ロシア ウクライナに軍事侵攻

いよいよ「すべてのバブル」が崩壊しかかっている

ハイテク株の構成比率が高いナスダック市場だけでない。筆者は「すべてのバブルが崩壊に向かっている」と警告する(写真:ブルームバーグ)

もはや世界中の株式市場のバブルが崩壊したのは、誰の目にも明らかである。認めていないのは市場関係者くらいのものだろう。

日本株に対する株式アナリストの「6つの間違い」

日本の株式アナリストの間違った議論の例はたくさんある。以下、代表的なものを6つほど挙げ、筆者の見解を示そう。

① 日本株はアメリカ株に比べて下げ幅が小さく底堅い。だから買うべきだ。

違う。今はドル高円安になっており、ドルベースで見れば、同程度に下がっている。

日本以外の投資家はドルベースで判断する。今後ドル高が進んでドルベースの日経平均株価はさらに下がることが予想されるから、海外投資家はさらに売ってくるはずだ。

② 岸田文雄首相がロンドンの金融街で「Invest in Kishida(岸田に投資を)」と一席ぶったように、同政権もついに「株式市場フレンドリー」へと政策を切り替える気配が出てきた。「アベノミクスの否定ではなく進化型」という位置づけは、アベノミクスを評価している海外投資家の期待を呼び込む。

ありえない。岸田政権の「新しい資本主義」も「Invest in Kishida」も、中身がゼロであることが唯一の長所だ。アベノミクスは、海外投資家にとっては、今では日本銀行を追い込んだだけの政策という評価か、すでにアベノミクスなど忘れてしまったかのどちらかだ。

③ 金利差拡大による円安で世間はパニックだが、欧米の年率10%近いインフレと違って、日本はインフレが起きていない。だから、むしろ日本は欧米よりも前途有望だ。

企業収益で見れば、明らかなマイナス。企業物価は、世界と同じ40年ぶりの10%近い水準。それを消費者に転嫁できないから、消費者物価が上がっていないように見えるだけだ。その分、企業収益が減っており、消費者物価が上がるのは時間差でこれから、というだけだ。

④ 主要国では日銀だけが利上げをしていないし、インフレにもなっていない。それゆえ、日本だけがスタグフレーション(不況下のインフレ)にならない。また、国債とのイールドギャップ(投資利回りから長期金利を引いた差)で見れば、株式の配当利回り・不動産の利回りは有利で、日本株・日本の不動産を買う理由がある。

金融政策の正常化ができないのは最大のリスク。アベノミクスで円安となり、かつ日銀が出口を失い、かつまったく動けない状態になっている。「日本はインフレでなくて、うらやましい」ではなく「インフレにすらならないほど経済は弱く、かつ利上げもできず、日銀は追い込まれている」。

日銀はETF(上場投資信託)の買い入れすら廃止できていない。

円安不安の個人投資家へ、証券会社がアメリカ株式の買いを勧める誘い文句も、市場関係者でない人々の常識からはかけ離れている。

アメリカ株の調整はまだ済んでいない

⑤ アメリカ株はこのところの下落により、調整はほぼ済んだ。PER(株価収益率)などで見ても、十分割安といえる領域に入ってきた。そろそろ底打ちで、買いのタイミングが近づいている。

論理的にはありうるが、現実的には間違っている。

⑥ ナスダックの下落率は大きいが、それこそが将来有望で買い時である証左だ。株価30%の下落は、これまでの企業の平均利益増加率の年15%を維持できれば、2年で取り返せる。長期には、株はつねに買いである。

2000年のITバブル(テックバブル)では、アマゾンやヤフーなどは100分の1程度まで下落した。100のときよりは1のときに買ったほうがよい。今買うよりも来月、あるいは来年買ったほうがましである。

このうち5と6については、今後、バブル崩壊のプロセスがどうなるかを描写する中で、さらにはっきりと間違い(ウソ)であることが明確になるだろう。これからのバブル崩壊のプロセスは、あとで述べよう。

さて、これらの屁理屈、この期に及んでの言い訳がちまたにあふれていることこそが、バブルがすでに崩壊していることを示している。この兆候は、ほかにもはいて捨てるほどあるが、いくつか挙げてみよう。

①上述のように言っているだけなら罪はないが、それが相場を実際に動かす売買行動になると問題だ。相場操縦に近い。

例えば、どう見ても下がりそうなときにいったん上がる。5月3~4日のFED(アメリカ中央銀行)の政策決定会合FOMC(連邦公開市場委員会)後の動きがそうだ。利上げの見通しは急激かつ確実で、記者会見のジェローム・パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長も必死だ。

当然、相場は大暴落だと思いきや、4日のアメリカ株価は大幅上昇で、NYダウは前日比932ドル高となった。しかし、翌日の5日には同1063ドル安と、この2年で最大の下落幅となった。これは明らかに主要投資家たちが逃げるために、売り場を5月4日に作っただけだ。

市場関係者は「4日は利上げの見通しが弱まったが、5日は利上げ不安が再度台頭した」などと説明したが、これこそ前述の言い訳の典型例だ。現実には、パウエル議長は翌日何も発言していないし、何の新しいニュースもなかった。

崩れた「GAFAM神話」

②バブルの際に大きく上がったものほど下がっている。ナスダックの下落はすでに最高値から一時30%超下落した。しかも、最高値はつい先日といっていい、昨年の11月だ。まだ半年も経っていない。

しかも、今のところ、本格反転の気配はない。ナスダックは誰がどう見てもバブルがはじけたのであり、日本のマザーズ市場もいうまでもない。

最初はいわゆるミーム株が大暴落した。ロビンフッダー(もう忘れられた言葉だが)たちが群がった株は、中身どおりに紙くずに近くなった。そして、次には、ユニコーンや赤字のまま期待だけで上場した銘柄たち、バブルの象徴の株がすべて大暴落している。

例えば、ウーバーは今年だけで見ても高値から約半値へ暴落しているし、配車アプリのディディ・グローバル(滴滴出行)はこの3カ月で約3分の1になっている。また、EV(電気自動車)のテスラは最高値から時価総額の約3分の1を失ったが、イーロン・マスクCEO(最高経営責任者)の奇行により下がっているわけではなく、普通にバブルがはじけただけで、今の下落割合からすれば、まだまだ下がるだろう。

③「利益が伴っていないものがほとんどの新興株と違って、アップルなどの『GAFAM』は多少高くても企業の中身はしっかりしているから安全。下落時は買いの絶好のチャンス」という神話も崩れている。時価総額が大きいため指数に対する影響も大きいが、投資家全体での損失額も当然大きく、素人個人投資家だけでなく、ほとんどの機関投資家・ファンドが含み損を抱え始めた。

上記のように、アメリカの多くの株が暴落したが、そもそもこれまでの上昇が金融緩和バブルによるものだったから、金融緩和が終われば上昇も終わる。金融市場だけでなく、実体経済を見ても状況は最悪だ。インフレは衰えを見せず、約40年ぶりの水準で、スタグフレーションになるのは必至だろう。

また、ロシアによるウクライナ戦争は日を追うごとに長期化の見通しが強まっており、どちらが優勢だろうが、世界景気にはマイナスで、インフレの長期化にはプラスに働くばかり。つまり最悪だ。

ウクライナを中心とする戦争難民の数も、これまでとは次元が違う。欧州経済は長期にわたって、この先の見通しは暗いままだ。

一方、中国のコロナ禍の再燃で世界の物流は混乱しており、これもインフレ継続要因だ。今後、中国の需要が回復しても、世界を救うまでには至らない。中国の習近平政権の手腕にも、ゼロコロナ政策をはじめ、疑問が噴出してきた。中国さえ将来は不透明だ。

つまり、世界中、プラスの見通しはどこにもない。そもそも、新型コロナウイルスが世界中に蔓延し始めた約2年半前に金融緩和バブルは崩壊しかけていた(「2020年、意外なところからバブル崩壊は始まる」参照)。

その後、コロナ対応などの名目で、アメリカを中心に世界の主要国が金融・財政政策を「限界以上に」やったことで、バブルは最後の大膨張をしていただけだ。だから、バブルがはじければリスク資産が暴落するだけでなく、実体経済も先送りしてきた損失を現実に受け入れることになる。株式市場の現状は最悪、見通しも最悪、実体経済も最悪だ。

「バブルの逃げ場」もなくなった

そして、この最悪状態は長期化必至だ。もはや世界中どこでもそうだから、逃げ場がない。金融市場での逃げ場を失ったマネーが、代替資産の市場に逃げ込めるかというと、それも難しい。すでにそれらの一部は「絶賛崩壊中」だ。例を挙げよう。

①いうまでもなく、暗号資産の代表であるビットコインは暴落している。昨年11月には6万7000ドル台をつけていたが、一時は3万ドルを割れた。一時的に戻っているが、再度暴落するだろう。

ほかの暗号資産などはさらに悲惨で、マイナーなものは崩壊状態だ。今回の暴落の1つのきっかけは、「ステーブルコイン」と呼ばれる、ドルとの交換を保証している(と称していた)ものが、暴落したことがある。

理由はもちろんドルの裏付けを十分に持たずに、バブルを作っていたからであり、破綻回避のために保有するビットコインを大量に売ったことで、ビットコインの暴落が加速した。今後も、バブル崩壊スパイラルが何重にも起こるだろう。暴落スパイラル、暴落の伝染、投資家の恐怖の伝染は、バブル崩壊時のいちばんの特徴である。

②メタバース、NFT(非代替性トークン)バブル。そもそもビットコインの価値とブロックチェーン技術とは別問題であり、目新しいもので資産バブルを作ろうとするのは、典型的なバブル末期の症状だ。

通貨になるためには、値動きがほとんどないことが必要で、為替相場が動くのは基本的にマイナスであり(だからユーロが生まれた)、ただの投機用資産であることは明白だ。メタバースをゲームの中で遊びとして利用したり、NFTを使用したりすることは、あくまで技術の利用法である。それらを取引資産とした時点で別物、バブルである。

③絵画の世界でもバブル崩壊の兆候が現れた。例えば現代アートは、アートの中でも「オークションでついた価格がその作品の価値を決める」という倒錯した市場である。ここで5月9日、現代アートとして最も有名な画家の1人であるアンディ・ウォーホル作の「マリリン・モンロー」が売りに出て、1億9500万ドル(約250億円)で落札された。

これはアメリカ絵画、および現代アートの史上最高額を大きく更新した(これまでは2017年に前澤友作氏が落札したバスキアの作品で1億1000万ドル)。この「事件」を指してメディアは、絵画マーケット、現代アートマーケットは株式市場の混乱を尻目に好調だという解説をしているが、これはまったくの間違いだ。

なぜなら、バスキアのように価格が急上昇をしてきた(前澤氏がさせた)ものとは異なり、ウォーホルのそれは、長年、絵画としての高い評価が確立した最高のものだからだ。

なぜ最高のものを「今」売りに出したのか。売り手はウォーホルのコレクターとして有名な財団であり、売却益は寄付されるという。必要に迫られて売ったわけではない。バブル崩壊の足音を悟ったのだ。

絵画投資家のプロ中のプロも「もはや売り時」と思っているのである。このモンローの本質的な価値は下がらないが、価格が2億ドルか4億ドルかあるいは1億ドルかというのはバブル度合いによる。

実際、オークションを主催したクリスティーズの想定価格は2億ドルだった。通常は、このような二度とマーケットに出てこないようなもの、最高級のものが出てくれば、想定価格の何倍もの値段で決まるものである。

実際、これまでの主要アート中での最高落札額は、レオナルド・ダ・ヴィンチの「サルバトール・ムンディ」で、2017年に4億5000万ドルだが、クリスティーズの想定価格は1億ドルだった。つまり、相場は崩れ始めた可能性がある。

バブル崩壊はまだまだ続く

もういいだろう。バブルは全面的に完全に崩壊したのである。では、これからどうなるか。まだまだバブル崩壊は続く。

株式市場の下落はまだ続くだろう。今後の底値のメドは立たない。なぜなら、第1に、バブル崩壊での暴落では価格はオーバーシュートする(行きすぎる)からだ。第2に、ファンダメンタルズ(基礎的条件)の水準がこれから下がるからだ。ではどのように?

まず、PER(株価収益率)の水準が下がる。バブル上昇期はアメリカ全体で20倍を超えていた。この「PER20倍」というのは、1株の利益が前述のように年率15%で伸び、5年で2倍になるという裏付けがあった(5年後のPERは10倍)からこそ、許されていた。

だが、成長が止まれば大幅に下がる。利益が伸びないのであれば、PER10倍は10倍のままである。だから、ファンダメンタルズからいっても、今までPER20倍の価格がついていた企業の株価は半分になりうる。

次に、誰もが知っているように、金利はまだまだ上がる。これは割引率の上昇となるから、1株利益が同じでも、株価は大きく下がる。

さらに、実は1株利益自体が伸びなくなるどころか、減少する。なぜなら、ここ数年の収益は実体経済もバブルで膨らんでいたからで、多くの企業で1株利益が減少していく。そうなると、当然ファンダメンタルズからいっても、株価はさらに下落を続けることになる。

また、債券市場の暴落も続く。金利上昇はもちろん国債の価格を下落させるが、最も価格が下落するのはハイイールド債という低格付けの「ジャンク債」市場である。これらはもともと国債の利回りが低すぎたから多くの投資家が買っていただけで、アメリカ債利回りが3%になるなら、極端にいえば不必要になり、買う人はいなくなる。

したがって、債券保有者は投げ売ると一段と暴落してしまうから売るに売れず、「発行体が破綻しなければ元本は戻ってくるから」と塩漬けにしがちだ。

こういう場合、破綻は突然起こる。例えば、債券市場の根本にあるアメリカの10年債の利回りが2%から4%に上がると、リスクプレミアムは、ベースである国債の上昇率を大きく上回って急激に拡大する。そうすると、ジャンク債の利回りは、7%をあっという間に超える。債券で利回りが7%を超えればほとんど買い手はつかないから、売ることはほぼできなくなる。

破綻の連鎖がリスク資産市場全体に広がる恐怖

ここで、実体経済が悪化すると、収益が減って返済できない発行体がまず出てくる。次に、収益が減らずとも、ジャンク債の新発市場で買う投資家がいなくなり、借換え債を発行できなくなる主体が多数出てくる。デフォルト(債務不履行)だ。デフォルトが出てくると、これらの債券を投げ売りできずに抱えていたファンドが損失を計上する。

すると、こうしたファンドへの出資者は資金を引き揚げるしかない。よって、好景気時には高いパフォーマンスを誇っていたジャンク債ファンドは、あっという間に破綻に追いこまれる。

ジャンク債市場は投資家も限られているので、破綻は連鎖する。ジャンク債を買っていたファンド側も、借り換えができなくなった発行体も破綻する。負のスパイラルである。この破綻の連鎖は、リスク資産市場全体に広がる。

かつては、株が暴落すれば、資金が「安全資産」である債券の市場に逃げ込んだものだ。今は連想ゲームだけで、実際のカネは動かない。株と債券の投資家は別主体であるだけでなく、行動原理も違うからである。

セクターローテーションをするような投資家は、要はモメンタム投資家(勢いのあるほうにつく)で、次々と新しいモメンタム(要はバブル)に乗っていって、転々としているだけだから、バブルの崩壊が始まれば、次々とすべての市場から撤退して、バブル崩壊を加速させる。

この場合、さらに悪いことに、損失を取り返すために、新しく「買う」のではなく、「新しいモメンタム」、つまり「売り」に乗るので、すべての市場で売り仕掛けが加速する。これが、リスク資産市場全体の暴落スパイラルである。

一連の流れの中では、ゴールド(金)の価格も下がるだろう。最後の拠り所は資源かもしれないだが、価格が上昇すれば実体経済にさらにダメージとなるため、資源市場も暴落する。このように、リスク資産市場全体でレバレッジが急低下し、売りが売りを呼び、暴落はオーバーシュートとなるのである。

そして、今度はリーマンショック後と異なり、量的緩和でこれを救済することはできない。この仕組みを使い切ったうえに、資産縮小を世界中の多くの中央銀行が行っているからである。これが、これから起こることである。

(本編はここで終了です。次ページは、競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)

競馬である。5月15日は牝馬の古馬中距離戦、ヴィクトリアマイル(東京競馬場第11レース、距離1600メートル、G1)が行われる。

ヴィクトリアマイルでレイパパレを本命にするワケ

豪華メンバーだが、実績、ローテーション、そしてマイルという距離、すべてぴったりなレイパパレが本命だ。

ソダシはダートを使ってきた意味がわからないし、デアリングタクトはさすがに1年ぶりでは割引で、応援止まり。

それなら、レシステンシア。このところ1200メートルの距離のレースが連続してきたが、父はマイルで悪いはずがないダイワメジャー。急に評判を落としている横山武史騎手なのも、人気の盲点でプラス。こちらも単勝を含めて狙いたい。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

(小幡 績 : 慶應義塾大学大学院准教授)

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