ロシア ウクライナに軍事侵攻

達人が教える!今こそ買いの「老舗企業株・10選」

筆者オススメの老舗企業銘柄10点とは(写真:PIXTOKYO/PIXTA)
世界全体の流れとして、企業活動にも持続可能性が重要視されている。この風潮は、投資家にとっても悪くない。サステナブルな事業であれば、地味かもしれないが将来にわたっての継続的な利益が期待できるからだ。
ではどんな企業がサステナブルだろうか。わかりやすいのは老舗企業である。歴史を生き抜いた技術やロングセラーは、これからの時代も生き抜くだろう。今回は『会社四季報の達人が教える誰も知らない超優良企業』から、筆者のオススメする老舗企業銘柄10点を紹介する。※本記事は投資による利益を保障するものではありません。

創業100年を超えた会社

「老舗株」は、創業や設立から長期にわたって存在し続けている長寿企業の株です。

有望企業の観点では、まず長期で経営が続いていることだけで十分評価に値します。長寿は、戦争、バブル経済の崩壊、金融危機、市場再編といったいくつもの危機を乗り越えた結果であり、長寿企業はそのために必要な力をもっていると評価できるからです。

また、長寿企業は、お客さんや取引先からの信頼があると判断できるでしょう。設立まもない若い企業と比べて、消費者や業界内での知名度も高いといえます。

このような長所を踏まえて、投資対象としては、危機を乗り越えて稼ぎ続ける力や、生き延びる力があるという点で、安心して長くもつことができます。

老舗株は、以下の3点を条件とします。

① 創業または設立から100年以上経っている
② ロングセラーがある
③ 歴史を生き抜いた技術や事業をもっている

ここでは、3つすべてに当てはまる株ではなく、どれかに当てはまる株を紹介します。

宮大工を起源とした技術をもつ最古参の会社

松井建設(1810)は、老舗株のなかでまず押さえておきたい銘柄。1586年の創業で、400年以上にわたって存在し続けている会社です。

創業年で見ると上場企業では最古参。神社やお寺の建築で培った伝統技術があり、近年は、学校、病院、住宅などの建築が中心となっています。

私が最初に松井建設について知ったのは、生まれて初めて読破した1998年新春号の四季報で、そこに加賀前田家の城大工が起源と書いてあり、「そんなに古い会社があるのか」と驚きました。その後、京都や鎌倉などに出かけたとき、修繕中の神社などに松井建設の幕がかかっているのを何度か見ました。

同社の唯一無二の価値は、宮大工を起源とする技術。伝統工芸の世界です。株は「儲かるかどうか」という視点で見てしまうものですが、伝統や歴史の価値も見逃せません。トレーディングカードでたとえるならレアキャラのカードのような、金銭的な価値では測れない要素があるのです。

株式会社の設立年では、松井建設は最古ではありません。日本の株式会社としては渋沢栄一がつくった国立第一銀行が最古です。国立第一銀行は第一勧業銀行になるなど再編され、現在はみずほ銀行になっています。また現存する企業として、直近まで四季報に第四銀行が株式会社の「最古」と記載されていましたが、北越銀行と経営統合して第四北越フィナンシャルグループになったことでその記述はなくなりました。

このように、設立年が古い会社は統廃合することが多いのですが、松井建設は1939年設立からずっとそのまま。創業から400年超、設立から80年超という時間が経っても、ずっと社名を変えずに存在していることに価値があるのです。

養命酒にはSDGs時代とリンクする価値が多い

養命酒製造(2540)は、薬用酒メーカーとして市場で大きなシェアをもつ知名度の高い会社です。

業績は、ここ数年は売上高100億円、営業利益6億円前後で、大きなブレはありません。自己資本比率が87.5%と高く、有利子負債も0で、経営状態は健全です。

同社の創業は1602年(慶長7年)。長野県駒ヶ根に工場があり、私も過去に見学させてもらったことがあります。まず驚いたのは、工場の敷地に縄文遺跡があること。水がきれいな土地で、敷地にも渓流が通っています。

養命酒ができた背景について工場内に説明文がありました。それによると、山道に倒れていた老人を助けたところ、お礼に秘伝の薬を教えてもらった。それが養命酒の原型とのこと。真実か伝説か判断が難しいのですが、縄文遺跡を見たあとでは本当のように感じられます。老舗企業ならではの説得力といえるでしょう。

株価上昇につながるカタリストとしては、SDGs時代に自然由来の原料でつくっていることが再評価される可能性があります。

養命酒は生薬が原料です。14種の原料のうち、唯一、マムシ由来の反鼻だけは動物性ですが、あとはすべて植物性。そのレシピが数百年受け継がれているのは大きな価値といえるでしょう。伝統、文化、日本的など、養命酒にはSDGs時代とリンクする価値が多く、そこに注目が集まれば、株価が上がっていく可能性も期待できます。

個人経営のそば屋が100年後に上場企業に

カルラ(2789)は、宮城県を中心に和食ファミリーレストラン「まるまつ」を展開している会社です。

前身はそば屋。創業者の井上政人氏は岩手県出身で、貧乏から脱却するためにブラジルに渡ろうとして、とりあえず仙台に行きました。そば屋でアルバイトをしながら渡航費を貯めるわけですが、店の従業員だった女性と結婚することになり、仙台で「丸松そば店」を始めます。その後、子どもが店を引き継いで徐々に規模を拡大し、ファミレスのチェーン展開につながっていきました。

「人に歴史あり」という言葉がありますが、店にもさまざまな歴史があります。個人経営だったそば屋が、創業から約100年後に上場企業になるという展開も老舗企業ならではの面白さ。そば専門店も展開しています。

安田財閥系の消防用ホース最大手メーカー

帝国繊維(3302)は、日本の4大財閥の1つ安田財閥の創業者・安田善次郎がつくった会社。戦前戦後の大きな社会変化のなかを、財閥系の会社がどのように生き抜いてきたのかを垣間見ることができる老舗企業です。

設立は1887年。安田財閥系は、当時もいまも金融に強いグループですが、そのなかで唯一の製造業として、麻の機械紡績から始まったのがこの帝国繊維です。製麻会社との合併などを経て、1907年に前身となる帝国製麻を設立し、1941年にいまの社名になりました。

明治時代、製麻は国の重要な産業でした。麻布は天幕、兵器や飛行機を覆う帆布などに使われ、品質のよかった同社の製品は欧州にも輸出されています。国内でも、蚊帳、畳糸、郵便物の運搬に使う袋、貨物列車の幌などに広く使われました。1903年に製造を始めた消防用ホースもその1つで、同社はいまも消防用ホースの最大手です。

帝国製麻は、戦後の財閥解体によって帝国繊維、中央繊維、東邦レーヨンに分割され、以来、帝国繊維は消防ホースを主軸とする会社として成長していきました。

ちなみに、財閥解体では、安田財閥の金融事業群も分割され、安田銀行をルーツとする富士銀行中心の芙蓉グループの形成につながります。その後、金融業界内の統廃合で、現在はみずほフィナンシャルグループ(8411)となっています。

独自技術を応用・転用して新規事業を手がける魅力

多木化学(4025)は、1885年に肥料からスタートした化学品の老舗企業です。

ベースの技術は肥料などにありますが、その技術や知見をさまざまな商品開発に応用しているのがこの会社の面白いところ。スマホの部品向け原料もつくるし、車向けの製品もつくります。バカマツタケもその1つ。これは養殖マツタケのことで、四季報によれば、2022年12月期に事業化をめざしています。

老舗の会社は、養命酒製造(2540)のように、特定のロングセラーを売り続けるケースもありますが、独自の技術を応用・転用して新規事業を手がけるケースも少なくありません。

長年培ってきた技術が老舗企業の価値の1つです。老舗というと古いやり方を伝統として守り続けているイメージがありますが、その側面をもちつつ、技術を活かして新規事業に挑戦することで新たな成長を生み出したり、時代に適応したりしているのです。

マツタケつながりの話では、「松茸の味お吸いもの」をつくっている永谷園ホールディングス(2899)も新しい挑戦で成長を生み出している会社の1つです。設立は1953年で、老舗というほどは古くありませんが、永谷家のルーツを遡ると、江戸時代中期に煎茶の製法を創案した永谷宗七郎という人にたどり着きます。永谷園を設立した永谷嘉男は、宗七郎から数えて10代目。お茶から「お茶づけ海苔」までの長い歴史が見えてきます。

「お茶づけ海苔」から始まった商品群は、味噌汁系や、麻婆春雨や広東風かに玉などの中華料理系に広がり、お茶づけ海苔とはまったくジャンルの異なるシュークリーム専門店のビアードパパも、じつは永谷園グループ。お茶づくりから始まってシュークリームを手がけるようになるという変化も、長い歴史があるからこそ。時代の流れのなかでさまざまな挑戦をしてきた足跡をもっていることも、老舗企業の魅力です。

江戸初期に打ち刃物問屋として創業

浅香工業(5962)は、スコップやショベルを扱っている会社で、ショベルではシェア5割をもっています。シェア5割はニッチトップ企業の要素ですが、それが実現したのも、長くショベルを扱ってきたからです。

同社は江戸時代に、大阪の堺名産の包丁やハサミなどを扱う打ち刃物問屋としてスタート。ショベルなどをつくるようになったのは明治時代から。6代目の浅香久平が、土木と鉱山事業が盛んになると見越して、国産初のショベルとスコップをつくったのです。

江戸時代の堺は貿易の最先端の街でした。自転車のギアや釣具のリールなどで有名なシマノ(7309)も堺生まれの会社。シマノは、自転車の変速機とブレーキ部品などで世界首位の優良株です。

バリカンの発明から始まった歴史

ロブテックス(5969)は、レンチなどの工具を製造販売する会社で、ロブスター印がトレードマーク。

同社が創業当初に手がけていたのはバリカンでした。当時、明治政府は「断髪令」を出して、ちょんまげを禁止したため、男性は定期的に散髪しなくてはいけなくなりました。

そこで、創業者の伊藤兼吉が、フランス製の馬の毛を刈る機械をヒントに、人の髪を刈るバリカンを発明。これが大ヒットして、ロブテックスの歴史がスタートしました。

その後、もう1つの柱として製造を始めたのがモンキーレンチです。同社では創業当初から、「腰が曲がるまで使える丈夫な製品」をアピールするためにエビのマークを使っており、これを商標のロブスターとし、テクノロジーと、未知や無限を意味するXを組み合わせてロブテックスという社名になりました。

自動車業界向けの鉄鋼をトヨタに販売

岡谷鋼機(7485)は鉄鋼と機械を扱う専門商社で、創業は江戸初期の1669年、名古屋の鉄砲町という町で金物商「笹屋」として始まりました。当初取り扱っていたのは、鋤や鍬などの農具や、釘、斧、鋸、金槌などの工具でした。

昭和に入ってからスクラップの貿易に力を入れるようになって海外に進出。岡谷鋼機となってからは中部地方の財界で名門として知られるようになります。その頃の力の大きさを示すエピソードとして、トヨタ自動車が経営危機に陥ったときに岡谷鋼機が助けたという話が残っており、四季報の【特色】の欄にも「中部財界の名門」と書かれています。

現在の事業は、自動車業界向けの鉄鋼が3割弱。愛知の地場に強く、販売先としてトヨタ自動車とのつながりもずっと続いています。

工作機械の取扱高で最大手の商社

ユアサ商事(8074)は産業機器や工業機械の商社。創業は1666年で、工作機械の取扱高では最大手です。工作機械の分野でトップ企業の要素をもっていますが、私が注目するのは、創業から数えて350年超の歴史がある点。同社は京都で木炭の店として始まり、その後、刃物問屋となって金物を扱い、いまは機械を扱う商社となっています。

時代の変化をとらえて成長していく歴史も素晴らしいのですが、この過程で、電池の会社も興しています。設立したのは12代目の湯浅七左衛門。1918年に湯浅電池(1992年に、ユアサコーポレーションに社名変更)という子会社を作りました。

この会社が、2004年にGSのブランドで電池をつくっていた日本電池と合併して、ジーエス・ユアサコーポレーション(6674)となります。同社は、車載用の電池や産業用電池を手がける会社で、鉛蓄電池で世界2位。ユアサ商事と湯浅電池(ユアサコーポレーション)は親会社と子会社の関係でしたが、合併を機に資本関係を解消しています。

なお、日本電池のブランドのGSは、2代目・島津源蔵のイニシャル(源蔵のGと島津のS)。初代の島津源蔵は、京都で島津製作所(7701)を創業した人で、初代が亡くなったあとに2代目が源蔵を襲名して島津製作所の社長を引き継ぐとともに、のちのGSブランドとなる鉛蓄電池を開発し、日本電池を設立しました。

ユアサ商事も島津製作所も京都生まれの会社という共通点があります。京都という土地には仏具などを磨いたり彫金したりする技術が集積していました。この技術の醸成と集結が、村田製作所(6981)や京セラ(6971)など京都発の企業につながりました。

こうした流れを紐解きながら、日本企業の強みの源泉を見ていくのも株の楽しみ方の1つです。歴史に目を向けることで、長寿企業やグローバル企業の強みがより深く理解できるようになります。

設立時の名前で載っている最古の会社

四国銀行(8387)は、高知県と徳島県を中心に四国4県を地場とする地方銀行。

1878年の設立は、四季報に載っている会社では最古です。少し前まで新潟県の地銀である第四銀行が最古でしたが、第四北越フィナンシャルグループ(7327)としてホールディングカンパニーとなったため、設立時の名前で営業している会社としては四国銀行が最古になりました。

銀行業界は統廃合を繰り返しています。低金利の現在は、預金を集めるのも貸し出して利息を得るのも難しい状況です。こうしたなかでは、保険や証券などを扱って新たな収益を獲得することも必要ですが、いちばん大切なことは、預金者や地域の経営者などからの強い信頼です。安心感があれば、資金を調達したい経営者は「あの銀行は昔からつき合いがあるから」と考えてお金を借ります。

つき合いの長さは社歴の長さです。そこに老舗銀行の強さがあり、統廃合時代を生き残っていく優位性があるのではないでしょうか。

(渡部 清二 : 複眼経済塾 代表取締役塾長)

ジャンルで探す