新橋に「24時間ゴルフ練習場」ができた興味深い訳

今年3月、新橋にオープンした「GOLBA24」。24時間練習が可能だ(筆者撮影)

テレビ番組の街頭インタビューの定番スポットと言えば、お年寄りならとげぬき地蔵のある巣鴨、若者なら渋谷か原宿、そしてサラリーマン、とくにほろ酔い加減の人に聞くなら新橋だろうか。

そんな飲食店が密集した「サラリーマンの街」新橋に、24時間営業のインドアゴルフ練習場が3月1日にオープンした。「GOLBA24」で、完全個室4室とVIPルーム1室。周りは飲食店やカラオケ店などがひしめく繁華街のど真ん中のビルにある。

なぜコンビニのような「24時間営業」にしたのだろうか。運営するゴルフパラダイスの河嶋勉会長は「都市部を含めて、生活が多様化してきて、フリーな時間が夜中や朝方という人も多い。実際に朝方に練習をしている人が目につきます」と言う。

人がいるのは8時間、あとはマシンでカバー

店を24時間開けるとなると、人件費もかかりそうだが、同社ではこれまでよりも性能が高い計測器を導入することによって「12時間ずつ2人雇うとしてもオーバーワークになる。8時間だけ人を置いて、あとはマシンで16時間をカバーすることにしました」と話した。

導入しているゴルフ用計測器・シミュレーターは自社開発したサイエンスアイ・ゴルフ・シミュレーター(SGS機)という500万円超のものだ。

通常のゴルフ計測器よりも映像を含めてより鮮明に多くのデータを集め、使用した人が自分のスイングやクラブの動きを知ることができ、ある程度ゴルフをしている人なら映像やデータをみれば「自主レッスン」ができるようになっている。ビギナーでも、自分のスイングを見られるので、ほかの人との違いはわかる。

また、シミュレーターにはアメリカの名門コース・ペブルビーチゴルフリンクスはじめ鮮明な映像の世界のゴルフ場14コースが入っており、新橋で世界のゴルフ場を回った気分を楽しめる。

自主レッスンだけでなく、世界14のゴルフ場のラウンドを体験できる(筆者撮影)

会員制で、一般会員は1カ月9800円(税別)で月1回のレッスンを受けられ、個室を利用するたびに個室料1000円(税別、50分)かかるが、打ち放題でクラブなど用具も借りられるので手ぶらで来られる。予約はスマートフォン、支払いはクレジットカード、入室はカードキー、防犯カメラを設置するなど、セキュリティー対策やお金の管理を機器で行う。個室の換気はオゾン発生器でコロナ対策もしている。

コロナ禍でマンパワーが必要なコンビニなど、24時間営業が当たり前だった業界も、人手不足などの問題もあって時間短縮を余儀なくされるところもあると聞いている。ゴルフの練習という「対面」があまり生まれない特性を生かし、機器の進歩、導入によって24時間営業を可能にしたというところだろうか。

コロナ禍で増えたビルの空き室を活用するケースが増加

近くにあるゴルフショップの店長によると、コロナ禍で新橋では飲食店や企業が撤退してビルに空き室が増え、その空き室を利用してインドアゴルフ練習場を開くケースが増えているという。「最近は開業のあいさつにくる方が何人かいます。不動産屋も賃料が下がって借りやすい状況と言っていました」という。

コロナ禍でリモートワークが増え、企業の都心オフィス撤退・縮小もあって、オフィス空き室率が都市部を中心に増えてきた。そこにインドアゴルフ練習場というのが、今後「24時間営業」をキーワードにして増えていくかもしれない。

全日本ゴルフ練習場連盟が2021年10月に発表した独自調査による「全国練習場施設数」によると、この2020年10月から1年間に屋外の練習場は26施設減少して2395施設になったが、インドア練習場は241施設増の1265施設になっている。東京都88施設、大阪府29施設、神奈川県24施設、埼玉県21施設の増加など、都市部でインドア練習場新設の動きになっているのは、空き室問題とリンクしているといえそうだ。

同連盟役員で関東ゴルフ練習場連盟専務理事の新井道夫氏は、こうした動きについて「コロナ禍で空きビル、空き室が増えてきて、何かやろうという空気が出てきたのではないでしょうか。経産省の補助金もあって、異業種からの参入も出てきていると思います」という。

補助金は「事業再構築補助金」で、詳細は省くが経済産業省のホームページには「新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援します」とある。

ビルの室内で打席数はそう多くは取れないので、賃貸料や機器など設備投資の初期費用を含めて収支のバランスの問題があるが、インドアゴルフ練習場は開業しやすい、挑戦しやすい部類に入るのかもしれない。

機器の進歩によって24時間営業のハードルが下がった

「インドア練習場は30年ほど前からブームになったり下火になったりしてきました。5年ほど前からインドアへの流れがあると思います。いちばんの理由は機器の進歩。映像やデータ分析が進んだ。24時間のコンビニ型の練習場も可能になってきました」と、新井専務理事は背景を説明した。24時間営業のハードルが低くなってきている。

実際に24時間営業をしてきている練習場の様子はどうなのだろうか。

コロナ禍前、3年前から24時間営業をしている仙台市一番町のインドア練習場「スマイルゴルフ24」では、打席数3と少なく、昼間はレッスン会員が中心で打席を優先して使う。それでも、レッスンをやっていない夜間は24時間利用できるオールフリー打席会員(入会金5000円、月会費7400円、税別、利用条件あり)が利用している。

場所はオフィス街でもあり、仙台市の繁華街・国分町に隣接している。夜間は人を置いていないが、ゴルフ用計測器が置かれている。

同練習場のレッスンプロでもある中野寛氏は「入会時に機器の使い方を手取り足取り教えます。マニュアルも置いてあります」と、利用者は機器を相手に練習する。

酔った勢いで来るというようなことはないのだろうか。「酔って入るのは規約でお断りしています。監視カメラをつけ、オートロックキーで入室した人の名前がわかりますので、これまでそうしたトラブルは起きていません」という。人を置いて対面営業するよりも、機器任せのほうが逆にトラブルがないのかもしれない。

全日本ゴルフ練習場連盟の調査によると、宮城県はインドア練習場が増えていないが、中野氏は「家賃は東京よりは安いですし、こうした練習場は(人口がある程度多い)地方都市のほうがいいと思います」と話した。

24時間営業が増える下地は十分にある

コロナ禍によって働き方が変わり、地方都市への移住も増えている。その中にはゴルフをしている人、ゴルフを始めたい人もいるはずだ。リモートワークのメリットがわかってきた以上、コロナ前のような働き方や、撤退・縮小したオフィスなど完全に元に戻ることはないだろう。24時間営業のインドアゴルフ練習場が、今後増えていく可能性、下地は十分ある。

都市部、中心に近いところになるほど、交通の便の心配もなく、車がなくても利用しやすいメリットもある。前出の新井氏は「都心にインドア練習場があって、新規ゴルファーでも利用しやすくなれば、ゴルフ業界全体にとっていいことです」という。

新型コロナウイルスへの感染リスクが低いということが要因でおとずれているゴルフブーム。図らずもコロナ禍は、インドア練習場というハード面にも追い風を吹かせているのかもしれない。

(赤坂 厚 : スポーツライター)

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