一体このジェットコースター相場はどうなるのか

劇的に上昇したかと思えば、再び一気に下落。このジェットコースター相場が落ち着くのはいつになるのか(写真:ニングル/PIXTA)

いきなりで恐縮だが、日経平均株価は8月20日以降の約2カ月間でどのくらい乱高下したのかご存じだろうか。10月21日も日経平均は500円以上の下落となったが、まさにほぼ2カ月間「ジェットコースター相場」が継続しているのだ。

「爆買い」「爆売り」をした海外投資家

まずは上昇からだ。日経平均株価は8月20日の安値2万6954円(ザラ場、以下同)から9月14日の同高値3万0795円まで、一気に3840円も急騰したのはまだ記憶に新しい。このときの同上昇率は14.2%だ。逆に下落は、9月14日の同高値3万0795円をピークに、10月6日の同安値2万7293円まで3502円も急落した。同下落率は11.4%だ。これほどまでに短期間のうちに乱高下したのはなぜか。

東京証券取引所が発表している「投資主体別売買動向」を見れば、その理由がわかる。この売買動向は原則、毎週木曜日の取引終了後、その前の週についての、現物(東証・名証の各1部・2部の合計)と先物(日経225先物、日経225先物mini、TOPIX先物の合計)が発表される。投資主体別は自己、個人、金融機関(生保損保、都銀地銀、信託銀行、他金融)、海外投資家、投信、事業法人、他法人に分類されている。これを見るとわかるのだが短期間に急上昇・急落したのは、海外投資家が一気に買って、売ったからだ。

具体的に見てみよう。海外投資家は、8月23日~8月27日:+3221億円(現物-45億円、先物+3266億円)、8月30日~9月3日:+6592億円(現物+3670億円、先物+2922億円)、9月6日~10日:+1兆0581億円(現物+3010億円、先物+7571億円)、9月13日~17日:+2408億円(現物-500億円、先物+2908億円)と4週連続で大量の買いを入れたのだ。

逆に、9月21日~24日:-2737億円(現物-2692億円、先物-45億円)、9月27日~10月1日:-1兆7428億円(現物-4890億円、先物-1兆2538億円)、10月4日~8日:+209億円(現物+4654億円、先物-4445億円)と、現物と先物の合計では2週連続(先物だけだと3週連続)で海外投資家の大量の売りが入った。これで、9月14日をピークに10月6日まで株価は急落した。

なお直近の海外投資家動向(10月11日~15日)は、+3314億円(現物+4788億円、先物-1474億円)と買い越しだったが、18~22日は再び売り越しとなっている可能性もありそうだ。

ちなみに、2020年の「投資主体別売買代金シェア」は、海外投資家60.4%、個人19.8%、証券自己12.8%、法人6.3%、その他0.7%となっている。日本株式市場なのに、海外投資家が6割の売買シェアを占めているのだ。

なぜ8月20日を底にいったん株は上昇し始めたのか。それは海外投資家が政治の変化を期待したことによるものだ。この時点で海外投資家は、新型コロナウイルスの感染拡大で支持率が低下していた菅義偉首相がもし自民党総裁選挙に出馬しても他候補に敗れ、「新しい選挙の顔」によって自民党の支持率が回復、11月までに行われる衆議院選挙で与党が過半数を維持することが見えてきたと確信したようだ。

一時、株価が上昇に転じた8月23日のターニングポイントに何が起きたのか。同月22日の横浜市長選挙で菅首相が支援した小此木八郎元国家公安委員長が無所属新人で立憲民主党が推薦した山中竹春氏(元横浜市立大学医学部教授)に敗れたことがすべてだ。その後はドラマのような展開だった。菅首相は党総裁選へ再選を目指して出馬する意向を改めて示したが、9月3日には新型コロナ感染者急拡大による支持率低下のなか、伝家の宝刀である解散を封じ込められ、事実上の退陣表明を余儀なくされた。

海外投資家は、こうした政治の変化を日本株市場にとってポジティブをとらえ、さらに買い越しを続けた。一時は国民や自民党員・党友から人気がある河野太郎行政改革担当相と岸田文雄前政調会長(いずれも当時)との一騎打ちにより、さらに自民党の支持率アップにつながるとみたようだ。9月29日の自民党総裁選で改革派のイメージの強い河野氏が自民党員・党友からの票を多く集め、1回目の投票で勝つことを期待。株の買い越しを続けたのだ。

その後は失望、一気に株を売った海外投資家

その後、9月14日が当面の高値となったのは、岸田氏、河野氏の一騎打ちで河野氏が勝つというシナリオが崩れ、海外投資家が株式を売却したためだ。その後、人気の高い石破茂元幹事長も総裁選への不出馬を表明。「改革を志す勢力が二分することなく一致すべきだ」と河野氏を支持する意向も示したが、海外投資家の河野氏期待も事実上、ここまでだった。

9月29日の自民党総裁選では、岸田氏が下馬評を覆して1回目の投票で河野氏を上回った。決選投票では事前予想どおり岸田氏の圧勝となり、結局、株価も下げ止まる気配はなかった。10月4日、臨時国会が召集され、岸田総裁を第100代首相に選出、「新しい資本主義」をめざす岸田内閣が発足した。

結局、海外投資家からみると「改革路線の河野氏は株高」「改革色の薄い岸田氏は株安」の方程式は変わっていなかったのだ。これまでのアノマリーなら「選挙は株高」のはずだが、9月14日以降、海外投資家にとって悪い結果が見えてきたので、先にピークをつけてしまった、と言える。

その後、日経平均株価は10月6日に2万7293円(ザラバ)で底を打ち、モタモタしていたが、11日から切り返し始めた。岸田首相が10月10日のテレビ番組で金融所得課税について「当面は触ることは考えていない」と発言したことがきっかけだ。9月29日の自民党総裁選では見直しを公約に盛り込み、税率引き上げに前向きな発言をしていたからだ。

格差是正を実現するための財源論がいったん後退するのは気がかりだが、岸田首相が「貯蓄から投資」に逆行する政策として株価下落の要因になっていると指摘する声に耳を貸し、市場に配慮した柔軟さをマーケットは素直に評価したといえる。引き続き海外投資家の反応に注目したい。

最大の焦点は31日の衆議院選挙投開票

岸田首相は衆議院選挙投開票に向け、懸命のようだ。まず人事でバランスを取り、最短のスケジュールで月末の衆議院選挙に挑んでいる。

自民党の衆議院(定員465議席)での現有議席は276議席である。10月の調査によると岸田首相では239~257議席(サンデー毎日257、週刊文春244、週刊ポスト239)と自民党だけで過半数を維持、連立与党の公明党の29議席を加味すると、安定した国会運営が可能な「絶対安定多数」の261議席以上との報道も出た。だが最新の世論調査では「自民党だけで単独過半数に届くかどうか」との報道もあり、予断を許さない。

21日の株式市場は「自民党の票が思ったほど伸びないのではないか」との選挙報道や、政府の日本郵政株に伴う投資家の資金作りによる換金売りの思惑などから日経平均が再び下落、予断を許さない状況になっている。

今後の株価については、やはり衆議院選挙の結果次第によるところが大きい。海外投資家が買いに積極的になるのは自民党が現有議席まで近づくことだ。その場合は、今後の経済対策の中身(海外投資家は改革と成長を重視)も見すえて、上昇も期待できそうだ。逆に、仮に単独過半数などを下回るようだと、海外投資家は売ってくる可能性も覚悟したほうがいいかもしれない。

今回は、重要イベントである国内政治に絞ってコメントしたが、もちろん海外要因にも引き続き注目だ。中国の恒大集団など不動産問題の行方に加え、原油価格の急上昇やアメリカの長期金利上昇、円安(自動車関連など一部の輸出産業にはプラス)なども気になる。

とくに、このあと11月2~3日に控えるFOMC(連邦公開市場委員会)で11月中旬ないしは12月中旬にテーパリング(資産買い入れ縮小)が開始となった場合、その後に世界の株式市場や債券市場などにどのような変化が起こるか、しっかりチェックしたい。株式などのリスク資産にかなりシフトしている投資家なら、キャッシュ比率を高めるなど、ポートフォリオをしっかり保全するタイミングに近づいているかもしれない。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

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