GWに試してほしい「読書の満足度を高める」技術

よりよい読書をするための方法を解説します(写真:Fast&Slow/PIXTA)
限られた時間の中で、多くの本を読み、知識を定着させていくためにはどうすればいいのでしょうか。近著に『ライフハック大全 プリンシプルズ』がある研究者・ブロガーの堀正岳氏が「読書を戦略的に管理する方法」を解説します。

一生で何冊の本が読めるのかを計算する

すべての本を読むことはできません。だから、読める本を選ぶことが、私たちの一生の問題になります。

以前の著書(『知的生活の設計』)で、私は毎日の知的な積み上げが長い時間をかけて蓄積する例として、読書の量を設計する考え方について紹介したことがあります。

例えば、1日に60ページの読書を10年間持続することが可能なら、その総ページ数は21万9000ページ、書籍のページ数を平均300ページと考えるなら、730冊分に相当します。

これは1日に60ページ読むことがよいという話でも、それを速読で倍にしようという話でもありません。毎日例外なく60ページの読書時間が作れたとしても、10年で到達できる場所は730冊程であって、「10年あれば1000冊ほど読めるだろうか」といった甘い見通しは、物理的な壁に阻まれることを意味しています。

楽しみのために読む本をいちいち数えたりすることはないかもしれませんが、ときには短い一生で何をどこまで読めるのだろうかと思いをはせ、長い目でみた読書の戦略を立てるのも無駄ではありません。

例えば、本棚から平均的な本を取り出して、そのページ数を調べてみてください。あるいはその本を読むのに必要な時間を経験から思い出すのでもかまいません。

そして自分はこうした本を年間何冊読めたなら満足なのか、目標を達成できたといえるのか、イメージしてみます。あとは本のページ数を冊数でかけ算し、365日で割れば、1日に達成すべき読書の積み上げ分量がわかります。同じように、1カ月に無理なく何冊を読めるのか。そのためにはどの程度の頻度で本を探さなければいけないのか、イメージしてみましょう。

繰り返しになりますが、これは読書に数値目標を立ててクリアするためというよりも、自分は月に5冊を読む人なのか、それとも10冊のペースなのか、現実的な情報をもとに、手を出すべき本、出さずにスルーする本を選べるようにするためです。あとは毎日の読書量を計測し、目標に無理がないかといった調整を加えます。

アプリを有効に活用する

毎日の読書ペースは目分量で記録をつけてもいいですが、iOSとAndroidで提供されている読書支援アプリBooklyを使うのが便利です。

Booklyは本のページ数と、読書の開始時と終了時の到達ページ数を入力することで1ページあたりのペース、あと何時間で読了できるか、週に何度読書をしているかといったデータを表示してくれます。いわば、読書のフィットネストラッカーといってもよい機能が揃っています。

このアプリを継続して使うようになると、自分の平均的な読書ペースを正確に把握できるようになります。いつものペースに比べて遅いときは難易度が高い本なのであわてずに類書を参照しようといった選択や、1週間の読書ペースをみて週末に時間を作るべきだといったペースを、客観的データとして知ることができるのです。

読書の進捗を管理できるアプリBookly(画像:筆者が使っているBooklyの画面をキャプチャ)

本を読まずに積むことも、1つの戦略です。読みきれない本を机の上に、本棚に、ときには床の上にも積んでゆく「積読」という日本語がBBCで話題になったことがあります。

そのときの記事は積読を“Theart of buying books and never reading them”「本を買って、それを読まない技法」としたうえで、日本ではそれがスティグマ(悪い偏見、蔑視)をともなう言葉ではないことを紹介していました。

本を買うタイミングは、心が動いた瞬間に、すぐに買ってしまうことがおすすめです。もう一度、同じように心が動く瞬間は来ないかもしれませんし、来たとしてもその時点で本が手に入らない可能性もあります。

そして、ある程度は本が積まれ、「積読」状態になることは熟成期間であると受け入れる必要があります。まだ読んでいない本も、私たちが感じたあこがれや、向かいたいと思っている方向性について思い出させてくれる栞になります。ですから、本は罪悪感なく積む必要があるのです。

「類読」も学びを加速する習慣になる

積読と関係しますが、調べたいテーマについて類書をすべて買い集めて星座のように並べる「類読」も、学びを加速する習慣になります。

天動説と地動説をテーマとしたとある漫画を読んでいたときに、本当の歴史的な流れはどうだったか、異端審問は時代によってどう行われていたのか興味がわいたことがあります。

そこで15世紀前後の科学史、異端の歴史、ケプラーやコペルニクスの伝記、当時を舞台とした小説といったものまで、新書から専門書、国際郵便で取り寄せる必要のあった洋書の古書までを一気にそろえてしまい、自分なりの興味の「星座」を組み立てました。

1冊の漫画を読むのには大げさかもしれませんが、ほかの誰も実践していなさそうな本のパターンで話題を追うことで、独自の情報のフィルターを作っているわけです。いまも、それらの本をすべて読むことはできていません。しかしそこに参照できる情報の星座があるだけで、自分だけの個性的な読みが生まれるのです。

読書の記録をつける際に「読み終えてから感想を書く」のでは遅すぎる場合があります。1冊の本には議論が多岐にわたるものや、小説の場合にはプロットが複雑で読み終わるころには最初のあたりを忘れそうになっているものもあります。

そうしたときに、毎日読んだ分の内容を、その都度追記してゆく「読書ジャーナル」をつけたほうが、読書体験をより忠実に記録し、あとで内容を思い出しやすくなります。

人によっては、本に対する評価を途中で下してはいけないと考える人もいるようですが、序盤で「ちょっと退屈だ」と書き留めていた本が、ある章を境にページをめくるのを止められなくなったというのも、読書家としての楽しみの1つです。そうした意見の変遷もそのままに記録するところに価値があります。

読書ジャーナルは、読んでいる最中にもどんどんと追記してゆく必要がありますので、それを意識したツールを使います。

Evernoteで本1冊につき一つのノートを作成して感想を追記するのでもいいでしょうし、紙のバレットジャーナルに同様のページを作るのもいいでしょう。

1日に何度でも書き込みを追加し、あとからそれを束ねて表示するのに向いている日記アプリとして、macOS/iOS/iPadOSで使用できるDayOneがあります。

私の場合、読んでいる本のタイトルをタグにしてDayOneにどんどん追記することで、あとからそのタグで情報を串刺しにして閲覧できるようにしています。

本のデータベースを作って、そこに自分の感想のメモを書き込むスタイルをとりたいのならば、いま最適なツールはNotionです。

例えばNotionで書籍のタイトル、著者、出版社、ページ数、既読状態などのデータを記録できるテンプレートを作成し、それを元に作成したページに感想を書き加えていけば、簡易的な蔵書データベースを作成することができます。手軽な手法と、汎用性の高い手法のどちらも試してみて、読書に役立ててみてください。

Notionでデータベースを作成した例(出所:筆者が使っているNotionの画面をキャプチャ)

速読のかわりに使えるテクニック

結論からいうと、速読に期待してはいけません。

1冊の本を数十分でスキャンするように読める、写真を撮るようにページを記憶できると主張する人もいますが、たいていは内容に対する先入観に基づいた飛ばし読みにすぎず、本を味わうことにはつながらず、結果的に時間の無駄になるからです。

しかし、平均的な読書スピードを向上させる基本テクニックはあります。

アメリカの高校では学生に対して、

①1行の文章を1文字ずつではなく、いくつかの塊としてスキャンすること(チャンキング)
②心のなかで読み上げてしまうクセを避けること
③読んでいる場所から後戻りする目の動きを抑制し、一度目で理解できる平均スピードを保つこと

といった読書の練習を実践する学校がありますが、こうした基本を守るだけでも、理解の度合いを保ったまま平均スピードを向上させることは可能です。

時間や場所によって調子よく読める本が異なることがあります。難解な本を進めることが苦痛ではない瞬間もあれば、リラックスした本でないと目が泳いでしまう時間帯や場面もあり、読書のペースはまちまちです。

1つの本を読み切ってからでなければ次の本を読まないというルールも悪くはありませんが、私はむしろシーンに合わせて開く本を複数用意しておくことで、つねになんらかの読書が進むようにしています。

組み合わせを用意して複数を同時に読む

例えば難解なものと平易なもの、勉強のための本と遊びのためのもの、持ち歩けるものと分厚いもの、紙の本とデジタルの本といった組み合わせを用意して複数を同時に読むことで、さまざまな時間を読書に割り当てるわけです。

ただし、難解な本や筋を覚えていなくてはいけない本については、別の本に切り替える際にどこまでの内容を読んだかが記憶から抜け落ちますので、セーブデータをとる意識で詳細な読書メモを残しておきます。

複数の本を読む際に同時に読める冊数は人によって異なります。2冊が限界という人もいれば、6冊ほどを同時に進められるという人もいます。

重要なのは、数をこなすことではなく、限られた時間で本を味わうための最適なペース作りだと考えて、この数字も自分自身の最適な数字を実験的に測定してみましょう。

何もかもがスピード感のあるなしで価値が測られ、素早い消費が求められがちな時代のなかで、読書は未知なる世界に自分自身を解き放つぜいたくな時間です。

人生そのものといってもよい、このぜいたくな時間から何も奪うことがないように、自分に最適なスピードを見つけるようにしてください。

(堀 正岳 : Lifehacking.jp運営者)

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