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日本とイギリス「コロナ対策」こんなにも違う背景

イギリスの大半の人口を占めるングランドでは27日からマスクの着用義務など新型コロナにかかわる規制がほぼ撤廃された(写真:Luke MacGregor/Bloomberg)

オミクロン株が大勢となった新型コロナの感染者が、1日に約10万人となっているイギリス。昨年末から年始にかけての24万〜25万人からすると半減しているものの、決して少ない数ではない。新規死者数も1月28日時点で277人(政府統計)と、300人前後が続いている。

日本では、同じく28日時点で新規感染者が8万人を超えた。大きな危機感が広がっている日本とは対照的に、イギリスでは「落ち着いてきた」という感覚があり、政府はコロナ感染防止のための規制緩和に舵を切った。

公共施設内でのマスク着用義務は廃止

イギリスの人口の90%が住むイングランドでは、27日からほとんどの規制が取り除かれた。公共施設内でのマスク着用義務が廃止され、大規模イベントでのワクチン接種証明の提示義務もなくなる。すでに在宅勤務の推奨は終了し、中学と高校での教室内でのマスク着用義務も廃止。ただし、ロンドン市長が市内の公共交通機関内でのマスク着用の義務化を続行させることを決めている。また、主要スーパーや大型小売店ではマスク着用を勧めている。

高齢者用施設に親や祖父母を置いている家族にとって朗報となるのが、訪問の際の人数制限が来週早々から撤廃されることだ。

イギリスのほかの地域(スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)でも、徐々に規則緩和が進んでいる。

旅行をめぐる規制も日本とは異なる。筆者は、年末年始、家庭の事情で日本へ行っていたが、日英のコロナ対策の差が明確になったのはイギリスに戻る旅だった。1月上旬から、イギリス政府は入国直前のコロナ検査を不要に。筆者はイギリスへの出発前に東京でPCR検査を受け陰性となっていたが、成田空港に到着した時点でもはや検査の陰性証明は必要なくなっていた(それでも搭乗できなくなると困るので、陰性証明は持って行った)。

空港では、イギリス出国前にダウンロードしておいた、「ワクチン接種証明」(イギリスの国民保健サービス=NHS=が発行)と「乗客追跡フォーム」(連絡先などの情報が入っている)を航空会社の係員に見せるだけで十分だった。

空港内及び搭乗中のマスクの着用は義務化されたものの、飛行機がロンドン・ヒースロー空港に到着すると、マスク着用以外はコロナ以前と同様の手順で荷物を受け取る最終段階まで来た。スーツケースを手に取って、電車・バスあるいはタクシー乗り場に向かうことができた。接種証明や乗客追跡フォームを出す場面はなかった。

帰宅後は2日目にあらかじめ注文しておいた検査キットを使い、キットの一部をNHSに郵送(無料)。後で「陰性」と証明されたので、通常の生活を続けている。

12月に日本を訪れた際は、ホテルに強制隔離が6日間、その後は公共交通機関を使わずに待機場所に移動し、入国後14日間は隔離待機という厳しい規則に従う必要があったが(1月29日から7日に変更)、イギリスでは帰国後、ほとんど何もしなくてよいのであった。

2月からは、ワクチンを2回以上接種した人の場合、この「2日目の検査」も全国的に不要となる。2回の接種を済ませていない人は、1月いっぱいは帰国後に10日間自主隔離する必要があるが、これは来月からしなくてもよくなる。未接種者は帰国前と帰国後に検査を受ける必要はあるが、結果が陽性でない限り、隔離の必要はない。

つまり、「ワクチンを2回以上接種」し、「検査で陰性」であれば、自由に行き来ができる、ということだ。

国民の自由度を高めた規制緩和

ただ、やみくもにすべてを自由にしたのではない。

海外渡航であれば「ワクチン接種」と「検査で陰性」を条件とするなど、押えるべきところは押えている。また、公共施設内や交通機関利用の際のマスク着用義務も、ロンドンでは市長が継続着用を求めているし、大型店も着用を推奨することで、「規則に縛られず、かつ最低限の線を示す」形をとっている。できうる限り必要度の低い、あるいは防止効果の低い規制を取り除き、国民の自由度を高めた規制緩和と言えるだろう。

日本と比較すると、非常に多い新規感染者数を記録しているイギリス。人口は日本の半分なので、単純計算すれば、毎日20万人近くが新規感染していることになる。日本だったら「一大事」だろう。なぜイギリスの政府は、今、規制緩和に踏み切ったのか。

筆者が見るところでは、日英の国民性の違いがあるように思う。多くのイギリスの国民は上から規則を押し付けられること嫌う。ボリス・ジョンソン首相は特に、である。

2020年3月末、政府はコロナ感染防止のために全国的なロックダウンを課し、国民は不要不急の外出を禁じられた。コロナ感染の恐ろしさと規則破りには罰金が科せられることもあって、国民は神妙にこれに従ったが、経済が大きく停滞し、家庭内暴力(ドメスティックバイオレンス=DV)の報告件数が急増した。子どもは行き場を失った。高齢者施設や遠方に住む家族に会えなくなり、親あるいは祖父母の死に目にあえなくなって、数々の悲劇が発生した。

国民の経済活動や自由な行き来を規制する動きは、「あってはならないもの」であり、コロナ対策が進んだら、解除されるべきもの、という社会的認識があった。

ジョンソン政権にとって、「ワクチン開発・接種拡大によるコロナ退治」と「経済・家庭生活の復活」は、国民が強く望む、大きな政治課題である。いつまでも規制が続いたら、国民の不満感が高まり、経済も回復不可能なほどに停滞し、財政出勤の額が巨大となって大きな負債になり、ひいては政権崩壊の芽を作ってしまう。そこで、この数カ月、「いつ、規制を解除するか」が最優先の課題となっていた。

とはいっても、政治家の判断だけで規制解除はできないので、科学者・医療関係者らとの相談のうえ、毎日のコロナ状況のデータ開示、3回目のワクチン接種への呼びかけを経て、今月末からの段階的解除にたどり着いた、というわけである。

屋外でマスクをしている人はまばら

日本ではレストランに入ると、それぞれのテーブルがアクリル板で仕切られ、テーブル上のタブレットを使って注文するという徹底的に人手を少なくする試みがある。イギリスはそこまではやっておらず、ウェイターやウェイトレスがマスクをしていたり、レストランや病院の待合室などでは座席設定が以前よりは空間があくように設定されたりなどだった。

しかし、今月末からの「解禁」で、レストランやカフェの様子を外から見ると、マスクを付けている人はほとんどいない。バスや電車、小売店内ではマスク着用の人はいる。戸外でのマスク着用は義務ではなかったが、付けたり外したりが面倒な人や筆者のように寒いからという理由で着用して歩く人がいるぐらいだ。

筆者の隣人で保育園に子どもを毎朝連れていくケイティさんは、「毎日毎日、検査して、陰性だったら、連れていける。疲れた。早くこれも終わってほしい」という。

1日に10万人という、イギリスの新規感染者数は非常に多いように聞こえる。日本のことを考えると、「なぜもっと大騒ぎしないのか」、「規制解除どころじゃないだろう」と思えてしまうかもしれない。しかし、イギリスの政府と国民は「コロナと生きる」を選択し、終息をじっくりと待つ体制に入ったようだ。

 (*規制緩和の詳細については、1月28日時点の情報を元にしている)

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