新卒採用で「就活生の志望度が上がる」企業の特徴

新卒採用の選考過程で、就活生の志望度を上げるために企業がとるべき方策とは?(写真:tabiphoto/PIXTA)

企業の新卒採用における課題は、ターゲット層の学生に応募してもらうこと、そして内定を出したら確実に入社してもらうことだ。つまり、ターゲット層の学生は十分に集まらず、欲しい学生に逃げられることがある、とも言える。

HR総研が2022年3月に実施した「2023年&2024年新卒採用動向調査」における、新卒採用の課題のトップは「ターゲット層の応募者集め」で大企業でも53%と半数以上の企業が課題に挙げている。2位は「内定者辞退の減少」で、大企業で35%、中堅企業でも36%となっている。

どうすれば志望度が上がるのか?

応募は知名度にリンクしているので、「ターゲット層の応募者集め」という課題に対しては、採用広報を工夫し、合同企業説明会などのイベントでの出会いという方策しかない。いずれも確実な効果が保障されているわけではない。近年では、逆求人サイトの利用や、社員紹介などのリファラル採用も増えてきている。

しかし、内定者辞退に関しては、もう少し効果が確実な方策がある。学生の志望度を高くすればいい。高ければ二股、三股をかけられることは少なくなるし、他社が内定を出してもそちらを断るはずだ。

どうすれば志望度が上がるのか? HR総研の調査によれば、選考過程での社員や人事、面接担当者の印象によって志望度が大きく変化することがわかっている。そこで今回は、どういう出会いで志望度が上がるのかを検証してみたい。使用するのは、HR総研が2021年6月に「楽天みん就」と共同で実施した「2022年卒就職活動動向調査」に寄せられた学生コメントである。

志望度アップのエピソードに共通するのは、面接担当者、社長、人事、社員に対する好感である。学生は大人から一人前として扱われると感銘を受けることが多く、相手に好意を抱く。逆に、馬鹿にされたりいい加減にあしらわれたりすると憤慨する。例えば、サイレントお祈りだ。ビジネスマンが商談で結果を連絡しないなら社会人失格だ。しかし、学生に対しては平気で行う企業はかなり多い。

逆にちゃんとした言葉をかけてもらえると、学生は「きちんとした企業→信頼できる→ここで働きたい」と考える。その典型がフィードバックだ。

フィードバックは制御機構などで使用される技術用語だが、人事では応募者へ評価を伝えることを指す。フィードバックは面接時と面接後がある。

面接時に「話し方が悪い」「論理的でない」と悪口を言う担当者もいるが、こういう発言がフィードバックと呼ばれることは少なく、ほとんどはプラス評価をして学生を励ます発言だ。

「面接中、人事の方がフィードバックをくれるところは志望度が上がった」(文系・上位私立大)

次回の面接を連絡するときに

選考を通過した学生への連絡を電話する際、フィードバックすると志望度が上がる。「わたしたちはあなたに会って、このようにあなたを理解しました。次のステップでも頑張ってください」という応援メッセージでもある。

学生のコメントを読むと、自分への評価が言語化されて伝えられたことで、志望度が高まっている。面接後の選考では学生への評価を客観評価しておくといいだろう。

「面接の通過連絡の際に、どんな点が評価されたかのフィードバックがあった。自分に興味を示してくれていることがうれしかった」(理系・早慶大クラス)

「面接結果を知らされるときに、面接をしてみてどう感じたかのフィードバックをもらえたことで、自分がどう評価されているのかがわかり、自分らしさを評価してもらえている会社への志望度が上がった」(理系・上位国公立大)

面接で評価するのは企業、評価されるのは学生だが、同時に学生も企業を評価している。

とくに学生からの逆質問への対応は大きな影響力を持っている。学生に等身大で向き合い、丁寧に回答しようとする企業への評価は高い。

「逆質問で『夢は何ですか』と聞いた学生がおり、『難しいな~(笑)』と素直なリアクションをとっていたのに好感を覚えた」(文系・上位私立大)

「面接の時に、逆質問で業務の実際を丁寧に教えもらった」(理系・旧帝大クラス)

次の学生は「うちに合っている」というフィードバックで志望度を上げている。確かに「優秀だ」という褒め言葉は使い古されているし観念的だ。「合っている」は学生の適性を見定めているので具体的だと思う

「逆質問に丁寧に答えてもらえたこと。面接通過後、人事担当を通してのフィードバックで、『優秀だ』ではなく、『うちに合っていると思う』という褒め方をしてもらえた」(文系・早慶大クラス)

定期的な連絡が信頼感醸成

学生のコメントを読むと、選考フローが曖昧な企業、サイレントお祈りをする企業、連絡が遅れる企業などがかなりあることがわかる。連絡はビジネスだけでなく人間関係の基本だから、こういう企業は新卒採用だけでなく、他の人事施策でも欠陥があるのではないかと思う。

逆に「フローが明確」で「定期的な連絡」を行う企業への評価は高い。

「選考結果が合否にかかわらず、スピーディーかつ必ず来た。人事の人柄がよかった。選考フローが明確だった」(文系・上位私立大)

「リクルーターの方が定期的に連絡してくれて親切にしてくれた」(文系・その他私立大)

「選考スピードが速く、すぐ次の選考の連絡をくれる企業」(文系・その他国公立大)

学生の多くは口コミサイトを読んで企業を研究している。採用担当者は口コミサイトで自社がどのように書かれているかを調べ、学生から質問された際に不安を取り除く必要がある。

都合の悪い口コミであればあるほど、学生の疑問を払拭しなければならない。

「口コミサイトに書かれているマイナスな話を、実際どのような根拠でどう思うかを教えてくれた」(理系・中堅私立大)

人との関係で名前はとても重要だ。学生のときは「〇〇さん」「〇〇くん」、あるいは呼び捨てる関係になって親しくなっていく。社会人になると初対面の人と会うことが増えるが、その場合も名前を覚えることから関係が始まる。

人事が学生と会うときも名前で呼び、大学や専攻を話題にすると学生の好感度は一気に上がる。

「対面での面接に行くたびに、名前や大学のことを覚えてくれていて、毎回話しかけてくれる人事の方がいたこと」(文系・旧帝大クラス)

「人事の方や社員の人柄が本当に大切だと思った。名前を覚えてくれただけでなく、最終面接前に面談の機会をくれて、アドバイスだけでなく、一緒に強みを考えてくれたこともあった」(理系・その他私立大)

「人事の人が丁寧に面接フォローしてくれて、名前を覚えてくれていた。役員の人も気さくで、全ての人が優しかった」(文系・上位私立大)

ESを読み込み個性を理解

一生懸命に就活する学生が多くの時間を割くのがエントリーシート(ES)だ。面接ではESの記述をに面接担当者が質問するが、レベルはさまざまだ。ESを読んでいない人がいれば、逆に丁寧に読み込んでいる人もいる。

「よさこいのエピソードをエントリーシートに書いており、他の企業がよさこいとは?と面接で聞いてくる中、1社だけ『よさこい見たことないからYouTubeで見てみたんだけど』という社員がおり、志望度が非常に上がった」(文系・旧帝大クラス)

「よさこい」は高知県の民謡であるよさこい節、よさこい祭りの略だ。この場合は「YouTubeで見てみた」とあるからよさこい祭りだろう。人間は自分の出身地に誇りを持っており、祭りはその土地の文化だ。ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)についての質問も結構だけれど、学生の育った環境に関する質問のほうが志望度アップにつながると思う。

企業が丁寧にESを読み込み、学生の個性を理解すれば、学生はうれしく感じる。学生に限らず、人は相手に理解され受け入れられたと感じるときに喜びを見いだす生物なのだろう。

「面接の中で、『こういう面白いESを書いてくれたのは、あなただけ』と言われたとき、ESにきちんと目を通してくれている丁寧さと、自分の個性を認めてくれたうれしさがあり、志望度が上がった」(文系・旧帝大クラス)

「ESや成績表、あらゆる経歴を細かく見て判断してくれたことで、改めてとても評価されていることが伝わって、うれしく、志望度は上がった」(文系・早慶大クラス)

「エントリーシートの内容や、前回面接の内容を踏まえた形で面接を進めてくれた」(文系・上位国公立大)

志望度アップに経営トップの存在は大きい。人事の説明では納得し切れない学生も、経営トップが「あなたなら活躍できる」と断言するとその気になるようだ。

「社長、役員にあなたなら活躍できると思うと言ってもらった」(理系・旧帝大クラス)

「社長の想いを聞ける説明会に参加した。ぜひこの社長のもとで働きたいと思った」(文系・早慶大クラス)

「役員2人と社長と話をさせてもらった際、とてもフランクだったのでトップがこれならピリピリせず働けそうと感じた」(文系・中堅私立大)

学生アンケートを読んでいて感じるのは、近年、女子学生の投稿が増えていることだ。「女性特有の悩み」はいつも存在していたのだろうが、以前よりも問題意識が敏感になっているように思う。

こういう女子学生の不安を解消するため、女性社員を活用する企業がある。女子学生のリクルーターとして女性社員を起用したり、懇親会を企画したりしている。とても有効な施策だ。仕事の話や結婚・出産した先輩のエピソードを聞けば、きっとやる気が増してくるはずだ。

「リクルーター面接や内定後の面談で女性総合職の方をあててくれた」(文系・その他国公立大)

「女性社員と女子学生のみの話し合いの場を設けてくださり、女性特有の質問をすることができた」(理系・上位国公立大)

若手との交流で志望度アップ

女子学生では女性社員との懇親が志望度を高めたが、若手社員との交流も同じように効果を持っている。

歳が近い若手の経験は、学生が入社後を想像するために有益だからだ。また、素敵な先輩は後輩にとって魅力的に映るはずだ。

「フランクな若手社員がいた。画面越しに手を振ってきた」(文系・上位私立大)

「若手社員との面談を勧めてくれた」(文系・中堅私立大)

「説明会の際に、若手社員との交流があると、会社の雰囲気がよくわかり、志望度が変わる」(文系・その他私立大)

今回は学生の志望度が上がるエピソードを紹介した。志望度が高まれば内定辞退も減るはずだ。学生を理解し、丁寧な応接をするので多くの労力を要する。その労力に見合って、志望度も上がる。そういう選考プロセスであれば、学生と企業の双方が納得するはずだ。

(佃 光博 : HR総研ライター)

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