつで「党では福田総務会長に支えられ……」と話し出すと、「そうだ!」という拍手で場内をどよめかせ、岸田首相のあいさつを中断させる場面も。これには安倍氏も苦笑いするばかりだった。

暗に安倍氏を牽制してみせた岸田首相

その一方で、各派の締めくくりとなった岸田派パーティーで岸田首相は「(宏池会として)30年ぶりに総裁となった」と繰り返した。

そのうえで、自らが初当選した際の派閥会長だった宮澤喜一元首相(故人)に触れ、「『(宮沢氏からは)権力は恐ろしいもの。謙虚で丁寧に使わなければならない』と教わったが、今その言葉をかみしめている」と暗に安倍氏を牽制してみせ、総裁としての矜持をアピールした。

岸田派パーティーでは、岸田氏が総裁選での売り物の「聞く力」を示す小道具としたノートをお土産として配布。その裏表紙に「自由民主党総裁・宏池会会長 岸田文雄」と印刷したあたりも、「まさに意味深」と波紋を広げた。

(泉 宏 : 政治ジャーナリスト)

ジャンルで探す