反抗期の子を失望させる「早くしなさい!」の不毛

親の気持ちがはやるのは仕方ないですが、「禁句」なのです(写真:プラナ/PIXTA)
新学期を迎え、一学年成長したわが子の変化に、戸惑う親も多いのではないでしょうか。
「うちの子、もしかして反抗期!?」と悩む前に、親側が準備できる心構えとは?
児童の自主性・自立性を引き出す授業で定評のある小学校教諭・沼田晶弘氏の著書『もう「反抗期」で悩まない! 親も子どももラクになる“ぬまっち流”思考法』より、時間がないのに、自分から動こうとしない子への接し方を解説します。
前回:反抗期の子を絶望させる親の何とも残念な接し方(4月13日配信)

「反抗」ではなく「自己主張」しているだけ

子どもが成長し、経験を積み、試行錯誤して自分なりの意見をもつようになると、

「こんなことをやってみたい」

「こんな出来事があって、自分はこう思った」

と、自分の言葉で自分の気持ちを話せるようになります。

生活のなかで、子どもの成長が垣間見える瞬間が増えてくると、

「自分でちゃんと考えるようになった」

「意見が言えるようになった」

と、親御さんは喜ばしく思うはずです。

ところが、ある日、

「学校に遅れるよ。早くしなさい」

と、いつものように声をかけたら、

「うるさい!」

と、子どもが怒鳴り返してきました。

お母さん、お父さんは、「はっ!」と身構えます。頭のなかには警戒警報が鳴り響きます。気を引き締めてかからなければ、と覚悟を決めます。

「とうとう、うちの子にも『反抗期』がきたぞ!」

そして、子どもの言動が「反抗的である」と認識した親御さんからは、こんな言葉が飛び出してくるのです。

「親にそんな口をきくなんて……!」

「今、何時だと思ってるの!」

「あなたのためを思って言ってるのに!」

「そんな態度だから、いつも失敗するんだ!」

「もう勝手にしなさい!」

お子さんの「反抗期」に悩む親御さんにとっては、お馴染みの展開ではないでしょうか。

でも、ちょっと頭を切り替えてみてほしいのです。

お子さんの「うるさい!」が、「反抗」ではなく「自己主張」だったとしたら?

お母さんが嫌いで、お父さんに抗いたくて「うるさい!」と言ったのではなく、自分の考えがあって、自分なりの意見をもったうえで、「うるさい!」と返事をしたのだとしたら。

子どもに返す親の言葉は、本当にこれでいいのでしょうか。

そう疑問に思えてきませんか。

子どもがせっかく、自分の意見を主張してくれたのですから、決してケンカ腰にならず、冷静に言葉を選びながら、親御さんがどんな理由で「早くしなさい」と言ったのか、お子さんに伝えてあげてください。

「反抗期」に悩む親と子の間には、圧倒的に「対話」が足りていません。売り言葉に買い言葉の言い合いでは、心が離れていくばかりです。そうではなく、お互いの意見を持ち寄ってディスカッションすることができれば、相互理解が深まっていき、そこから親子の間には確かな信頼が生まれます。

子どもの意見を受け止めたうえで、親もまたしっかり主張し、話し合う。それが「反抗期」を脱する道なのです。

「早くしなさい!」の一言がなぜダメなのか

「早くしなさい」と言いたくなる気持ちはわかります。お母さん、お父さんには、「その先」の見通しがあるから、どうしたって言いたくなります。

まだ子どもはパジャマを着ている。朝ごはんも食べていない。これから歯を磨いて、顔を洗って、着替えもしなきゃいけない。そういえば、学校の準備は終わっているのだろうか。

きっと、このままでは間に合わない……!

瞬時にしてこれだけの見通しが立ちます。たいていの大人にとって、先のことを考えて動くのは、当たり前のこと。お子さんを観察し、このペースでは間に合わないと判断して、心配になって、

「早くしなさい」

と声をかけるわけです。

しかし、子どもはこの行程を理解していません。「先のことを考えて動く」のは、子どもにとって、ちっとも当たり前ではないし、簡単ではありません。毎日同じことを繰り返しているはずだから、わかりそうなものですよね。やるべきことはわかっているかもしれませんが、

「今7時半。8時に家を出なきゃいけないから、もうゆっくり食べている時間はない!」

と、逆算して行動を起こすのは難しいのです。

そもそも、子どもは時計を見ません。本当です。小学校にはあちこちに時計が設置されていますが、時計で時刻を確認しながら率先して動く子は多くありません。もっと言うと、腕時計をしている子ほど遅刻します。身につけていても見ないのです。

子どもは時計を見ないし、先の見通しなど立たない。今にひたすら夢中です。

大人でも、仕事に集中していたり、趣味に没頭していたりするときの1時間は、飛ぶように過ぎ去っていきます。つまらない会議中や、やることがなくて暇なときは、時計が止まっているのかと疑うくらい時間は進みません。

要するに、「早くしなさい!」と親に急かされても、子どもはなぜ急かされているのかよくわからず、所詮は他人事なのです。「自分事」だと認識できていないため、焦って叱る親の言葉は、ただうるさいだけ。親と同じ見通しをもっていないので、子どもは、

「うるさい!」

「早くしてるしぃ」

などと「反抗」してしまいます。

事前に、食事や身支度にかかる時間を子どもと一緒に計っておくのが効果的です。

「ご飯を食べるのに一五分。着替えとトイレで四分。歯磨きと寝癖直し三分。体温を測って記入するのに一分。

靴下をはいて、靴を履いて、マスクをするのに二分。荷物をもって家を出てから、学校の正門をくぐるまで一〇分。

つまり、学校にたどり着くまで急いでも三五分かかる計算だけど、今、もうギリギリの時間だよ? 大丈夫?」

各所要時間を全部書き出し、見えるところに張り出しておいて、子どもが意識するようになれば完璧。先が読めない子どものために、一目でわかるようにしておきます。ここまでやれば、さすがの子どもも焦るでしょう。

いつも見ているテレビ番組をうまく活用する手も

また、朝の時間は毎日、同じ放送局にチャンネルを合わせておくのもおすすめです。早朝の番組では、たいてい同じ時間に各種コーナーが始まるので、タイミングを計りやすいのです。

「夕方の報道番組始まっちゃったから、夕飯の支度を始めなくては」

などと、テレビ番組を行動を起こす目安にすることは、大人でもよくやりますよね。子どもも同じです。

もう「反抗期」で悩まない! 親も子どももラクになる“ぬまっち流”思考法

「ジャンケンのコーナーが始まったから、急いで支度しなくちゃ」

「天気予報が始まったら、家を出ないと間に合わない!」

といったように、時間の感覚や動き出すタイミングをつかみやすくなります。お子さんが時間感覚をつかめるようになるまで、地道に毎日、同じ放送局を見続けてみてください。

もし、お子さんがテレビに夢中になってしまいかえって支度を進められない場合には、同じ時間帯のラジオを聴く習慣を取り入れてみるのもいい方法です。他にも、同じ時間に、同じ音楽をかけることで、

「2回目のサビまできたから、いい加減に着替えを終わらせないと!」

といったように、行動の目安にすることができます。

前回:反抗期の子を絶望させる親の何とも残念な接し方(4月13日配信)

(沼田 晶弘 : 国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭)

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