訂正を迫られた日経平均は再度3万円を回復する

「市場の話もよく聞く男」なのか「早期の金融所得課税」を否定した岸田首相(右)。日経平均の「誤った上昇」はほぼ吹き飛んだが、この後はどうなるだろうか(写真:AP/アフロ)

日経平均株価は、8月20日から9月14日まで急速に「誤った上昇」を演じた。結局、その誤りの訂正を強いられることになり、上昇分は一時ほとんど吹き飛んでしまった。

日経平均2万7000円台までの下落は見通せず

前回9月27日付の当コラム「日本株が一時急落したのは中国恒大のせいなのか」では、これまで繰り返してきた主張を再掲し、「今後も日経平均が上がり続けるとは考えておらず、むしろ短期は下振れ(3万円を割れて、場合によっては2万9000円も割る)し、そこから「年末までに本格的な3万円超えを再度達成する」という見解を確認した。

実際の日経平均は2万9000円どころか、2万8000円の大台も深く割り込み、10月6日には終値ベースで2万7528円、ザラ場では2万7293円の安値をつけた。そうした株価の動きを受けて、「馬渕さんは2万9000円を割れる可能性は指摘していたが、2万8000円を割れることは予想できていなかった。馬渕さんの見通しは大外れだ」との厳しいご批判をいただいている。猛省したい。

なお、多くの方がすでにご存じのように、筆者は性格のよくない「ブラックまぶりん」なので、それを踏まえ、「誤った上昇」などの意味も含め、実は何を上記で言いたいのかを推察していただければと思う(複数の主体に向けた皮肉が含まれている)。

そうした軽口はともかく、最も重要なのは「これからの株価動向がどうなるか」だ。ただ、こちらも見解は変わらず、おそらく足元で底固めを演じ、これから年末にかけて2月や9月高値とほぼ並ぶような水準まで、日経平均が戻すと見込んでいる。

一方、TOPIX(東証株価指数)は、3月高値に対して9月高値が上抜けているように、年末までの高値は9月よりさらに高いと考える。

「足元で株価が底固め」と予想する最大の要因は、やはり「9月半ば以降の株価の下落はその前の誤った上昇の修正にすぎない」ということだ。つまり、何か新たに日本を含む世界の経済や企業収益に深刻な悪化が生じたわけではない。誤りの訂正という「仕切り直し」が済んだのだから、そこから一段と株価が押し下がる必要はないだろう、という見通しだ。

王道である企業収益に着目すべきだ

さらに日本の株価が年内再上昇を示す、と予想する要因として、やはり株価分析の「王道」である、企業収益に着目すべきだと考える。というのは、株式に投資することは企業を買うことであり、教科書的だが株価は最終的には企業価値(企業収益や企業の資産)に帰着すると考えるからだ。

「いや、収益がどうだ、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)などの価値判断がどうだ、というのは、理屈をこねまわすだけで役に立たないアナリストの御託(ごたく)であって、そんなものより、材料やテーマ、思惑や需給だけ見ていればよいのだ」と語る個人投資家の方も多い。

そう思うのであれば、自身の信念に基づき、自由に株式を売買すればよいと思う。市場は法規制などを犯さない限り、何をやるのも自由な場であって、誰からも「ああだこうだ」と言われる筋合いはないし、筆者もそうした方に対して「収益が大事だ」などと説得する気はまったくない。

ただ、筆者が「収益が王道である」と考えるのも筆者の勝手であって、誰かからあれこれ言われる筋合いはない。「みんな違って、みんないい」のである。

それはともかく、足元では2月本決算企業の3~8月期の収益発表が佳境だ。今のところはイオン(非食品部門の収益が不振だった)など、失望を呼んだケースも多く目につく。実績値については、それは致し方なく、まだ緊急事態宣言などが発令されていたため、非必需品の小売りや、外食、旅行関連などは収益の持ち直しが難しかった。

しかし、そうした内需非製造業の先行きについて参考になるものとして、マクロ経済統計で「景気ウォッチャー調査」が10月8日に発表されている。この調査は、小売店(百貨店、スーパー、コンビニ、家電量販店など)の従業員や、タクシー運転手、レストランやスナックの経営者、ホテルやテーマパーク、パチンコ店の従業員など、景気の浮沈を最前線で感じているような人たちにアンケート調査を行い、景況感をまとめているものだ。

この調査によれば、景気の現状に対する判断を示す現状判断DIは、8月の34.7から9月の42.1に改善した。さらに、2~3カ月先の景気を展望した先行き判断DIは、同じく43.7から56.6に、大幅な上昇を示している。

この56.6という先行き判断DIの水準は、アベノミクス期待が盛り上がったあとの2013年11月の57.6以来の高水準であり、内需関連に従事している人たちが、今後に大いに期待していることが示されている。

この景気ウォッチャー調査では、回答時に寄せられた主なコメントも掲載されていて参考になる。それを見ると、単なる願望、期待、予想で先行きがよくなると考えている人たちばかりではない。

例えば「飲食業でも10月の予約が入ってきている。アミューズメントや旅行の予約などでも各団体の動きが出てきている。各物流会社でも物の動く準備としてフォークリフトや倉庫の人員を補充し始めている。あらゆる業種からの求人の問い合せが増えている」(東北)、「緊急事態宣言解除で、すでに注文も入っており、大いに期待している」(東京)、「10月以降週末や休日を中心に予約数が増加」(北陸)といった、実態改善の動きに基づいたコメントも目にする。

とすれば、足元の内需非製造業の収益実績ははかばかしくなくとも、今後の改善が見込まれるといえよう。

外需製造業は引き続き改善基調

一方、足元の実績では、世界経済の回復に基づき、輸出増に支えられた外需製造業企業の収益増が先行している。世界の設備投資の金額は、2019年にその前年のアメリカのドナルド・トランプ政権(当時)による対中報復関税により、米中貿易戦争となって世界経済が悪化するとの懸念から、前年比で減少となっていた。

また2020年はコロナ禍で、やはり設備投資が一段と減少した。この2年分の設備投資を一気に行おうとの動きが世界で生じており、日本が得意とする設備機械(半導体製造装置、工作機械、産業用ロボットなど)や、そうした機械類で使われる機械部品・電子部品には、追い風となっている。

2月本決算企業の中でも、竹内製作所、安川電機といった製造業については、収益実績が好調だ。とすれば、これから決算発表を迎える3月本決算企業(上期実績)についても、製造業を中心に好決算が見込まれるだろう。このため、今月後半から11月前半の決算発表時期が、国内株価が底固めから上昇色を強める契機ではないだろうか。

海外要因については、短くまとめると以下のようになる。一時はアメリカの連邦債務上限引き上げ問題が株価の不安材料とされた。しかし10月6日には、共和党上院のトップである、ミッチ・マコーネル院内総務が、債務上限を12月までの支出予定分を含む形で延長することを提案し、民主党の上院トップのチャック・シューマー院内総務が、その提案で合意したと7日に明らかにした。

再度上限問題が取りざたされても「達観」を

そもそも、債務上限問題は「茶番」だ。上限が引き上げられず、連邦政府が資金繰りに窮し、国債の利払い資金も手当てできなくなって、アメリカの国債がデフォルト(債務不履行)に陥っても、与党も野党も喜ばしくはないはずだ。

ではなぜ債務上限の引き上げや凍結がすぐに行われないかといえば、「政争の具」になってしまうからだ。過去からずっとそうだが、野党側が「債務上限の引き上げに合意してほしければ、わが党が主張しているこの点を飲め」と与党に迫るという形だ。今回は、民主党が計画している巨額の経済対策予算が標的となっている。

野党の共和党側から短期間の上限延長の提案がなされたわけだが、これは共和党側も債務上限引き上げに応じない姿勢をずっと示し続けると「足を引っ張っているのは共和党だ」と攻撃されかねないため、「自分の党は悪くない」という形づくりをしたということだろう。

今後も12月が近づくと、市場が再度債務上限問題を取りざたして騒ぐかもしれない。しかし、しょせんは政党間の交渉道具にすぎず、また期限が近づけば延長や凍結がなされるだろう、と達観していればよいだろう。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

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